い名目成長率で、金利がゼロ近辺またはマイナスの環境を乗り切ることは容易でないことは予想されていましたが、昨年12月の約10年ぶりのとなる米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ以降の展開は、多くの中央銀行、市場参加者、投資家の想像をはるかに超えるものでした。

このため、3月上旬にニューポートビーチで開催された短期経済予測会議(シクリカル・フォーラム)では、PIMCOの投資プロフェッショナルが向こう半年~1年間の経済、市場見通しを改めて細かく検討し、多くのテーマが議論の対象になりました。今回のフォーラムでは、PIMCOの世界各地域のポートフォリオ・コミッティーに加えて、新たに創設されたグローバル・アドバイザリー・ボード(ベン・バーナンキ氏を議長とし、他にゴードン・ブラウン氏、アンマリ―・スローター博士、ウン・コクソン氏、ジャンクロード・トリシェ氏の計5名で構成)が、フォーラムの前日に初回の会合を開き、見通しに関してのアドバイスをご提供下さいました。

昨年12月のフォーラム以降、非常に多くのことが起こっています。FRBによる初回の利上げは十分に周知されていたため、投資家の反応は冷静でしたが、その利上げに一部対応するかたちで、中国政府が、年明け数日後に予想よりも大幅な人民元の下落を容認しました。これを受け、金融市場は再び深刻なリスクオフ・モードに転じ、世界中の金融環境は大幅に逼迫しました。その後の展開はご存知の通り、原油価格は直近の最安値を更新し、日本銀行は予期せぬ史上初めての超過準備金に対するマイナス金利を導入した結果、銀行の株式と債券、そしてリスク資産全般が大幅に下落しました。さらに、欧州中央銀行(ECB)がマイナス金利幅の拡大を示唆したことで、欧州の銀行セクターのパフォーマンスが悪化し、中央銀行が2008年の金融危機以降に繰り返し使ってきた、資産価格、経済成長率、インフレ率を押し上げる能力に対して、市場の信認が失われつつあることが浮き彫りになりました。

世界経済の成長率と FRB の利上げ予想を下方修正 
人民元が安定するなかで、FRBが引き締めのペースを遅らせ、ECBと日銀がその副作用の大きさにマイナス金利の相対的なメリットを見直す兆しが生まれたことを背景に、株価、クレジット・インデックス、原油価格は2月中旬の底値から反発しています。足元では市場が安定しつつあるものの、年末年始に世界経済のモメンタムが悪化したことと、一時的とはいえ1~2月に世界中で金融環境が大幅に逼迫したことを受けて、フォーラムでは、2016年の主要国の経済成長率とインフレ率は、昨年12月の予想レンジを下回る可能性が高いという結論に達しました。

フォーラムでは、これまでの7年近くに及ぶ「BBBの景気拡大」は常に力強さに欠けるものでしたが、今年はさらに並以下(Below-par)の、脆くて(Brittle)アップダウンの多い年(Bumpy)になる公算が大きいとの見方が大勢を占めました。その結果、PIMCOでは、2016年の世界の実質国内総生産(GDP)成長率見通しを0.25%引き下げて、2~2.5%のレンジとしました。2014年と2015年の実績がそれぞれ2.8%、2.6%ですから、修正後の見通しは景気減速が続くことを意味します。また、過度な米ドル高の発生で、金融政策の二極化の限界が明らかになったことを中央銀行が認識し、米国の金融政策が人民元安を通じて金融環境の悪化につながるなど「メイド・イン・チャイナ(中国を発端とする)」の様相が見られるようになったことから、FRBの年内の利上げは1~2回にとどまる公算が大きいとの結論に至りました。実際、フォーラム後に開催された3月の連邦公開市場委員会(FOMC)では、メンバーによる年内の利上げ回数の予想の中央値は、12月時点の4回から2回に下方修正され、PIMCOの予想に近づいています。また、PIMCOの分析と同様に、FRBは世界経済の動向を米国の経済見通しに対する主要なリスクとして指摘しました。

多速度で進む世界経済に対し、強まる向かい風 
世界経済は、表面的には全般に緩慢なペースで成長していますが、引き続き多様性を保ちつつ多速度で進んでいます。また、経済情勢と政策の二極化の動きが、緊張関係、ボラティリティ、リスク、投資機会を引き続き数多く生み出しています。その一方で世界各国の状況を見渡すと、PIMCOが2008年の世界金融危機後に提唱し、既に時間を経て証明済みの、世界経済の長期的な変貌を表す「ニュー・ノーマル」という概念通りに、名目・実質GDPの成長率、そして当然ながら金利も、過去の平均を大きく下回る水準にとどまる見込みです。

