短期経済予測

成長のピークへ

PIMCOでは、2018年も世界経済の拡大は続くと予想しています。しかし投資家は、政策転換に伴う影響や、より困難な市場環境において発生する投資機会に備えるべきでしょう。

めに明るい材料に注目すると、ゾンビによる世の終末や、突発的で自然発生的な資産価格の下落が生じない限り、最近のゴルディロックス相場的な環境、すなわちトレンドを上回る世界経済の足並みをそろえた成長や、低水準ながら緩やかなインフレの上昇は、2018年も継続する可能性が高いでしょう。

実際、多くの国では、足元の経済成長の勢いは予想を上回るものであり、来年に向けて堅固な下地が形成されています。さらに、リスク資産の価格上昇や依然として低い金利水準を背景に、金融環境が引き続き緩和的な金融環境は、短期的に好材料が持続性することを示唆しています。また、米国を始めとする先進諸国では、財政刺激策が見込まれています。同時に、中国政府は引き続き、国内の経済や金融市場のボラティリティを抑制し、多くのエマージング諸国では、ファンダメンタルズが改善傾向にあります。以上を踏まえ、PIMCOでは基本シナリオとして、世界の実質GDP成長率は2018年も3~3.5%という、2017年並みのペースを維持するとみています。これは、9月時点の予想を0.25%上回る水準です。

しかしながら、ゴルディロックス相場的な環境が長期化するというシナリオは、市場のコンセンサス予想や資産価格にすでに概ね織り込まれています。PIMCOが12月に開催した短期経済予測会議(シクリカル・フォーラム)では、経済の基本シナリオについての確信を深めつつ、同調する世界の経済成長、人的・物的資源の稼働率が既に高い米国における財政刺激策、主要中央銀行による金融緩和の縮小がもたらす、短期および長期の潜在的な影響に注目しました。要約すると、今回の景気サイクルにおいて、2017~2018年は経済成長のピークに位置付けられる可能性があり、投資家は2018年以降に顕在化し得るいくつかの主要なリスクに対し、備え始めるべきとの結論に至りました。その理由をご説明しましょう。

将来からの借り入れ

第1に、米国では2018年におそらく半分は減税、残り半分は連邦政府支出の増加という形で、GDPの0.5%近くに相当する財政拡大政策が実施される見込みですが、これは経済のサイクルではなく政治のサイクルに基づくものとみられます。来年の議会の中間選挙を前に、昨年の大統領選挙時の公約に従って減税と歳出拡大を実行することは、政治的には意味があるにしても、長期的には経済にとって弊害となる可能性があります。なぜでしょうか。

議論の余地はあるにせよ、景気拡大局面が9年目に突入し、完全雇用に近い状態に達している経済にとって、財政刺激策こそが不要であると言えるでしょう。

  • 潜在成長および将来の税収をさほど増加させることなく、政府債務を10年間にわたって1兆ドル近く増やす(両院合同租税委員会による推計)ことは、金利が低い間は対応可能かもしれませんが、将来の金利上昇時には国庫に大きな負担となるでしょう。
  • 最も重要な点として、景気が好調な時期に財政政策の手段を使い果たせば、将来につけをまわすことになります。財政赤字と政府債務残高が増加すれば、次の景気後退局面において財政刺激策の余地がより限られることになるでしょう。

フィリップス曲線の傾き

2018年の見通しに関連する第2の主要なリスクは、完全雇用を超えた後に賃金や物価がようやく上昇に転じる可能性です。

これまで賃金や物価が上昇せず、失業(の低下)と賃金/物価(の上昇)の関係を表すフィリップス曲線がほぼ平坦なままとなっている現状を説明する理由は、以下が考えられます。

  • グローバリゼーションの進展と技術革新が労働者の賃金交渉力を低下させたこと
  • 生産性の伸びの低さが実質賃金の上昇余地を抑制したこと
  • 2008~2009年の大幅な景気後退において企業が名目賃金を削減できなかった、または、削減に消極的だったため、「累積的な賃金デフレ」影響が顕在化したこと
  • 最近の労働参加率の上昇を背景に賃上げが抑制されたこと

