下のインタビューでは、12月にPIMCOの投資プロフェッショナルが集結してグローバル経済や金融市場について議論した、四半期に1度の短期経済予測会議(シクリカル・フォーラム)からの結論について、マネージング・ディレクターのマイク・エイミー、アンドリュー・ボゾムワース、ロレンツォ・パガーニがご説明します。また、PIMCOの欧州の中期見通しと投資戦略に対する重要なインプリケーションについてもご紹介します。

問: 2016年の欧州の経済成長とインフレについて、どのように予想しているのでしょうか。
ボゾムワース:
 2016年のユーロ圏のベースライン・シナリオとしては、2015年と同様に1.5%程度と緩慢なペースながらも、トレンドを上回る国内総生産(GDP)成長率が持続すると予想しています。欧州中央銀行(ECB)による量的緩和プログラムとマイナス金利政策が金融環境を大幅に緩和した結果、長期にわたって縮小してきた銀行貸出残高は増加に転じています。また、一部の加盟国では欧州連合(EU)への移民流入を受け入れるために公共支出がやや拡大するなど、2016年は財政政策が引き続き経済成長をわずかながら後押しする見通しです。これまでのユーロの下落によって純輸出が引き続き恩恵を受けるとみられる一方で、ユーロ圏の主要貿易相手国の経済成長が鈍化する結果、2016年は純輸出が経済成長に与える効果は限定される可能性があります。

PIMCOでは、これまでのユーロ安の影響が中間財に波及するとともに、2015年の原油価格下落の影響が消費者物価指数(CPI)の前年同月比の数字から剥落するため、総合インフレ率はゼロ近辺だった2015年から2016年には1%程度まで上昇すると予想しています。もっとも、労働市場には大きな余剰が存在することを踏まえると、総合インフレ率とコアインフレ率が近い将来にECBのインフレ目標と整合的な水準まで回復する公算は小さいでしょう。

問: PIMCO では周縁国の見通しをどのように分析しているのでしょうか。
ボゾムワース:
 ユーロ圏では、金融政策の波及メカニズムが以前よりもかなり効果的に機能していることや、周縁国では構造改革が投資資本のリターンを押し上げていることなどから、周縁国と中核国の経済は均等に回復しています。周縁国の銀行貸出金利が中核国の水準に近づいている点や、スペインやイタリアでは購買担当者指数(PMI)が55近辺と、製造業、サービス業とも生産拡大を示唆する水準に反発した点において、ユーロ圏の金融緩和政策が周縁国の実体経済に波及していることを確認することが可能です。

問: PIMCOでは、グローバルな経済見通しにとっての金融政策の二極化の重要性について議論してきました。2016年のECBの金融政策をどのように予想しているのでしょうか。
ボゾムワース:
 現実のインフレ率と「2%未満だが2%に近い水準」というECBの物価の安定の定義の間には大きな差が存在するため、2016年を通してECBには量的緩和政策の規模とペースの調整を求める圧力がかかるとPIMCOでは予想しています。総合CPIに注目すると、2010年以降の平均は1.4%に過ぎず、2011年以降はディスインフレの傾向が続き、昨年は何回かゼロを下回ることもありました。ECBは、インフレ目標の中期的な性質を強調する一方で、2017年までには1.6%程度にしか回復しないと予想しています。この予想が結果的に正確であれば、インフレ率は5年連続で目標を下回ることになります。日本の事例と同じように、インフレ期待が目標から離れ、より低い水準で固定化されてしまうリスクは小さくありません。このため、今年から来年にかけても緩和的な政策が続くとみています。

問: PIMCOでは、イングランド銀行の金融政策および英国の経済成長とインフレをどのように予想しているのでしょうか。
エイミー:
 PIMCOでは、トレンドを上回る経済成長と需給ギャップのさらなる縮小を背景に、イングランド銀行は2016年に政策金利を引き上げると予想しています。

もっとも、利上げを実行する前に、多くの課題を克服する必要があります。なかでも、総合CPIは0.1%と、引き続き目標(2%)を大きく下回り、許容レンジの下限(1%)にも届いていません。このため、カーニー総裁はオズボーン財務大臣に対して四半期に1度の公開書簡を発出して、下振れの要因とインフレ率を押し上げるための措置について説明することになりました。PIMCOでは、エネルギー価格下落の影響がCPIの数字から概ね剥落する今年半ば頃には、CPIは1%を超える水準に回復すると予想しています。このため、ベースライン・シナリオとして年内の利上げを予想する一方で、総合CPIが1%を上回ることが最低限の前提条件の1つになるでしょう。

また、イングランド銀行は、可能であればコアCPI(現在1.2%)の上昇と名目賃金の伸び(現在2.4%)という形で、コアインフレ率が上昇する追加的な証拠を確認したいようです。PIMCOでは、GDP成長率が2~2.5%とトレンドを上回る水準に達し、失業率が足元のように5.2%まで低下することによって、賃金とコアインフレ率は押し上げられるとみていますが、イングランド銀行は利上げを実行する前に、より力強い経済指標を通じて確かな証拠を確認したいようです。このような状況を総合的に考えると、今年後半までは政策金利が引き上げられる可能性は低いと考えられます。