ニュー・ノーマルの特徴は潜在産出量と総需要の不足であり、高水準の債務残高と、貯蓄が投資を必要以上に上回る状態-世界的な貯蓄過剰-にあります。このような状況は、長期(3年~5年)だけでなく短期的(半年~1年)にも経済成長の大きなマイナス要因となり、低い「中立的な」政策金利という我々の予想の根拠となっています。PIMCOでは、「ニュー・ノーマル」と並び、中立金利が従来の景気サイクルよりも低い水準にとどまるこの状態をより明示的に「ニュー・ニュートラル」と表現しています。

これに加えて、米国の大統領選挙、欧州におけるポピュリズムの台頭と難民危機、英国のEU(欧州連合)離脱(Brexit)リスク、ブラジルなどにおける政権の不安定化など、さまざまな国、地域における政治情勢の不確実性が、状況を複雑にしています。政治リスクを定量化することは難しいですが、消費者心理や企業のアニマル・スピリットを一段と悪化させる恐れがあり、特に、長期的な理由によって望ましい貯蓄と投資の間にギャップがある場合には、その影響が急に拡大することも考えられます。非常に経験豊富な、あるフォーラム参加者は、世界経済の主な低迷要因は世界中の「ゾンビ化した政府」にあるとさえ指摘しています。

好材料は、景気後退リスクの低さ 
しかしながら、PIMCOでは、あらゆる要素を比較検討した上で、今は絶望するタイミングでもないとの結論に至りました。多速度で「BBB」の経済成長に対するマイナス要因は多いものの、米国経済や世界経済が短期(半年~1年)において景気後退に陥るリスクは依然として相対的に低く、少なくとも株式市場やクレジット市場が1~2月に織り込んでいたほどの確率ではないとの見方で一致しました。PIMCOの予測モデルでもフォーラムにおける議論でも、景気後退入りの確率はせいぜい20%程度であると予想しています。景気拡大局面は長期化していますが、拡大局面は時間の経過とともに終了するわけではなく、深刻な不均衡と金融政策の大幅な引き締めが重なった際に終了する傾向があることを思い起こすことが重要です。現時点では、過剰消費、過剰投資、景気過熱、過度な金融引き締めといった、景気が直ちに落ち込むことを示す典型的な兆候は確認されていません。結論としては、PIMCOでは現在の拡大局面は継続すると予想しています(詳細はMacro Perspectives「2020年の景気後退」をご覧ください)。

3 つの「 C  
しかしながら、経済、金融、政治に関連するテール・リスクに溢れた不透明な世界において、特定の基本シナリオだけに注目するべきではありません。むしろ、投資家は、基本シナリオの周辺で発生する確率分布を考えながら、リスクを検討するべきでしょう。

これに関連して、PIMCOでは、「中国(China)」、「コモディティ(Commodities)」、「中央銀行の政策(Central bank policies)」という3つの大きな要素が2016年の世界経済や金融市場の見通しを左右するとの結論に至りました。これら3つの「C」の動向を検討することによって、2016年の経済や金融市場の先行きがPIMCOの基本シナリオからどの程度上振れ、または下振れするのかを想定しやすくなります。また、実現するシナリオを確実に予想することができない以上、ポートフォリオを構築する上では、非常に慎重なアプローチをとるべきでしょう。

中国 資本流出と人民元の動きに注目 
中国に関してフォーラム参加者は、人民元の無秩序かつ大幅な下落が2016年の世界の経済および金融市場にとっての最大のリスクであるとの見方で一致しました。

たしかに、PIMCOではより無難な基本シナリオを描いており、継続的な政策介入と的を絞った資本規制の効果で、人民元は緩やかに、落ち着いて下落するとみています(アジア・パシフィック・ポートフォリオ・コミッティーは、向こう1年間に人民元は対米ドルで7%下落すると予想しています)。また、米ドルが対ユーロ、対円で概ね安定すれば、過去2年間人民元が米ドルとともに世界の他の通貨に対して大幅に上昇する圧力が存在していた時とは異なり、外貨バスケットに対する人民元の相対的な安定性が確保されることから、中国人民銀行の政策運営はいくぶん容易になるでしょう。

