短期経済予測

未知なる世界へ​――2017年グローバル経済の3つのシナリオを想定​​​​​​​

2017年のグローバル経済に関するPIMCOの3つのシナリオとは?

12月上旬に、ビデオ会議での参加者を含めて、世界中の12の拠点からのPIMCOの投資プロフェッショナルがニューポートビーチ本社に集結し、2017年の見通しと投資戦略を詳細に議論するため、短期経済予測会議(シクリカル・フォーラム)を開催しました。トランプ氏の大統領選勝利とその後の市場の楽観的な反応、イタリアの国民投票における憲法改正案の明確な「否決」など、活発な議論の材料には事欠きませんでした

フォーラム参加者は、PIMCOが5月の年次のセキュラー・フォーラムにおいて向こう3~5年間の見通しとして描いた「安定的だがその持続性には懸念」が残るマクロ経済環境が、極端な形で到来したことを痛切に実感していました。高い水準で増え続ける債務残高、金融政策手段の枯渇、ポピュリズムの台頭という、PIMCOが長期的に想定していた3つの大きなリスクが、5月以降にいずれも顕在化、あるいは現実味を増しました。長期的なインフレ・リスクが著しく過小評価され、価格に反映されていないというPIMCOの従来からの主張を、市場は重視するようになりました。

5月の時点では、年末までの間に、英国ではBrexitの可決、米国ではトランプ氏の大統領選勝利、イタリアでは憲法改正の否決、そして市場がその結果を好感するという展開は、想定されていませんでした。また、日本銀行の黒田総裁と欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が、量的緩和政策とマイナス金利政策の効果が限界に近づきつつあることと、インフレ目標が実質的に達成不能であることを、(口先だけでなく実際の行動をもって)かくも早く認めることも、想定されていませんでした(PIMCOブログ「ECB Policy: 1% is the New 2%」をご参照ください)。

5つの基本理念と3つの困難なシフト
このように前例のない状況において、12月のフォーラムでは、短期見通しと投資戦略を5つの基本理念に基づいて策定し、これを状況の変化に応じて定期的に見直していく方針を決定しました。

第1の基本理念は、現在の新たなマクロ経済環境において、通常PIMCOが長期(3~5年)と短期(6~12カ月)に分けて考える時間軸の境界が、従来よりもあいまいになったことです。足元では、トランプ新大統領の長期的な政策に対する希望と懸念が市場を左右しています。その結果、市場間や経済と実際の政策の間の相互作用が、米国内外において短期的に強まる可能性があります。このため、今回のフォーラムでは、ベン・バーナンキ氏、マイケル・スペンス氏、ジーン・スパーリング氏、ウン・コクソン氏を始めとするアドバイザーにご参加いただき、その知見を参考に、長期的な動向と短期的なトレンドとの相互作用について、通常よりも時間をかけて議論しました。

第2の基本理念として、市場では、米国の経済成長率、インフレ率、自然利子率が長期にわたって上昇するという「ニュー・パラダイム」が好感されているのに対して、PIMCOでは、少なくとも当面、長期的なニュー・ニュートラルおよびニュー・ノーマルというテーマは不変であると考えています。フォーラムでは白熱した議論が戦わされましたが、満場一致ではなかったものの、過半数の参加者がこの見方に賛同しました。人口動態、格差の拡大、世界的な貯蓄過剰、高水準の債務残高、テクノロジーの進化など、ニュー・ニュートラルの下で金利を低い水準に押し下げる多くの長期的要因は、当面は変化しない見通しです(2016年12月のMacro Perspectives「ニュー・パラダイム?」をご参照ください)。その一方で、「ニュー・パラダイム」説を強硬に主張する反対意見が複数聞かれましたが、PIMCOの投資プロフェッショナルの大多数は、適切な政策が実行された場合にレジームの転換が起こる可能性と、より高い可能性として市場がそのような長期的な転換を予想しようとする可能性を認識しています。

PIMCOの短期見通しの根底にある第3の基本理念は、ニュー・ニュートラルというテーマが変化しない公算が大きいにせよ、長期的な基本シナリオが短期的には両方向に逸脱する可能性に注意する必要があることです。今年の早い時期には、市場では、フェデラル・ファンド(FF)金利が長年にわたって中立的な実質金利を下回ると予想され、PIMCOのニュー・ニュートラルに基づく実質政策金利の推定値(0%)を明確に下回ったことを思い起こすべきでしょう。このような「根拠なき失望」は、現在修正されつつあります。賃金インフレがすでに加速しつつある景気サイクルの終盤に財政刺激策が実行されることを想定すると、控え目に言っても、米連邦準備制度理事会(FRB )が市場の予想よりも速いペースで利上げを進めるリスクは高まったとみています。

