短期経済予測

グローバル経済は収斂、金融政策は二極化

12月初旬に開催した短期経済予測会議(シクリカル・フォーラム)では、世界各地からPIMCOの投資プロフェッショナルがニューポートビーチに集まり、向こう1年間の投資に重要な意味を持つとPIMCOが考えるトレンドを見出すべく、グローバルな市場と経済の状況を議論しました。PIMCOの短期的なベースライン・シナリオでは、米連邦準備制度理事会(FRB)が緩やかな利上げサイクルを開始する一方で他の主要中央銀行は緩和政策を継続することから、2016年は中央銀行の政策が二極化する公算が大きいものの、主要国の経済成長率は引き続き収斂すると予想しています。向こう1年間は、FRBの政策、コモディティ価格、エマージング市場の先行きが運用成果にとって重要になる可能性が高いといえます。短期的には、ポートフォリオにおいて、ボラティリティの上昇に備え、そこから収益の獲得を目指す方針です。

ローバル経済は収斂、金融政策は二極化
2016年も、グローバル経済は緩やかに成長する見通しです。PIMCOでは、12月初旬に開催した短期経済予測会議(シクリカル・フォーラム)において、主要な先進諸国およびエマージング諸国の景気サイクル動向を分析し、向こう1年間に投資家にとって重要な意味合いを持つと考えられるトレンドを見極め、このような見通しを形成しました。

PIMCOが形成した2016年のグローバル経済見通しは、「グローバル経済は引き続き収斂、金融政策は二極化」と要約されるでしょう。

PIMCOでは、偶然にも今年最も重要な米連邦公開市場委員会(FOMC)の1週間前に開催したシクリカル・フォーラムにおいて、このような見通しをたてました。フォーラムでは、(参加者の1人が大胆に名付けたように)「ゾンビの黙示録」という事態に発展しなければ、米連邦準備制度理事会(FRB)は12月に利上げサイクルを開始するとの結論に至りました。これは、グリーンスパン元FRB議長が2004年6月に着手して、バーナンキ前FRB議長(現PIMCOのシニア・アドバイザー)が2006年6月に終止符を打った前回のサイクル以降初めてとなります。

この11年の間に、そして2015年9月のシクリカル・フォーラム以降もさまざまな出来事が生じました。9月のフォーラムでは、中国のハードランディング・リスクと、イエレン議長率いるFRBが年内あるいは当面の利上げを見送る可能性について、集中的に議論しました。その後、決して消滅してはいないものの、中国に対する懸念がやや後退する一方で、米国では、堅調な雇用統計や賃金インフレの上昇を示す証拠が、FRBによる利上げサイクル開始に必要とされていたハードデータとなりました。PIMCOでは、「1回限りの利上げ」に終わる可能性は「ゾンビの黙示録」のように極めて少なく、この先に利上げサイクルが始まると見ています。さらにFRBでも新しい「中立的(ニュートラル)な」実質金利という概念を受け入れ、その言葉を使用していますが、そのニュー・ニュートラルの世界では、FRBの利上げペースはかつてなく緩やかなものになる可能性が高い、というイエレン議長の言葉を額面通りに受け止めています。

2016年は、FRBのみならず、メキシコ、ブラジル、南アフリカの中央銀行も利上げを実行する見通しです。イングランド銀行(BOE)もFRBに追随する見込みで、2016年には金融引締めを始めるでしょう。しかしながら、利上げを実行する数は少数にとどまり、欧州中央銀行(ECB)、日本銀行、中国人民銀行(PBOC)などの他の主要なすべての中央銀行を含むほとんどの中央銀行は、利下げや量的緩和プログラムの継続、拡大、または少なくとも政策金利を実質的な下限近辺に据え置くことによって、金融政策を緩和する可能性が高いでしょう。