しかしながら、中国の企業と家計の資本が年内にどの程度流出するのかが、大きな不透明要因となっています。

  • 非常に経験豊富な中国ウォッチャーは、資本流出の大部分は企業が米ドル建て債務をヘッジする動きに関連するもので、ヘッジの大半は完了したとみられることから、流出の動きは比較的早い時期に後退するという見通しを披露しました。
  • 一方で、資本収支の自由化が始まった今、これまで投資対象がほぼ国内資産に限定されていた中国の投資家が、ポートフォリオの国際的な分散に走るだろうとの、やや悲観的な意見も出ました。その場合、資本流出は始まったばかりで、中国の3兆米ドルを超える外貨準備高は比較的早く枯渇する可能性もあります。

コモディティ 原油価格は底打ちした可能性         
正しいかどうかはさておき、金融市場は年初の原油価格の下落を明確なマイナス要因とみなしてきました。原油安は米国および世界のエネルギー・セクターのデフォルト・リスクを押し上げ、ひいては銀行のバランスシートを侵食するというのが、主な根拠です。一方、ここ最近の価格回復は、株式市場とクレジット市場に大きな安心感をもたらしました。PIMCOのコモディティ・チームは、原油安により需要が拡大するとともに、より重要な点として、供給量も調整が続く結果、原油価格は年内に1バレル=50ドル程度まで上昇する公算が大きいという前向きな基本シナリオを提示しています(他方では、短期的に30ドルを下回るリスクも認識しています)。        

中央銀行 政策効果の限界を試す         
フォーラムでは、中央銀行には資産価格や経済を刺激する能力が残されているのか、あるいは政策手段は枯渇してしまったのか、というテーマについて、最も白熱した議論が展開されました。念のため申し上げると、経済成長とインフレの下押し圧力が払拭されないなかで、可能なことはなんでもするという 決意 を疑う声はほとんど聞かれませんでした。しかしながら、金融市場やPIMCOのなかでも、長期の債券利回りが大幅に低下した現状での追加的な量的緩和政策の有効性や、さらにはマイナス金利政策が銀行の収益性と、ひいては銀行の貸出に与える副作用について、厳しい見方が広がっています。しかし全体としては、リターンは明確に低下しているとはいえ、金融緩和政策は正しい方法で実行される限り、資産価格、経済成長、インフレを下支えすることが可能であるとPIMCOでは考えています。        

いくぶん前向きな動きとして、フォーラム直後に発表されたECBの一連の追加緩和策から判断すると、中央銀行内部でもマイナス金利政策の有効性について同様の疑問が生じ始めているようであり、政策手段の見直しが進んでいます。ECBは、金融セクター以外の社債の買い入れ決定を通じて、量的緩和政策における信用緩和の側面を強化するとともに、マイナスの中銀預金金利が収益性に与える影響を緩和する効果もある、一定の条件下でマイナス金利となる長期資金の供給拡大も決めました。また、日銀は3月14、15日の金融政策決定会合において、超過準備に適用される金利のマイナス幅拡大を見送るとともに、上場投資信託(ETF)や日本の不動産投資信託(J-REIT)を始めとする民間セクターの資産の買い入れを将来的に増やす余地を残しました。さらに、その可能性が低いながらも、イエレンFRB議長は3月16日の記者会見において、マイナス金利政策を「積極的に検討しているわけではない」ことを強調しました。

このように、中国、コモディティ、中央銀行の政策は、経済やリスク資産にとって大きなダウンサイド・リスクになる可能性があり、今年1年を通してボラティリティの上昇要因になるとみられますが、PIMCOの短期見通しにおける基本シナリオは引き続き慎重ながらも楽観的です。中国は人民元の無秩序で大胆な切り下げを避けながら資本流出の問題に対処する見込みで、原油価格は下落するよりも上昇する可能性が高く、中央銀行は資産価格を下支えし「BBB」の景気拡大を維持するために適切な政策手段をとる能力と意思を有しているようです。