第4の基本理念は、新しい政治環境において、長期見通しだけでなく短期見通しの不確実性も極めて高いということです。セキュラー・フォーラムにおいて、講演者のマービン・キング氏が、「安定的だがその持続性には懸念」が残るというPIMCOが掲げたテーマに呼応して用いた 極端な不確実性 という言葉が象徴的です。1920年代にシカゴ大学のエコノミストのフランク・ナイト教授が指摘したように、不確実性は根本的にリスクと異なります。リスクに関しては、統計的な分析や過去の経験に基づいて、定量化や価格付けを行うことが可能です。投資家は一般に、「既知の未知(known unknowns)」という事象の発生確率を想定した上で、ポートフォリオを構築しています。しかしながら、不確実性は、それを認識する前に発生してしまう「未知の未知(unknown unknowns)」という事象から成り立つもので、その発生確率を想定することは困難または不可能と言えるでしょう。また、たとえ異なるマクロ経済シナリオの発生確率を想定できる場合でも、確率分布のテールが広がったことを認識するべきでしょう。テールの拡大に伴い基本シナリオの発生確率が低下したため、異なるシナリオを前提に将来を展望するとともに、実現した政策に応じて柔軟にシナリオを変化させる必要性が、これまで以上に生じています。

以上を踏まえて、2017年の見通しを検討する前に、第5の基本理念をみてみましょう。フォーラムでは、経済と市場の今後の動向は、以下の3つの困難なシフトの当面の進捗状況によって決定される可能性が高いという点で、意見の一致をみました。

  • 金融政策から財政政策へのシフト――ECBは月間の資産買入額を600億ユーロに減額し、日銀は政策目標の対象をマネーサプライからイールドカーブの水準に切り替え、トランプ新政権はより拡張的な財政政策を実行が見込まれるなど、シフトの勢いは増しています。

  • グローバリゼーションから反グローバリゼーションへのシフト――すでに進行中ですが、米国を始めとする国々が国内重視の姿勢を強める見通しのなかで、さらに加速するとみられます。

  • 中国の為替政策のシフト――2015年8月までのドルペッグ制から、バスケット通貨に対するペッグ制にシフトしました。人民元が管理変動相場制か、場合によっては自由変動相場制に移行する可能性もあります。

未知の世界への旅立ち
フォーラムでは、基本理念とマクロ経済の重要なシフトについてのコンセンサスを形成した後、3つのシフトのさまざまな進展状況を想定し、短期見通しの基本シナリオ、強気シナリオ、弱気シナリオを議論することにより、極端な不確実性について一定の筋道の構築を試みました。PIMCOの各拠点のポートフォリオ・コミッティーは、PIMCOの経済モデル、数十年にわたって蓄積された経験、潤沢に存在するクリエイティブな発想を活用して、各シナリオの下での経済成長、インフレ、経済政策を具体的に予測しました。

基本シナリオ: 「景気拡大の持続」
PIMCOの基本シナリオは、すでに8年目に突入した景気拡大局面が、来年3月に戦後3番目の長さに達した後も、年間を通して持続するというものです。このように楽観的な見通しの背景には、頓挫することなく3つのシフトが比較的スムーズかつ段階的に進むという前提が存在します。

  • 財政政策は景気を下支えする。ただし、米国において向こう10年間で1.5兆ドル程度とされる財政刺激策が議会で可決されるのは2017年半ばのことであり、政策が実現するのは2018年度の初め(2017年10月)から。

  • 中央銀行は協調的な姿勢を維持し、金融緩和政策を概ね据え置く結果、国債利回りの上昇は限定される。

  • 全面的な貿易戦争は回避され、人民元は向こう1年間にわたって段階的に7%程度下落する。

以上の前提の下で、世界の名目経済成長率は2017年に1パーセント・ポイント加速して5%に達する一方で、実質国内総生産(GDP)成長率は過去5 年間続いた2.53%というレンジにとどまる 見通しです。また、先進国市場では、総合インフレ率が2015~2016年の低い水準から上昇するのに対して、ブラジルやロシアなどのエマージング諸国では、高い水準から大幅に低下するとみられます。先進国市場とエマージング市場の間で、また、それぞれの市場の内部で、経済成長、インフレ、政策が二極化する傾向が一段と鮮明になるなかで、世界経済はどうにか拡大を続ける見通しです。各国の具体的な見通しは以下の通りです(基本シナリオを整理した図表も合わせてご参照ください)。