もっとも、PIMCOでは、2016年は中央銀行の政策が二極化する公算が大きいものの、主要国の経済成長率は引き続き収斂すると予想しています(図表1)。2008~2009年のグレート・リセッションからの米国経済の回復局面に関連して、ほとんど評価されていないものの注目すべき点は、その安定性であり、この間の国内総生産(GDP)成長率(年率)は、2010年が2.5%、2011年が1.6%、2012年が2.2%、2013年が1.5%、2014年が2.4%、2015年が2.5%(予想)、そして2016年のPIMCOのベースライン・シナリオは2.25%となっています。「GDPをトレードすることはできない」と言われていますが、仮にできるとすれば、その「価格」は過去5年間に大きくは変動しなかったでしょう。このようにほぼ安定した米国のGDP成長率と他の主要国の成長率を比較すると、2008~2009年のグレート・リセッション以降、欧州、日本、ブラジル、ロシアはいずれも再度の景気後退に陥り、ブラジルとロシアはいまだ景気後退から抜け出せず、中国の成長率および成長見通しは大幅に悪化しています。一方、欧州と日本の経済成長率は2015年に持ち直し、2016年も緩やかに上昇すると予想されているほか、エマージング市場では、「BRIM」諸国(ブラジル、ロシア、インド、メキシコ)の経済成長率も上昇する見通しです。このため、PIMCOでは、2016年は中国経済の成長鈍化が続き、金融政策が二極化するなかで、世界経済の成長率は引き続き収斂し、先進国のインフレ率は目標値に近づくと予想しています。

結論として、グローバル経済は横ばいの成長軌道が続くと予想しており、以下各国の見通しを掘り下げて検討した上で、投資家にとっての意味合いについて議論します。

米国の見通し
PIMCOでは、米国の向こう1年間のベースライン・シナリオとして、経済成長率はトレンドを上回る2.0~2.5%(現在の拡大局面の平均並み)、総合インフレ率(CPI-消費者物価指数)を1.5~2%のレンジと予想しています。2016年には雇用者数の伸びが頭打ちする可能性が高まっています。そもそも労働所得の増加は、雇用者数の増加、労働時間、時間当たり賃金から算出されますが、米国経済が完全雇用に近づくと雇用者数の伸びが鈍化すると予想されるため(労働参加率が回復しない限り、雇用者の月間増加数は来年のどこかの時点で10万人を下回る可能性があります)、労働所得の増加に対する実質賃金の増加の寄与度が高まるようになるでしょう。PIMCOのベースライン・シナリオでは、所得増加の牽引役が雇用者数の増加から賃金の増加に移行する結果、消費の伸びは鈍化する見通しです。また、世界経済の回復が中程度にとどまり、米ドルが上昇するシナリオでは、国際貿易が総需要を押し上げる効果はあまり期待できないでしょう。一方、プラス材料としては、最近、議会とオバマ大統領が予算案で合意に至ったことにより、連邦支出の増加が米国経済にとってわずかながらも予想外の財政刺激効果を生むでしょう。FRBに関しては、12月の初回の0.25%の利上げを受けて、市場では、2016年に2回の0.25%の追加利上げしか織り込まれていませんが、PIMCOでは、FRBによる利上げの回数は市場の想定を上回るリスクの方が高いとみています。

ユーロ圏と英国の見通し
ユーロ圏のベースライン・シナリオとしては、1.5%程度という、トレンドを上回るGDP成長率が持続すると予想しています。ECBによる量的緩和政策は、引き続き銀行貸出残高の増加に好影響を与えているほか、欧州周縁諸国の銀行間の貸出金利格差を縮小させています。もっとも、2016年は、これまでのユーロの下落によって純輸出が恩恵を受けるものの、ユーロ圏の主要貿易相手国の経済成長が鈍化する結果、純輸出が経済成長に与える効果は限定される可能性があります。一方、総合インフレ率は、ユーロ安と原油価格の影響を受けて、ゼロ近辺だった2015年から2016年には1%程度まで上昇すると予想していますが、現在の金融政策の枠組みにおいては、コアインフレ率が「物価の安定」とECBが定義する水準まで回復する公算は小さいでしょう。その場合、ECBには量的緩和の規模とペースの再調整を求める圧力がかかり、現行のプログラムが拡大する可能性が浮上する見通しです(12月の政策理事会後の発表では、ECBは量的緩和プログラムの拡大について市場の期待に応えることができず、ECB自身のメッセージをうまく伝えることができませんでした)。