とはいえ、同調する世界の景気拡大、追加的な財政刺激策、最近のコモディティ価格の上昇、極めて緩和的な金融環境を踏まえると、2018年にインフレ率が短期的に予想を上振れするリスクは高まっています。グローバルな構造的要因が引き続きインフレを抑制しているものの、短期的な圧力は明らかに上向きです。

金融政策が行き過ぎるリスク

2018年の第3のリスクは、金融緩和の縮小にあります。金融緩和の縮小は、短期的に経済が一定水準の成長を達成しているなかにおいて、十分な意図のもとに採られた政策ではありますが、低水準の短期金利およびイールドカーブ全体のリスクプレミアムの縮小に慣れきった経済や各資産クラスの市場にとって、予想以上に困難な影響をもたらすシナリオが挙げられます。2018年の金融政策に関するPIMCOの基本シナリオは、以下のとおりです。

  • 米連邦準備制度理事会(FRB)は2018年に3回利上げを実行して、年末までにフェデラル・ファンド(FF)金利のレンジを2~2.25%に引き上げると予想しています。この間、FRBのバランスシートは予め決められたルールに沿って縮小して、そのペースは四半期ごとに加速する見通しです。
  • 欧州中央銀行(ECB)は2018年末までに債券の買い入れを終了して、2019年に短期金利の引き上げを開始する意思を示唆する見通しです。
  • 日本銀行は、2018年にバランスシート拡大のスローダウンあるいは、スティープニング方向でのイールドカーブ・コントロールの調整、もしくはその両方を目指す結果、グローバルにターム・プレミアムが上昇する可能性があると予想しています。

金融市場は緩和的な金融政策に慣れてしまい、依存状態に陥っているため、各国の中央銀行によるこのような政策方向の転換は、とりわけ、まだ固まっていないFRBの新執行部の方針が未知であることを踏まえると、市場や経済にとって多大なリスク要因となります。

5分で見る世界各地域の経済予測

PIMCOの2018年主要国経済の見通しをご紹介します。

米国

予想以上に大規模な減税と連邦支出の拡大を考慮して、2018年の実質GDP成長率はトレンドを上回る2.5%程度になるとみています。PIMCOでは、所得税と法人税の減税によって、2018年の経済成長率は0.2~0.3パーセンテージポイント押し上げられると予想しています。また、ハリケーン関連の災害救済予算に起因する政府支出の増加と、予想される政府予算折衝の妥協の一環として見込まれる裁量的支出制限の上限引き上げによって、さらに0.2パーセンテージポイント上昇する見通しです。

PIMCOでは、失業率が4%未満に低下する見通しを踏まえ、賃金の伸びと消費者物価には上昇圧力がかかり、コア消費者物価指数(CPI)は年内に2%を超えると予想しています。FRBが選好する指標である個人消費支出(PCE)インフレ率のコア指数も、現在の1.4%から1.7%へと上昇し、2%の政策目標にある程度近づくでしょう。

経済のスラック(需給の緩み)が縮小するなかで、FRBは新執行部の下、引き続きFF金利を徐々に引き上げる公算が大きいでしょう。2018年の利上げ回数については、FRBの予想の中央値は市場に織り込まれた2回より1回多い3回ですが、これは基本シナリオとしては妥当とみられ、リスクは両サイドにほぼ均等に存在しています。年間を通して金融、経済情勢が良好に推移すれば、4回の利上げも十分現実的でしょう。反対に、金融環境が唐突に引き締まったり、インフレが予想をさらに下回ったりすれば、利上げのペースは緩やかになり、2回にとどまることも考えられます。

ユーロ圏

PIMCOでは、足元の経済成長の勢いの強さと良好な金融環境を踏まえ、ユーロ圏の実質GDP成長率は引き続き2.25%程度になると予想しています。加盟国間の成長率格差は以前よりも小さく、景気回復の流れが地域全体に広がっていることが、現在の景気拡大局面の大きな特徴です。

