下のインタビューでは、12月にPIMCOの投資プロフェッショナルがグローバル経済や金融市場の見通しについて議論した、四半期に1度の短期経済予測会議(シクリカル・フォーラム)の結論について、エマージング市場ポートフォリオ・マネジメント・チーム統括責任者のマイケル・ゴメスと、エマージング市場ポートフォリオ・マネージャーのルピン・ラーマンがご説明します。特に、PIMCOの向こう1年間のエマージング市場の見通しについてご紹介します。

問: BRIM諸国(ブラジル、ロシア、インド、メキシコ)の経済成長とインフレについてのPIMCO の見通しを教えてください。
ゴメス:
 BRIM諸国全体としては、経済成長率が緩やかに上昇する一方でインフレ率は低下するとPIMCOでは予想していますが、各国の見通しにはばらつきがみられます。マクロ経済には概ね安定化の兆しが確認されるものの、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを進め、コモディティ価格が現在のように低い水準にとどまる環境において、リスクは下振れ方向に偏っているため、過去のサイクルよりも景気回復の道のりが不安定になる見通しです。また、中国経済の減速や人民元が予想以上に下落する可能性が、PIMCOの見通しの不透明感とボラティリティをさらに高めています。

PIMCOでは、BRIM諸国の経済成長率は2015年の0.5%から2016年には1.25~2.25%のレンジへと改善すると予想していますが、各国の見通しは明確に二分されています。4カ国の中では、ブラジルとロシアが依然として景気後退に陥っています。なかでもブラジル経済は、政治の不透明感や政策の膠着状態の悪化に伴い、急速に縮小しています。経済成長率は2016年に底打ちするものの、V字回復とはならず、2017年になってようやくプラス成長に転じると予想しています。また、ロシア経済は、原油価格下落の影響によって脆弱な状態が続く可能性が高いでしょう。これに対して、メキシコの経済成長率は3%程度になるとみられ、また、インドは7.5 %程度の経済成長を達成してエマージング市場の中で引き続き好調さを維持する見通しです。

一方、BRIM諸国のインフレ率は、ベース効果や通貨安の影響緩和を背景に、2015年の8.7%から5.5~6.5%に低下すると予想しています。インフレ率に関しても、ブラジルの水準はBRIM諸国の平均からかけ離れ、コンセンサス予想を上回るとみています。全般に、ブラジルでは、賃金や年金給付額がインフレ水準に連動する「インデクゼーション」などの構造的な硬直性に起因して、インフレ率が他のエマージング諸国よりも緩やかに低下する傾向がみられます。

問: PIMCOでは、FRBは2016年に3回利上げを実行すると予想しています。今後予想されるFRBの金融政策は、エマージング市場の経済および金融市場の見通しにどのように影響するのでしょうか。 
ゴメス:
 エマージング市場の中央銀行は、従来はFRBの政策を後追いしていたものの、最近では金融政策決定の柔軟性が増しています。1994年と2000年代初頭の引き締め局面では、エマージング市場は危機に陥り、ボラティリティが上昇していたため、中央銀行は自国通貨を支えるために利上げを余儀なくされました。

これとは対照的に、2004年のFRBの利上げ局面では、ほとんどのエマージング諸国がデレバレッジを終え、外貨準備高を潤沢に備えていたため、エマージング市場では、中央銀行が個別の政策対応を柔軟に実行できる余地が大きく、その結果、利上げが比較的小幅にとどまりました。

その後、エマージング市場の柔軟性はさらに改善しています。ほとんどの国では変動為替相場制が導入されたため、以前よりも外的衝撃に適切に対応することが可能になっています。このため、今後については、大半のエマージング諸国では、中央銀行がいずれは利上げに踏み切るとPIMCOでは予想しているものの、利上げのタイミングやペースを調整できる余地が大きくなっています。全般に、需給ギャップがマイナスでインフレ圧力が抑制された足元の環境において、(一部を除く)ほとんどのエマージング諸国が利上げを先送りしたい意向であることを踏まえると、柔軟性の改善はとりわけ重要なポイントと言えるでしょう。実際、エマージング市場では、過去1年間に実質政策金利が明確に分岐しており、アジアではここ最近で最も高い水準で推移しているのに対して、欧州ではゼロに近く、ラテンアメリカでは国ごとに大きく異なっています。ブラジルにおける政治の機能不全やロシア、メキシコの財政収支に与える原油安の影響といった個別要因に鑑みると、今後についても、エマージング諸国間で金融政策のサイクルが完全に一致することはなく、米国の政策とも乖離することになるでしょう。