米国経済 : 2% の目標達成に注力         
総需要が不足するとともに不透明感が高まる環境において、米国経済は「低調な国々の中で最も良好」な状態を保っています。米国経済は個人消費と住宅投資が堅調な一方で輸出の伸びと設備投資が低調という二面性を維持するでしょう。その結果、2016年の経済成長率は、労働市場ではスラック(需給の緩み)の解消が進み、賃金が緩やかに上昇するなかで、1.75~2.25%というトレンドをわずかに上回る平凡な水準になる見通しです。このため、個人所得の上昇要因が(完全雇用の実現に伴い鈍化傾向の)雇用の伸びから賃金の上昇へと「綱渡り的に」移行し、個人消費の緩やかな増加を下支えすると予想しています。原油価格が年末までに1バレル=50ドルへと緩やかに上昇することを想定すると、総合インフレ率(消費者物価指数(CPI))は、年内はほぼ1.0~1.5%のレンジで推移した後に、年末までに2%へと上昇し、通年で2%をやや上回る見通しのコアインフレ率に近づいていく可能性が高いでしょう。PCEインフレ率(個人消費支出のインフレ率で、CPIよりも0.5%程度低い水準で推移する見通し)が5年連続でFRBの2%という目標を下回り、米国以外の情勢が引き続き見通しの大きなリスク要因となっていることを踏まえ、前述のようにFRBはより慎重に行動することが予想されるため、年内の利上げは、市場の現在の想定をやや上回る1~2回にとどめる、と予想しています。        

ユーロ圏と英国 経済成長は合格ライン、政治情勢に不透明感             
PIMCOでは、2016年の基本シナリオとして、ユーロ圏のGDP成長率はコンセンサスを下回るトレンド並みの1~1.5%のレンジにとどまる一方で、総合HICP(EU基準の消費者物価指数)が0~0.5%のレンジに、コアインフレ率が1%未満にとどまるなど、インフレはECBの「2%未満だが2%に近い水準」という目標を引き続き大きく下回ると予想しています。また、域外の需要の低迷や年初にみられた金融環境の逼迫という経済成長に対するマイナス要因は、時間差を伴って現れるユーロ安の輸出の押し上げ効果、原油価格の下落、雇用の増加による消費の下支え、わずかながらも2009年以降で初めて拡張に転じる財政政策などのプラス要因によって、ほぼ相殺されると予想しています。また、ECBが3月の政策理事会において、公共セクター債券の買い入れ増額、史上初となる金融セクター以外の社債の買い入れ決定、限界貸出金利と中銀預金金利の引き下げ、一定の条件下でマイナス金利となる銀行向けの大規模な長期資金供給を中心とする緩和パッケージを発表したことも、いくぶんプラスに作用するでしょう。もっとも、インフレ率がECBの目標(および少なくとも向こう数年間のPIMCOの予想)を下回り続ける公算が大きいため、ECBは年内に追加緩和を計画しているように見受けられます。        

英国の見通しは、6月23日の「Brexit」に関する国民投票を控えてやや複雑となっていますが、PIMCOでは、EU残留派が多数を占める確率を60%とみています。「残留」という基本シナリオでは、純輸出の減少と財政政策の追加的引き締めがGDPを1%程度押し下げる結果、2016年の経済成長率は1.5~2.0%のレンジとなり、コンセンサスを下回ると予想しています。イングランド銀行のカーニー総裁は、年内は毎月のように財務大臣向けに書簡を提出し(インフレ率が2%の目標から1%以上かい離した場合に、書簡を提出することが法律で義務付けられています)、インフレ率が1%に届かない理由の説明を求められる可能性が高いでしょう。このような状況において、政策金利は据え置かれる見通しです。PIMCOでは、40%の確率で「Brexit」派が多数を占めると想定していることもあり、経済成長見通しには下振れリスクの方が大きいとみています。英国がEUから離脱する事態となれば、企業の投資やマインドが大きく損なわれ、GDP成長率が国民投票後1年にわたって1~1.5%程度押し下げられることも考えられます。