英国の経済成長率に関しては、2~2.5%程度というトレンドを上回るレンジを予想しています。労働市場のさらなる逼迫と実質個人所得の堅調な伸びを背景に、民間部門の内需が引き続き経済成長を牽引するとみています。また、ポンド高の影響が弱まり、サービス部門のインフレ率が賃金コストの増加に伴い緩やかに上昇する結果、コアインフレ率が小幅に上昇するというPIMCOのインフレ見通しは、コンセンサス予想と一致しています。一方、2016年末までに総合インフレ率がコアインフレ率に収斂すると予想しています。この見通しに対する英国国内のリスク要因は、2016年第3四半期に実施が予定される「Brexit(英国のEU離脱)」の是非を問う国民投票です。PIMCOの基本シナリオとは異なりますが、EU離脱派が勝利した場合、その後1年間にGDPが1~1.5%程度押し下げられる公算が大きいため、これはPIMCOの短期的な時間軸における下振れ要因と言えるでしょう。

日本の見通し
日本のGDP成長率は、2015年の0.6%(予想)から2016年には1%程度へと緩やかに上昇すると予想しています。円安が企業利益や株式市場にとって大きなプラス要因となってきましたが、中国などの主要貿易相手国の景気が減速しているため、2016年は純輸出が総需要を押し上げる効果はそれほど大きくないとみています。また、2016年は総合インフレ率がプラス圏内で推移する見通しですが、その水準は1%近辺と日銀の目標(2%)を大きく下回ります。このため、日銀が追加緩和に踏み切る可能性は非常に高いとみていますが、日銀の量的・質的緩和プログラムは技術的な限界に達し得るという懸念が市場参加者と日銀首脳の間でも高まっているため、これは確実なものとは言えません。また、大規模な金融緩和によって、金融市場には大きな効果が生まれ、インフレ期待にも好影響が及んでいますが、政府当局の意向に反して賃金は伸び悩んでいます。また、新たな重要な動きとしては、高齢者や貧困層への富の移転、最低賃金の増額、労働参加率を高めるための育児や老人介護プログラムの拡大など、アベノミクスの新3本の矢のなかで明らかになった財政政策における目標の変化です。

中国の見通し
PIMCOの中国経済の見通しは9月のフォーラム時点からほとんど変わっておらず、経済成長率を6%程度、総合インフレ率を2%程度と予想しています。中国は景気減速という課題と内需主導型のサービス経済への転換に取り組むために必要な「意思と資金」を引き続き持っているものの、これらは容易な問題ではないため、途中で政策の失敗が生じる可能性があるとみています。金融政策面では、預金基準金利と預金準備率の引き下げを通じて、市場の想定を超える追加緩和が実施されると予想しています。また、人民元が国際通貨基金(IMF)の準備通貨として採用されたため、為替市場に介入する必要性が後退したとみています。人民元は2016年に、市場が想定する水準(4%程度)以上に下落すると予想しています。実際、中国は「ダーティー・フロート(管理された変動為替相場制) 」にシフトし、中心レートの上下2%のレンジ内という、これまでより大きな為替変動を許容すると考えています。一方財政政策面では、需要喚起を企図して、政府系金融機関が地方での公共工事向けに実質的な財政支出を行う結果、財政赤字が小幅に増加するとみています。

ブラジル、ロシア、インド、メキシコの見通し
2016年のBRIMの経済成長は2015年を僅かに上回ると予想しますが、コンセンサス予想は下回ると見ています。PIMCOの予想がコンセンサスを下回る重要な要因は、ブラジルにおいて、政治の膠着状態や不透明感が悪化するなかで信頼が大きく損なわれたことに伴い、経済が縮小していることです。また、ロシア経済も、景気が少しずつ回復しつつあり、これまでよりペースは鈍化するものの、2016年に縮小すると予想しています。一方、インドとメキシコは、コンセンサス予想通りの経済成長を達成する見通しですが、メキシコに関しては小幅なマイナスの需給ギャップが残るとみています。インフレに関しては、2016年のBRIM諸国の総合インフレ率は6%程度になると予想しています(コンセンサス予想は5.9%)。4カ国の平均から依然としてかけ離れているブラジルでは、ディスインフレが予想よりも小幅であり、総合インフレ率の低下を制限する構造的な硬直性(賃金や年金の指数化など)が存在するため、インフレ率はコンセンサス予想を上回ると予想しています。その他の国では、物価上昇圧力は概ね抑制される見通しであり、メキシコの総合インフレ率は3%にとどまるでしょう。