  • 2017年の米国の実質>GDP成長率はトレンドを上回る2~2.5%となり、2015年第4四半期から2016年第2四半期までの成長率(年率換算)の2倍に達するものの、2016年第3四半期の水準(3.2%)は下回る見通しです。エネルギー価格の上昇と法人税制改革の全体像が(いずれ)明確になることを受けて、企業投資は回復する見込みです。また、失業率のさらなる低下、賃金の増加、2017年末の所得減税案成立の期待により、個人消費は下支えされるとみています。。一方、総合消費者物価指数(CPI)とコアインフレ率が2%を上回る水準で収斂する結果、2017年FRBは、2~3回(もしくはそれ以上に)利上げを実行する見通しです。

  • フランス、ドイツ、オランダ、そして場合によってはイタリアでの重要な選挙を控えて政治の不確実性が高い状況において、ユーロ圏の経済成長率は1~1.5%のレンジで横ばいとなる見通しです。もっとも、主要国ではポピュリスト政党やナショナリスト政党が政権に就くことは想定されません。総合インフレ率は1%を超えて上昇するものの、コアインフレ率がECBの「2%未満だが2%に近い水準」という目標に近づくことはないと予想しています。また、ECBは、直近の政策理事会において減額された毎月600億ユーロというペースで、2017年12月までは債券の買い入れを続けるものの、ドイツで総選挙が行われる2017年9月頃には、買入額のさらなる減額について議論を始めるとみています。

  • 足元で景気は堅調であるものの、Brexitの具体的なプロセスが引き続き不透明なため、英国の経済成長率は0.75~1.5%のレンジに低下する見通しです。インフレ率が2%の目標を超える結果、イングランド銀行は政策金利を据え置いた上で、現在の量的緩和プログラムを来年1月末に終了し、後継のプログラムを導入することはないとみています。

  • 日本では、財政刺激策と最近の円安の動きを背景に、2017年には実質GDP成長率が0.75~1.25%のレンジに押し上げられる一方で、インフレ率は2%の目標を大きく下回る水準で低迷する見通しです。日銀は、翌日物金利を-0.1%、10年国債利回りを0%に誘導する目標を維持しつつ、政府に対して引き続き追加的な財政政策を要請すると予想しています。この要請は2017年のいずれかのタイミングで受け入れられ、追加的な財政刺激策に結びつくようになるとみています。

  • 中国の公共部門における信用バブルと民間部門における資本流出の動きは引き続き抑制され、2017年第4四半期の共産党第19回全国代表大会を控えて、政策当局が景気の促進よりも金融システムの安定を優先するなかで、経済成長率は6~6.5%のレンジに減速する見通しです。米国との貿易戦争は、実態を伴うことなく、言葉(そしてツイート)のやり取りに終始し、また、人民元は米ドルに対して段階的に7%程度下落するとみています。

  • エマージング市場*では、深刻な景気後退の終了に伴い、ブラジルとロシアの経済は緩やかに成長する見通しです。両国の中央銀行は、インフレ率が高い水準から低下したことを受けて、数回にわたって利下げすることが可能になるとみています。一方、メキシコの中央銀行は、ペソの下支えとインフレの抑制を目的に、FRBに続く形で金融政策を引き締め、その結果、同国の経済成長率は1.75~2.25%のレンジに減速する見通しです。
    *エマージング市場の数字は、中国、ブラジル、ロシア、インド、メキシコのGDP成長率

 

ダウンサイド・リスク・シナリオ:「月の裏側」
PIMCOのレフト・テール・シナリオでは、3つのシフトがいずれも不調に終わることを想定しています。米国では、議会において財政改革の議論が滞り、欧州では、ポピュリズムやナショナリズムが勢いを増すとともにBrexit関連の懸念が現実のものとなるなかで、政治情勢は悪化します。また、米国、中国、メキシコなどの国々の間で貿易問題が深刻化するなかで、中国が人民元を米ドル対比15%以上切り下げることによって、報復措置を講じると想定されます。

この場合、エマージング市場の経済成長は加速するどころか減速に転じ、ロシアとブラジルは景気後退から脱却できず、中国とメキシコの経済成長は大幅に鈍化します。また、エマージング通貨と原油価格は大幅に下落します。貿易の伸びが鈍化し、グローバルな金融情勢が逼迫する結果、日本や英国などの相対的に規模が小さく開放的な経済は軽微な景気後退に陥り、大規模で開放性の低い米国やユーロ圏では、実質GDP成長率がゼロ近辺まで低下すると想定されます。