日本 経済成長率とインフレ率の低迷         
PIMCOでは、日本についても、経済成長率とインフレ率がコンセンサスを下回り、日銀の目標を下回ると予想しています。2016年のGDP成長率は0.25~0.75%のレンジとなり(人口が減少傾向にある国としてはそれほど悪い水準ではありません)、2015年とほぼ変わらない見通しです。中国の経済成長が減速し、これまでの円安メリットが剥落するなかで、対外収支は引き続き経済活動を小幅に下押しするとみられます。一方で、今夏の参議院選挙を前に財政政策が緩和されれば、マイナスの影響はいくぶん相殺されるでしょう。インフレ率は2%の目標を当面は下回る見通しであり、年内は総合インフレ率が0.25~0.75%のレンジに、(米国と同様の定義の)コアインフレ率が1%未満にとどまると予想しています。このような状況に鑑み、日銀は年内に追加緩和を実行するとみています。1月のマイナス金利導入に対して金融市場と国民が否定的な反応を示したため、日銀は金利政策には慎重になり(ただし小幅な追加利下げの可能性はありますが)、株式のETFやJ-REITを中心とする資産買い入れ政策の拡大や、銀行向けの資金供給プログラムの条件のさらなる改善に注力すると予想しています。        

中国 困難な移行期間、資本流出に注目         
中国経済の牽引役が「旧型(製造業、国有企業、輸出主導型)」から「新型(サービス業、民間企業、消費主導型)」に移行するプロセスは、依然としてスムーズではありません。PIMCOでは、3つの理由によって、2016年の「公式な」GDP成長率が6.5~7%という政府目標に届かないと予想しています。第1に、大規模な流動性供給や利下げは資本流出を加速させ、人民元の下落圧力を強めるため、金融政策の緩和余地は小さいようです。第2に、公共セクター(主に地方政府と国有企業)の債務残高が増加したことを踏まえ、中国政府は公表した財政赤字目標(対GDP比3%)に反するような財政政策の拡大には積極的ではないようです。第3に、株価の大幅な変動や不動産の過剰供給が不透明性を高め、消費者心理の重石となっています。このような状況も、資本流出やそれに関連する人民元の下落圧力につながっています。前述のように、PIMCOでは基本シナリオとして、追加的な為替介入や資本規制の効率化によって、人民元は無秩序で大胆な切り下げはなく、緩やかに下落するとみています。        

ブラジル、ロシア、インド、メキシコ 反転の契機が必要         
PIMCOでは、BRIM諸国(ブラジル、ロシア、インド、メキシコ)の経済は全般に低調な状態が続くとみています。GDP成長率は、ほぼコンセンサス通り、2015年の0.4%から2016年は0.75~1.25%のレンジへと小幅に上昇すると予想しています。ただし、小幅に改善する主因はブラジル、ロシア経済の縮小ペースが昨年よりも鈍化することであり、両国は景気後退からは脱却できないでしょう。国別にみると、インドの成長率が昨年からほぼ横ばいの7.3%となる一方、メキシコの成長率は昨年から小幅に上昇してコンセンサスよりやや高い2.8%に達すると予想しています。ブラジルでは、政治情勢が依然として流動的であり、多くの市場参加者は大統領の弾劾に伴う政権交代が改革の契機になり得ると考えています。ロシアでは、単位労働コストの大幅な調整が経済のバランスを長期的に改善する機会になるとみており、原油価格のさらなる上昇は景気後退からの脱却に寄与するでしょう。ただし、V字型の回復が実現する公算は小さいようです。メキシコに関しては、投資家の信頼回復と通貨安の歯止めを目標に2月に発表された財政、金融の同時引き締め策を前向きに評価しています。

投資に関する結論
PIMCOでは、米国経済や世界経済が短期的には景気後退に陥ることは想定されず、金融市場は景気後退入りのリスクを過大評価しているとみていますが、大きな不確実性や問題が数多く存在するため、ポートフォリオは保守的に構築することが要求されます。PIMCOのニュー・ノーマル/ニュー・ニュートラルの枠組みに照らすと、市場は概ねフェアバリューに達したようですが、最近のボラティリティの上昇に伴い、魅力的な投資機会も生じています。中央銀行は資産価格を下支えする見通しですが、政策介入の効果が低下しているのではないかという疑問にも注意が必要です。        

少なくとも、中央銀行は純粋にボラティリティを抑制する側から、ボラティリティを生み出す側に変化したと言えるでしょう。ここ最近、市場のセンチメント改善に一定の貢献はしているものの、これは日本や欧州など身内からの誤爆に対処しているにすぎません。

市場流動性の低下、市場ポジションの偏り、その結果として市場がファンダメンタルズの比較的微細な変化に過剰反応しやすくなった状況を踏まえ、今後もボラティリティは上昇すると予想しています。各国で政治リスクが高まっていることも、従来の相関や関係性が当てはまらなくなるという見通しを裏付けています。