ベースライン・シナリオに対するリスク要因
フォーラムとその後のポートフォリオ・マネジメント戦略会議では、マクロ経済見通し、なかでも投資ポジションの構築に関連する一連のリスクに注目しました。PIMCOでは、ベースライン・シナリオとして描いたように、先進国市場ではトレンドを上回る経済成長と緩やかなリフレ軌道が続くとみていますが、投資家にとって困難な状況は変わらないでしょう。以下では、マクロ経済や金融市場に関連する主要なリスクを5つ取り上げます。

第1に、米国の見通しは大きく二つの見方に分かれています。インフレ率は、向こう1年間にFRBの目標水準近辺まで回復する見方と、さらに下振れするとの見方です。PIMCOでは、FRBはゼロ金利政策の解除に成功すると予想しているものの、2008年の金融危機の後に金融政策の引き締めを試みた国々が経験したように、実体経済や金融市場の反応がFRBの政策運営を阻害するリスクも残ります。

第2に、そして1点目と関連して、2015年と同様に2016年も、コモディティ市場がボラティリティ上昇の主因となる可能性があります。これは、クレジット市場のみならず、リフレ政策の判定基準にとっても重要です。イエレン議長を中心とするFRBのスタッフは、実際のインフレ率をとりわけ重視し、彼らのインフレ見通しを指針とすることには慎重になると予想しています。

第3に、エマージング市場は引き続きボラティリティの潜在的な上昇要因です。たとえば中国に注目すると、PIMCOではベースライン・シナリオとして、過去1年間と比べてこの先1年間は、中国のマクロ的な影響がコモディティ市場や国際貿易の動きを通じて世界全体に波及する度合いは弱まる、とみています。中国経済の減速は、マクロ予想にも市場価格にも織り込まれていますが、それでも中国政府の政策、なかでも為替政策は、主要なリスク要因と言えるでしょう。

第4に、FRBが政策を引き締める一方で、欧州と日本は拡張的な量的緩和政策を継続する見通しですが、政策介入の意思、能力、効果については疑問が残ります。中央銀行による介入が多くの市場において市場価格とファンダメンタルズを乖離させてきたことを踏まえると、これは特に重要な点です。

第5に、市場流動性が低下した結果、市場が情報や政策の比較的小さな変化に過剰反応する傾向がみられるようになりました。流動性の低下は、トレーディングに必要な銀行の資本コストを厳格化する規制によるところが大きいのですが、副次的な要因として、量的緩和型の政策介入の結果、(そしてこれは量的緩和の政策目標の一部でもあるのですが、)投資家のポジションに偏りが生じたことが挙げられます。

投資に対するインプリケーション

金融政策の二極化、各国経済の収斂、ベースライン・シナリオに対するリスクとして特定された要因を踏まえると、向こう1年間は、FRBの政策、コモディティ価格、エマージング市場の先行きが運用成果にとって重要になる可能性が高いことは明確です。

PIMCOの予想通り、FRBは12月に「ハト派的な利上げ」を実行しました。PIMCOでは、ベースライン・シナリオとして、向こう1年間に経済成長率がトレンドを上回り、インフレ率がFRBの目標(2%)に近づくなかで、FRBはゼロ金利政策の解除に成功するとみていますが、政策金利の先行きには大きな不確実性が伴います。FRB自身も声明文において、金融政策を決定する際に、インフレ率の目標に向けての「実際の推移と予想される推移を注意深くモニタリング」し、さじ加減を調整すると述べています。PIMCOのベースライン・シナリオに則した形で、FRBが金融市場やマクロ経済に悪循環を生じさせることなくゼロ金利政策の解除に成功し、かつ、インフレ率やリフレ政策が期待通りであれば、FRBはインフレの実際の推移と予想される推移について確信を深めるようになるとともに、市場との対話においてあいまいさが後退し、その結果、市場には短期金利がより高い水準で推移する見通しが織り込まれると考えられます。FRBは四半期予想のなかで、FOMCメンバーの政策金利予想を示す「青いドット」を公表しています。予想の中央値を見ると、フェデラル・ファンド(FF)金利の水準は2016年末が1.4%、2017年末が2.6%となっています。ディスインフレ懸念が後退すれば、FRB予想に近い水準が市場価格に織り込まれることは十分に考えられるでしょう。