また、コアインフレ率が、来年末までに1%を辛うじて上回る水準への上昇にとどまるなど、今後もこれまで同様に非常に低い水準で推移する見通しであることも、重要な特徴と言えるでしょう。残存するスラック、過去の労働市場改革、加盟国間の競争力格差の存在によって、賃上げ圧力は抑制されています。さらに、2017年のユーロ高の影響によって、2018年は消費者物価が押し下げられる可能性が高いでしょう。

ECBの政策は現在自動操縦モードで、来年1~9月は資産買い入れ額が月間300億ユーロに半減します。量的緩和政策はその時点で終了すると予想していますが、償還を迎えた債券の再投資は長期にわたって続くでしょう。利上げの開始は、PIMCOの短期見通しの対象期間を超える2019年半ば以降になるでしょう。もっとも、2018年の後半には、ECB政策理事会や金融市場において、利上げの開始のタイミングについて議論が白熱する可能性が高いでしょう。

英国

PIMCOでは、円滑な欧州連合(EU)離脱を目的とする経過措置が2018年前半に合意されるとの見通しに基づき、英国の実質GDP成長率はコンセンサス予想を上回る1.5%程度になると予想しています。この予想を前提にすると、企業景況感が改善するなかで保留中の設備投資が承認される結果、経済成長は再び加速すると予想しています。また、7年にわたって緊縮財政を続けた英国政府には、歳出を拡大する余地が生まれるとみています。

昨年の英ポンド安に伴う輸入品価格上昇の影響が解消される一方で、消費者物価には二次的影響が及ぶ兆しがほとんど確認されないため、インフレ率は2018年末までには政策目標の2%に戻ると予想しています。また、イングランド銀行は非常に緩やかなペースでの利上げを継続するとみており、基本シナリオとして、2018年末までに1~2回の利上げを想定しています。この予想は、EU離脱に関する英国とEUの間の交渉が比較的円滑に進むことを前提としています。PIMCOの想定とは異なりますが、離脱交渉が物別れとなった場合には、イングランド銀行が金利を据え置くことも考えられます。

日本

PIMCOでは基本シナリオとして、1.25%程度の底堅い経済成長が持続すると予想しています。この予想に対するリスクは、上振れ方向に偏っています。予定される2019年の消費税増税を前に、財政政策は2018年を通して経済を下支えするでしょう。失業率が3%を下回り、(給与水準がより高い)正規雇用の伸びが加速するなかで、賃金の伸びがさらに強まる結果、コアインフレ率は2018年末までに1%に向けて徐々に上昇する見通しです。

トレンドを上回る経済成長の継続とインフレの上昇を踏まえ、日銀はバランスシートの拡大ペースの減速、またはスティープニング方向でのイールドカーブコントロールの調整、もしくは両方を目指すと予想しています。軌道調整の方法としては、10年国債利回りの目標の上方修正もしくは、0%の利回り目標の年限を現在よりも短い年限、例えば7年ゾーンにシフトすることが考えられます。その結果、長期利回りには上昇余地が生じるでしょう。

中国

信用拡大やインフラ投資を後押しする政策が概ねピークを越えたため、実質GDP成長率は2018年には6.25%程度に誘導されるものとPIMCOでは予想しています。当局は、特に影の銀行システムに存在する余剰資金の管理や、主に地方政府の緊縮財政に注力する公算が大きいでしょう。

コアインフレ率と原油価格の上昇を背景に、インフレ率は2.5%に加速すると予想しています。コンセンサス予想では利上げは想定されていませんが、インフレの上昇は、中国人民銀行が政策金利の引き上げによって金融政策を引き締める契機になるとみられます。PIMCOでは、人民元については概ね中立的にみており、当局は為替レートの変動を抑えるために資本フローの統制を継続すると予想しています。

 

投資へのインプリケーション

これまでに挙げたリスク、現在のバリュエーション、低水準のボラティリティを踏まえ、PIMCOでは、全般にポートフォリオを慎重に構築し、単一のセクターやベータに過度に依存することなく、多様な源泉からのインカムの獲得を目指し、ポートフォリオの柔軟性を保つ方針です。