引き続き世界的に金融政策の二極化が進み、FRBが緩やかなペースで引き締めを継続する一方で、ECBや日銀を始めとする多くの中央銀行が緩和政策を維持すると予想しています。ただし、FRBの引き締め政策による世界中のマクロ経済や金融環境への影響が、FRBの経済見通しの不透明感と部分的に結びついているため、米ドル高を通じて米国経済に及ぶ影響を考えると、二極化が大きく進むことはないでしょう。

先日のG20による声明、人民元の急激な変動を避けたい政府の意向を示唆する中国人民銀行の発言や行動、そしてマイナス金利による積極的な通貨切り下げ競争から信用緩和や量的緩和へ舵を切り替えつつある日銀およびECBのスタンスを踏まえると、通貨戦争の色合いはやや弱まったとみています。

クレジット市場のバリュエーションは魅力的であり、最近の価格の極端な変動に伴い、投資適格級や金融シニアのクレジットを中心に、米国の信用力の高いポジションを強く選好しています。引き続き、全般に良好な米国住宅市場の見通しに基づき、非政府機関系モーゲージ債を選好するとともに、堅固なファンダメンタルズを背景に住宅セクターは短期的なマクロ経済リスクから遮断されているとみています。全般に、クレジット市場では、市場の激変を乗り切ることが可能と思われる「セーフ」スプレッドのエクスポージャーに軸足を置き、投資に際しては粘り強く長期的なスタンスを保ち、市場が一段と悪化する可能性を分析した上でポジションを積み増す余地を残したいと考えています。

今後数カ月間、金利は総じてレンジ圏内にとどまると予想しており、米国を始めとする各国のデュレーションについては概ね中立的であり、また、イールドカーブのポジションについても概ね中立的ですが、短期ゾーンには向こう数年間の利上げ見通しが十分に織り込まれていないとみており、今後の展開は非常に不透明です。このほか、米国物価連動国債(TIPS)については、米国経済の緩やかなインフレ率上昇と割安なバリュエーションを踏まえ、引き続き前向きに評価しています。

ユーロ圏では、投資適格社債と周縁国国債のバリュエーションは概ねフェアであるものの、割安感はないとみています。また、ユーロ圏の銀行シニア債は割高な印象です。劣後債には厳選された投資機会も存在していますが、現在のバリュエーションでは、米国、スイス、(Brexitリスクが伴うものの)英国など、規制や法律の枠組みが想定しやすい国に的を絞る方針です。

エマージング市場では、マクロ経済環境が困難であることに加えて中国の影響が波及するなど、非常に大きな課題が存在していますが、特にコモディティ市場の環境が改善した場合など、適切な投資機会を見出すことは可能であると考えています。PIMCOのアセットアロケーション・ポートフォリオでは、ここ最近の価格上昇を踏まえてコモディティを全般に中立的と評価していますが、個別には原油を選好しています。また、現在のバリュエーションでは、クレジット市場の方が株式市場よりもリスク・リターン特性が依然として良好であるとみています。先進国の株式市場では、米国が景気サイクルにおいて先行していると判断し、日本や欧州を選好しています。一方、コモディティ価格や米ドル相場がPIMCOの基本シナリオ通りに推移した場合には、エマージング市場株式は安定感を増すと予想しています。

最近2年間の米ドル高や、前述した世界的な金融政策の二極化の限界を踏まえて、ポートフォリオの為替リスクは抑制する方針です。人民元とアジア地域の通貨が緩やかに下落する一方で、コモディティ通貨には魅力的な投資機会があるとみています。

著者

Joachim Fels

グローバル 経済アドバイザー

Andrew Balls

グローバル債券担当最高投資責任者(CIO)

関連コンテンツ

ご留意事項

ピムコジャパンリミテッド
105-0001
東京都港区虎ノ門4-1-28
虎ノ門タワーズオフィス18階
金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第382号
加入協会/ 一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人投資信託協会

ピムコジャパンリミテッドが提供する投資信託商品やサービスは、日本の居住者であり、かつ法律による制約のない方に対して提供するものであり、かかる商品やサービスが許可されていない国・地域の方に提供するものではありません。