最後に、このシナリオでは、ドル高に伴いFRBの金利正常化の試みは不調に終わり、日銀は短期金利のマイナス幅を深掘りし(10年国債利回りの目標は下げませんが)、ECBは面目を失う形での政策転換を余儀なくされ、資産買入額を再び増やすと想定されます。また、メキシコ中銀が急激なペソ安に対応するため金融政策の大幅な引き締めを強いられる一方で、ブラジルとロシアでは利下げの余地が急速に縮小します。たとえて言うならば、月の裏側が非常に暗くなるというシナリオです。

アップサイド・リスク・シナリオ:「陽は昇る」
PIMCOのライト・テール・シナリオでは、米国の10年間にわたって2.5兆ドルという財政パッケージに牽引される形で、各国政府が景気刺激の役割を中央銀行から早期に引き継ぐことを想定しています。トランプ新大統領と習近平国家主席が貿易交渉を巧みに進めることによって、中国市場が米国からの輸出と資金フローに対して開放される結果、人民元は安定するか、場合によって上昇する可能性もあります。欧州では、ポピュリスト政党やナショナリスト政党が選挙で勝利する事例は皆無に等しく、エマージング市場では、政策上の改革が前進します。

このような明るい展開において、ケインズ卿の「アニマル・スピリット」がナイト教授の「不確実性」に対して優位に立ち、消費と投資が拡大します。世界の実質GDP成長率は3%を上回り、米国のインフレ率は3%まで上昇し、エマージング諸国は過去3年間の低迷から脱却するでしょう。

最後に、このように楽観的なシナリオでは、先進諸国はようやく脱出速度(重力圏からの脱出に必要な最低速度)に到達するため、FRBは2017年に余裕をもって4回利上げを実行し、ECBは予定より早期に債券買入額の減額を進め(そしてドラギ総裁は「テーパリング(量的緩和縮小)」であることを正式に認めるでしょう)、日銀はマイナスの短期金利から脱却するとともに、インフレが加速するなかで10年国債利回りを0%以上の目標へと慎重に誘導するとみられます。これに対して、ブラジルとロシアでは、大幅な通貨高と予想以上に速いインフレ率の低下を背景に、さらなる利下げが可能になります。これは、太陽が昇るように、非常に明るいシナリオと言えるでしょう。

投資に関する結論
見通しが非常に不透明であることとテールが通常よりも広いことを踏まえ、PIMCOでは、以下の重要なポイントを重視した長期的な枠組みから離れることなく、ポートフォリオ全体を慎重に構築する方針です。

  • 元本の保全を重視し、最も可能性の高い基本シナリオだけでなくテール・リスクにも注目する。

  • 中央銀行のサポートに強く依存する戦略を縮小する。

  • 利回り上昇に伴う非対称的なリスクと、とりわけマイナス金利のリスクに備える。

  • ボトムアップの銘柄選択を重視する。

  • 最適な投資機会を見出すために世界各拠点のチームの協力を得る。

  • ユーロ圏に対しては非常に選別的なアプローチをとる。

  • ポートフォリオ全体を慎重に構築するとともに、ボラティリティ上昇局面や市場価格に歪みが生じた局面を生かすアクティブな運用を行う。

この1年間の経験によって、政治リスクの存在と金融政策手段が枯渇したことが浮き彫りになりました。バリュエーションが適正または割高であり、金融市場の流動性が低い状況では、小さなきっかけによっても市場のボラティリティが上昇することを目の当たりにしました。ポートフォリオのリスクを抑制し、アクティブ運用者として戦術的で柔軟なスタンスをとることによって、市場の転換期に備え、そこから利益を得ることは可能です。忍耐はいずれ報われるでしょう。

金利市場
PIMCOでは、いずれは利回りが段階的に上昇するという見通しと、先行きの見通しが不確実であることを念頭に、大方のポートフォリオにおいて、全般に中立的なデュレーション・リスクのポジションは据え置く方針です。また、スプレッドのポジションも維持する予定です。見通しがより明確になり、より魅力的な投資機会が浮上した段階で、行動を起こすことを考えています。

マクロ経済環境が世界的に不透明ななかで、景気サイクルの終盤において財政刺激策が実施される見通しも考慮すると、FRBが市場の予想を上回るペースでの利上げを余儀なくされるリスクが明確に高まっています。このため、米ドルのイールドカーブの短期ゾーンをアンダーウエイトとする方針です。