問: 英国ではEU残留の是非を問う国民投票が2016年に実施される可能性が高いのでしょうか。PIMCOの見通しと「Brexit(英国のEU離脱)」の意味合いについて教えてください。
エイミー:
 いわゆる「イン・アウト(残留か離脱かを問う)国民投票」は、2016年第3四半期に実施される公算が大きく、PIMCOでは基本シナリオとしてEU残留派が勝利するとみていますが、投票結果には大きな不確実性が伴うことは認識しています。EU離脱派が勝利した場合、離脱に伴う不確実性によってその後1年間にGDPが1~1.5%押し下げられ、イングランド銀行が利上げに踏み切れるかどうか、疑問の声が上がる可能性が高いでしょう。このため、PIMCOの見通しにおいて、国民投票のリスクが下振れ方向に偏っていることは明らかです。

問: 2016年に欧州がグローバル経済において果たす役割と、グローバル経済に与える影響について説明してください。
パガーニ:
 欧州がグローバル経済に与える影響は、経済成長、インフレ、政治情勢という3つの観点からとらえることが可能です。

ユーロ圏において、1.5%という経済成長率は絶対的水準としてはそれほど高くありませんが、成長トレンドを上回る数字であり、その分だけグローバル経済を刺激する見通しです。とはいえ、ユーロ圏では、(右肩上がりの経常黒字がGDPの10%近くに達したドイツのように)歳出を増やす余裕のある国の内需刺激策が不十分である一方で、その他の国にはそれほど余裕がないため、大きな刺激効果は期待できないでしょう。

インフレに関しては、依然として需給ギャップが大きいことや失業率が非常に高いことを踏まえると、ユーロ圏の物価上昇幅は世界の多くの国々よりも小さくなると予想されます。ボゾムワースが指摘したように、インフレ率はわずか0~1%にとどまる見通しですが、デフレ・リスクを食い止めて足元のグローバルなインフレ圧力をわずかながらも押し上げる水準としては十分でしょう。

政治情勢に注目すると、経済成長が何年にもわたって滞っていることに加えて、難民危機が発生したことを考えると、欧州の政治情勢は波乱含みでリスクが高い状態が続くようです。スペインでは政権樹立に時間を要する可能性がある一方、イタリアでは今春に地方選挙を控えているほか、ドイツとフランスでは2017年に総選挙を控えて政治動向を注意深く見守る必要があります。また、エイミーが言及したように、英国の国民投票は市場のセンチメントを方向付ける重要な役割を果たすかもしれません。

問: PIMCOの見通しを踏まえ、欧州の投資家はポートフォリオをどのように構築するべきでしょうか。
パガーニ:
 2016年は、欧州の市場価格を左右するとPIMCOが考える大きな要因が2つ存在しています。一方では、低水準のインフレ率とECBによる量的緩和政策が、金利と資産価格を下支えし続けるでしょう。量的緩和政策は、その実施期間と規模が、2016年を通して大きな要因となる見通しです。他方では、内政面においても(英国の国民投票や地方選挙)、海外要因においても(FRBの利上げサイクルの推移、中国動向)、不確実性には事欠きません。市場仲介者のバランスシート・コストの増加に伴い流通市場の流動性が顕著に低下した状況においては、この両者の間での綱引き状態が生じるでしょう。その結果、安定期と変動期が交互に到来すると予想しています。PIMCOが投資家としてボラティリティを収益源とするためには、これに備える必要があります。また、市場の歪みをとらえ、市場が必要とする局面で流動性を供給することによって収益を上げるために、リスク・エクスポージャーに対して規律されたアプローチをとり、相場を深追いせず、適度な流動性を確保しなければなりません。

この1年間は、構造的にポジティブ・キャリーを生むポートフォリオの維持に努め、その時々の市場実勢レベルに合わせてポジションの規模を調整するべきでしょう。また、利回りの低さに鑑み、欧州のポートフォリオの平均デュレーションを中立的な水準に保ちつつ、中期ゾーンを重視する意向です。PIMCOでは、イールドカーブの短期、長期ゾーンのアンダーウェイト・ポジションと主要周縁国のオーバーウェイト・ポジションを選好し、市場の水準に合わせてポジションの規模を決定していきます。また、昨年ほどではないものの、米ドルはFRBの利上げサイクルによって下支えされると予想しており、通貨戦略が引き続きパフォーマンスに寄与するとみています。

著者

Mike Amey

ポンド建てポートフォリオおよびESG戦略統括

Andrew Bosomworth

ドイツ債券ポートフォリオ・マネジメント統括責任者

Lorenzo Pagani

ポートフォリオ・マネージャー

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