問: ここで、為替相場はどのように関連するのでしょうか。 
ラーマン:
 FRBの金融引き締めに対するエマージング通貨の反応が、金融政策を決定付ける重要な要因になるとみられます。エマージング市場では、為替レートが大幅に下落した場合、いずれは利上げが実行される公算が大きいと予想しています。

PIMCOでは常々、エマージング通貨が直近のマクロ経済動向や市場動向を反映して十分に下落したのか、あるいはさらなる下落余地があるのかどうかを分析しています。2014年1月以降、エマージング通貨は平均的には約20%下落しており、ロシア・ルーブルやブラジル・レアルなどの通貨は40%以上も下落しました。これは大きな変化であり、水準調整は概ね終了したようにも思われますが、とりわけコモディティ価格に下落圧力が残る場合には、今後さらなる下落余地があるとみています。今年の中国の経済成長率は5.5~6.5%とコンセンサス予想を下回り、人民元は変動を伴いながら徐々に下落するというPIMCOの予想を踏まえると、アジア通貨(特に中国の経済成長と密接に結び付いた通貨)は米ドルに対してさらに下落する見通しです。

問: 最近2年間に、BRIM諸国の中ではブラジルとロシアが投機的等級に格下げされました。現在のエマージング市場の格付けはファンダメンタルズに見合ったものなのでしょうか。それとも市場が見落としているリスクが存在するのでしょうか。 
ラーマン:
 中国経済の減速、コモディティ価格の下落、エマージング市場の長期的成長率の低下によって、エマージング市場の信用の質は確実に損なわれてきました。過去10年間にわたって、コモディティ・ブームがエマージング銘柄の格上げを主に牽引してきましたが、原油と鉄鉱石の価格が最近1年間だけでも40%近く下落するなどコモディティ価格が急落したことに伴い、格上げの流れは止まっただけでなく、反転する兆しもみられています。ロシアとブラジルが格下げされたことに加えて、2014年にはアルゼンチンが、2015年にはウクライナがデフォルトしたように、ソブリンの信用リスクが高まっているようです。

PIMCOでは、この先BRIM諸国において大きな格上げ、格下げは想定していませんが、エマージング市場全体の中では、トルコ、南アフリカ、アフリカのコモディティ生産国に格下げリスクがあるとみています。前向きな動きとしては、マクリ大統領率いる新政権が誕生したばかりのアルゼンチンが、向こう1年間に格上げされる可能性があります。

問: 投資家は2016年のエマージング市場をどのように考えるべきでしょうか。 
ゴメス:
 年初来の数週間に観察されたように、エマージング市場は、リスクオフのセンチメントや、前述した短期的なマイナス要因(FRBの利上げ、中国経済の減速、コモディティ市場の下落)、そして市場流動性の低下に対して脆弱な状態が続いています。PIMCOでは、このような状況を念頭に、エマージング市場のポジションを抑制しつつ、市場の歪みがさらに拡大した局面でポジションを追加できるように、余裕資金を確保しています。

もっとも、エマージング市場には明るい兆しも見られます。ショックに対する債務の元利支払い能力の耐性は強く、バリュエーションの調整も進み、ファンドからの資金流出や社債の総発行額が減少するなかで、テクニカルの弱さも解消される可能性があります。PIMCOでは、エマージング市場が年内に回復軌道に乗る可能性は引き続きあるとみていますが、とりわけ中国に関して、今後の展開を注意深く見守っています。

そのような中でも、エマージング市場には優良な投資機会が存在するとみています。アジア通貨のショート・ポジションはそのうち最も優先度の高いものですが、これに続くものとしては、価格に既に多くのダウンサイド・リスクが反映されているものの政府の堅固なバランスシートによるサポートを一因として高い信用力を保持している、厳選された準ソブリン向けのエクスポージャーがあげられます。また、最近1年間では他のエマージング市場と足並みを揃えて下落しているものの、ファンダメンタルズが堅固な一部の国にも注目しています。例としては、内需が拡大傾向にあり、コモディティ市場や中国に対する依存度が低いメキシコやインドなどが挙げられます。

著者

Michael A. Gomez

エマージング市場ポートフォリオ・マネジメント・チームの統括責任者

Lupin Rahman

ソブリン・クレジットのグローバル統括責任者

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