過去の実績は将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。本資料には、本資料作成時点での著者の見解が含まれていますが、これは必ずしもPIMCOグループの見解ではありません。著者の見解は、予告なしに変更される場合があります。本資料は情報提供を目的として配布されるものであり、投資助言や特定の証券、戦略、もしくは投資商品の推奨を目的としたものではありません。本資料に記載されている情報は、信頼に足ると判断した情報源から得たものですが、その信頼性について保証するものではありません。

運用を行う資産の評価額は、組入有価証券等の価格、デリバティブ取引等の価値、金融市場の相場や金利等の変動、及び組入有価証券の発行体の財務状況や信用力等の影響を受けて変動します。また、外貨建資産に投資する場合は為替変動による影響も受けます。したがって投資元本や一定の運用成果が保証されているものではなく、損失をこうむることがあります。運用によって生じた損益は、全て投資家の皆様に帰属します。弊社が行う金融商品取引業に関してお客様にご負担頂く手数料等には、弊社に対する報酬及び有価証券等の売買手数料や保管費用等の諸費用がありますが、それらの報酬及び諸費用の種類ごと及び合計の金額・上限額・計算方法は、投資戦略や運用の状況、期間、残高等により異なるため表示することができません。


全ての投資 にはリスクが伴い、価値は下落する場合があります。債券市場 への投資は市場、金利、発行者、信用、インフレ、流動性などに関するリスクを伴うことがあります。ほぼ全ての債券及び債券戦略の価値は金利変動の影響を受けます。デュレーションの長い債券及び債券戦略は、より短い債券及び債券戦略と比べて金利感応度と価格変動性が高い傾向にあります。一般に債券価格は金利が上昇すると下落し、現在のような低金利環境ではリスクが高まります。債券取引におけるカウンターパーティーの取引能力の低下が市場流動性の低下や価格変動制の上昇をもたらす可能性があります。債券への投資では換金時に当初元本を上回ることも下回ることもあります。モーゲージ担保証券や資産担保証券は金利水準の変化に対する感応度が高い場合があり、期限前償還リスクを伴い、また、一般的には政府または民間保証機関による何らかの保証が付されていますが、民間保証機関が債務を履行する保証はありません。政府が発行する 物価連動債(ILB)は、元本価値がインフレ率に連動して定期的に調整される債券です。実質金利が上がった場合、物価連動債(ILB)の価値は減少します。インフレ連動国債(TIPS) は、米国政府が発行する物価連動債(ILB)です。外貨建てあるいは外国籍の証券への投資には投資対象国の通貨価値の変動や経済及び政治情勢に起因するリスクを伴うことがあり、新興成長市場への投資ではかかるリスクが増大することがあります。コモディティ は市場、政治、規制、自然などの条件により高まるリスクを伴い、全ての投資家に適しているとは限りません。株式の価値は一般的な市場、経済、産業の実体と見込み両方の状況によって減少する可能性があります。為替レート は短期間に大きく変動する場合があり、ポートフォリオのリターンを減少させる可能性があります。本資料で言及した投資戦略が、あらゆる市場環境においても有効である、またはあらゆる投資家に適するという保証はありません。投資家は、自らの長期的な投資能力、特に市場が悪化した局面における投資能力を評価する必要があります。

運用を行う資産の評価額は、組入有価証券等の価格、デリバティブ取引等の価値、金融市場の相場や金利等の変動、及び組入有価証券の発行体の財務状況や信用力等の影響を受けて変動します。また、外貨建資産に投資する場合は為替変動による影響も受けます。したがって投資元本や一定の運用成果が保証されているものではなく、損失をこうむることがあります。運用によって生じた損益は、全て投資家の皆様に帰属します。弊社が行う金融商品取引業に関してお客様にご負担頂く手数料等には、弊社に対する報酬及び有価証券等の売買手数料や保管費用等の諸費用がありますが、それらの報酬及び諸費用の種類ごと及び合計の金額・上限額・計算方法は、投資戦略や運用の状況、期間、残高等により異なるため表示することができません。

PIMCOは、アリアンツ・アセット・マネジメント・オブ・アメリカ・エル・ピーの米国およびその他の国における商標です。THE NEW NEUTRALは、パシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー・エルエルシーの米国およびその他の国における商標です。

本資料の一部、もしくは全部を書面による許可なくして転載、引用することを禁じます。本資料の著作権はPIMCOに帰属します。 2016年

(注)PIMCOはパシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー・エルエルシーを意味し、その関係会社を含むグループ総称として用いられることがあります。