ポートフォリオのポジショニングに関しては、FRBが金融政策を継続的に引き締めるなかで、米国を中心に世界中で金利上昇圧力が生じる可能性と、米国を始めとする先進国市場ではイールドカーブ全体においてタームプレミアムが全般に小さいという事実を踏まえて、大半のポートフォリオにおいてデュレーションをアンダーウェイトに据え置く方針です。また、インフレ率が短期的な時間軸において2%近くまで回復するという見通しに基づき、名目債対比でバリュエーションが割安とみて、米国のインフレ連動国債(TIPS)を引き続き選好しています。

また、政府機関系モーゲージ債(MBS)については概ね中立的である一方で、PIMCOが米国の住宅市場の見通しに引き続き前向きである現状において、資本構成上の優先順位が高いことなどを理由に、非政府機関系MBSを選好しています。

バリュエーションが適正か割高ななか、クレジット・リスク・プレミアムは合理的なようにみえます。クレジットのファンダメンタルズはエネルギー以外のセクターでは堅固なため、向こう1年間は、市場が弱含む局面を生かして、クレジット・リスクを全般に積み増す方針です。PIMCOでは、投資適格債、ハイイールド債、米銀のシニア債、欧州のバンクキャピタルに投資機会があるとみています。

通貨に関しては、米ドルにはさらなる上昇余地があるとみていますが、過去1年半と比べて上昇ペースは鈍化するでしょう。これまで、米ドルのロング・ポジションは、多くのポートフォリオに利益をもたらしてきましたが、今後は、対米ドルで大きく下落し、バリュエーションの魅力が後退したユーロと円に対するポジションを中心に、削減する方針です。一方、アジアのエマージング市場通貨に対しては、FRBの金融引き締め局面における政策の二極化と、人民元がフォワード価格に織り込まれた水準よりも下落する可能性が高いことを踏まえて、引き続き米ドルのロング・ポジションを選好しています。

エマージング市場に関しては、前述のアジア通貨に対する見方に加えて、エマージング市場戦略に特化したポートフォリオ以外ではほとんどの場合、全般に慎重なスタンスを維持する方針です。ただし、市場の混乱局面では、厳選したエマージング市場の投資機会を模索してまいります。

欧州市場では、ユーロ圏経済のリフレ政策に関連する戦略を引き続き選好しています。ただし、ECBの動きが、追加緩和政策の適切な規模や政策の有効性をめぐる内部の議論に多かれ少なかれ制約されるという見方もあることから、対象資産の短期的な値動きのスピードや幅は小さくなる可能性に留意します。

コモディティに関しては、アセットアロケーションのポートフォリオにおいて概ね中立的なスタンスをとる方針です。2016年のエネルギーの見通しについては、慎重ながらも楽観的にみています。ここ最近の記録的な暖冬は、年末に向けて大規模な売り要因となっており、その結果、設備投資の削減ペースはさらに加速し、2016年に原油価格が上昇する下地が整うとみられます。その他のコモディティの先行きに関しては、中国経済の減速と消費主導型経済への転換が卑金属価格を引き続き押し下げる公算が大きいため、それほど楽観的ではありません。全般に、供給量を自然に素早く調整でき、消費者志向の高いコモディティを選好しており、この2つの観点から、石油に魅力を感じています。

株式に関しては、全般に中立的なスタンスです。米国では、ドル高およびコモディティ安というマイナス要因や利益率が既に高いことを踏まえると、値上がり益を維持することは困難になるでしょう。その一方で、経済成長は持続性することから、株価収益率は足元の水準にとどまると予想しています。PIMCOでは、米国株式を小幅にアンダーウェイトとする一方で、中央銀行が引き続きリスク資産を下支えしている欧州と日本の株式を小幅にオーバーウェイトとしています。また、割安なバリュエーションと厳しいファンダメンタルズのバランスを考えると、エマージング市場の株式には概ね中立的なスタンスをとっています。

短期的には、ポートフォリオにおいて、ボラティリティの上昇に備え、そこから収益の獲得を目指す方針です。そのためには、リスク・ポジションの規模を慎重に決定し、流動性が相対的に低い資産を保有する代償として適正なリターンを確実に受けるように、資産価格に織り込まれた流動性プレミアムに細心の注意を払う必要があります。ストレス時にリスク資産を積み増せるような余地を残すことによって、市場が必要とするタイミングで流動性を供給する体制を整えています。

著者

Richard Clarida

グローバル戦略アドバイザー

Andrew Balls

グローバル債券担当最高投資責任者(CIO)

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