市場は基本的に概ねレンジ内で推移すると考えています。しかしながら、世界経済成長の同調が進んでいること、米国では景気サイクルの終盤において財政刺激策が見込まれていること、インフレが短期的に上振れするリスクが高まっていること、世界的に金融緩和の縮小が進んでいることを踏まえ、柔軟性を維持したいと考えています。ポジションを保守的に構築することによって、市場環境がより困難になった場合に、守りに徹することを余儀なくされずに、出現する投資機会を生かして、困難な市場においてアウトパフォームする体制が整うと考えています。

PIMCOでは、一般的なポートフォリオにおいて金利リスクのポジションをややアンダーウエイトとする方針です。基本的に、グローバル市場では概ねレンジ圏内の動きを想定していますが、過熱リスクや金融政策に関連するリスクを考えると、レンジの上限を超えるリスクが高まっていると考えています。現在の水準を踏まえて、英国の金利についてはアンダーウエイトとする方針です。また、予想される日銀のイールドカーブコントロールの調整や、世界的な金利上昇局面では円金利も上昇するとの見通しに基づき、日本のデュレーションのアンダーウエイトを選好しています。

特に米金利については、フラットなイールドカーブ、ターム・プレミアムおよびブレークイーブンインフレ率が回復する見通しや他の中央銀行の金融緩和政策の影響が弱まる見通し、米国債の発行増を踏まえ、スティープニングのポジションを構築する方針です。

また、米物価連動国債(TIPS)には割安感があり、社債に対する分散効果が期待され、景気サイクルの終盤での財政拡大に伴うインフレ上昇リスクが顕在化した場合のヘッジ機能が魅力的だとみています。

エマージング市場では、幅広い通貨のバスケットを通じてエクスポージャーをとる手法を選好しています。ポートフォリオの他のポジションに対する分散効果や、キャリーの源泉としての役割が期待されます。また、この他にも、エマージングの現地通貨建ておよび外貨建て市場に的を絞った魅力的な投資機会が生じると予想しています。

全体的な投資適格およびハイイールド・クレジットに関しては、割安感がなく、より厳しい市場環境が発生した場合に脆弱との見方から、選別的な姿勢が必要であると考えています。PIMCOにおいては、クレジット・ポートフォリオ・マネージャーとアナリストで構成されるグローバルなチームが提案する、最適なボトムアップの投資アイデアを採用する方針です。また、年限が短くデフォルト・リスクが非常に低い「曲がっても折れない」企業クレジットを重視する方針です。米国の非政府機関系モーゲージ債やその他のグローバルな証券化商品については、バリュエーションが相対的に魅力的であることに加え、資本構成上で相対的にシニアな位置にあり、流動性やキャッシュフローの発生時期の不確実性に対するリスク・プレミアムも一定程度期待できます。また、米国の政府機関系モーゲージ債も相応に魅力的なバリュエーションにあり、インカムの獲得を目的とする分散されたポートフォリオに適していると考えています。

総じて言えば、分散されたポジションからインカムを生み、PIMCOの基本シナリオが実現した場合にベンチマークをアウトパフォームする可能性が高いポートフォリオを構築するために、スプレッドがタイトな企業クレジットや流動性の低いクレジットに過度に依存する必要はありません。また、ターム・プレミアムやインフレ・リスク・プレミアムの上昇がプラスに作用する、柔軟性と流動性を備えたポートフォリオを構築することによって、市場環境がより困難になった場合にバリュエーションの魅力が増す投資機会を生かす余地を確保しています。

著者

Joachim Fels

グローバル 経済アドバイザー

Andrew Balls

グローバル債券担当最高投資責任者(CIO)

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FRB前議長のベン・バーナンキ氏をはじめ、世界的に著名な外部専門家から構成されるグローバル・アドバイザリー・ボード(GAB)のメンバーが、グローバル経済の見通し及び地政学的な変化について議論しました。

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