足元のバリュエーションと、米国を中心とする先進国においてインフレが上昇する見通しを踏まえると、米物価連動国債(TIPS)のオーバーウエイトを据え置くべきと考えています。TIPSの割安感は大幅に解消されたものの、FRBがいずれはインフレ目標を達成するという見通しは織り込まれていないため、引き続きインフレの上振れリスクに対して魅力的なヘッジ機能を提供しています。また、米国の政府機関系モーゲージ債(MBS)のバリュエーションが割安であるとみて、オーバーウエイトを据え置く方針です。

PIMCOでは、足元のバリュエーションの水準と、さらなるイールドカーブのスティープニングのリスクが相対的に高いことを踏まえ、米国債を始めとする世界の国債の長期ゾーンをアンダーウエイトとしています。この方針は、ファンダメンタルズの分析と金融政策関連の材料(たとえば、日銀とECBの場合は長期ゾーンに対する政策支援の縮小)に基づくものです。

クレジット市場
PIMCOでは、ポートフォリオの流動性を高め、各拠点のクレジット・アナリストが提案する相対価値の戦略から利益を上げるため、クレジット・スプレッドのポジションを控え目ながら据え置く方針です。流動性が相対的に高いCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)インデックスの利用に加えて、短期年限で償還が近い社債のエクスポージャーを選好する見通しです。引き続き、スプレッド関連商品のなかでは、資本構成上で上位に位置し、幅広い経済のシナリオにおいて魅力的なリターンが期待される、米国の非政府機関系MBSを選好しています。超過リターンが期待される背景として、格付けおよび流動性が低いこと、仕組みが複雑であること、キャッシュフローの確実性が満期一括返済型の仕組みよりも低いことが挙げられます。PIMCOは大規模で経験豊かなチームを擁しており、この複雑な商品が提供する相対価値を引き続き選好しています。

エマージング市場
PIMCOのポートフォリオでは、大きな見通しの不確実性と、魅力的なバリュエーションの水準に、トランプ次期大統領に関連する悪材料が織り込まれ、長期投資家にとって投資機会が生じたこと、他のリスク・ファクターのなかでの分散効果が期待されることを比較検討した上で、エマージング市場のリスクを慎重に増やしていく方針です。当面は、ポートフォリオのキャリーを増やすため、エマージング・リスクに投資する上で流動性が高く、キャリーも大きなコモディティ関連のエマージング通貨に注目する方針です。その一方で、人民元が引き続き下落するという見通し、キャリーの小ささ、脆弱な内需を下支えするために金融政策が緩和される可能性を踏まえ、アジアのエマージング通貨をアンダーウエイトとする見通しです。また、アジア地域ではインフレ率が低いことも、金融緩和を後押しする要因になるでしょう。

欧州市場
イタリアの国民投票の結果は、ユーロ圏の見通しにおいて短期的、長期的な政治リスクが存在することを浮き彫りにしました。また、月間の債券買入額を2017年4月以降に減額するというECBの決定は、特に欧州周縁国のソブリン・リスクに対するPIMCOの長期的な警戒感を強めるとともに、中央銀行の大規模な政策支援全般に依存する戦略に対する注目を後退させるものでした。大方のポートフォリオでは、ユーロ圏の周縁国とユーロ圏の銀行のポジションを大幅に抑制する方針です。

株式市場
株式のリターンの見通しは改善しました。市場が過去数年間にわたる利益の深刻な低迷期から脱却しただけでなく、予想される法人税制改革と事業環境全般の改善を背景に、利益の伸びが加速する可能性が高まったようです。PIMCOでは、将来の利益の伸びを楽観的にみる一方で、企業が実質金利の上昇と労働コストの増加というネガティブな見通しに直面する可能性には注意しています。また、中央銀行が供給する流動性が大方の株式市場を左右する重要な要因であった過去数年間と比べて、地域ごと、業種ごと、さらには銘柄ごとのレベルでも、リターンのばらつきが拡大すると予想しています。

コモディティ市場
マクロ見通しの改善、石油輸出国機構(OPEC)加盟国による減産の兆し、さまざまなコモディティの供給調整が進むという全般的な兆候が、コモディティ市場全体の見通しを明るくしています。足元のバリュエーションの水準に鑑みると、コモディティは引き続き、分散効果とインフレ・ヘッジの観点から魅力的と言えるでしょう。もっとも、2016年を通してコモディティ市場が幅広く上昇したため、期待が現実のものとなるには、OPECが減産合意を実行し、財政刺激策の具体化とその他のプラスのマクロ経済要因が必要になる可能性が高いでしょう。

著者

Joachim Fels

グローバル 経済アドバイザー

Andrew Balls

グローバル債券担当最高投資責任者(CIO)

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