PIMCOブログ

景気サイクル後期において、なぜ債券に投資するのか

債券価格の下落基調が続き金利が上昇基調のなか、債券に投資する意義はあるのでしょうか?

昨年9月以降、10年物米国債利回りは2%から3%まで上昇し、債券価格の下落基調が継続しています。今後も価格が下落し続けるのではないかとの懸念もありますが、PIMCOでは①金利上昇は一巡しつつあり、今後債券価格は下げ止まる可能性が高いと考えているほか、②景気が悪くなる時には、金利低下・債券価格上昇が見込まれ、株式投資によるマイナスのリターンの一部を相殺すると期待されることから、足元債券投資の意義が高まっていると考えています。

PIMCOでは、今後12ヶ月の10年物米国債利回りは現在の3%を中心とする、2.5%~3.5%のレンジ推移となると予想しており、金利の上昇基調が今後も継続するとは考えていません。米国では今年から来年にかけて引き続き利上げが継続すると予想されますが、長期金利はレンジ推移と予想されるのはなぜでしょうか?

下記のグラフのとおり、過去の利上げサイクルの終盤において、米国長期金利のピークは政策金利ピークと大体同水準になる傾向が見られます。今回の利上げサイクルにおいては、後述するとおり人口動態や債務水準を背景に利上げは3%程度までと見られており、金融危機以前のように5-6%まで引き上げられる可能性は低いと考えられます。仮に今回の利上げのピークが3%程度とすると、10年金利だけが4%を超えて上昇する可能性は低く、既に3%まで上昇した金利上昇の調整は一巡しつつあると考えられます。

では、なぜ今回の利上げサイクルでの政策金利のピークは、3%程度に留まるとみられているのでしょうか?PIMCOでは、高齢化などの人口動態の変化や債務水準が高止まりしていることを背景に、金融危機以降、金利は危機前と比べ大幅に低い水準に留まると言う予想を「ニュー・ニュートラル」と名づけ、2014年より提唱しています(詳細は、リチャード・クラリダ「ニュー・ニュートラルの世界を乗り切る」をご参照ください。クラリダは2006年以来PIMCOのグローバル戦略アドバイザーを務め、この度トランプ大統領よりFRB(米連邦準備制度理事会)副議長に指名されました)。この経済の構造的な要因を背景に、政策金利は危機前と比べて低位に留まるとみられることから、長期金利の上昇余地も限られると考えられます。

上記の見方に対するリスクも存在します。景気サイクルの後期に導入される異例の財政刺激策の結果、インフレ率あるいはインフレ期待が上離れする可能性が存在するほか、政治サイクルに基づいて財政規律が弛緩すれば財政プレミアムが上昇する恐れもあります。これらのリスクが存在するなか、状況に併せて柔軟な対応を行うアクティブ運用がより重要になっている環境だと言えます。

一方、米国の景気拡大はこの6月に10年目に入り、金融環境が依然として良好で財政支援も見込まれることから、向こう6ヶ月~12ヶ月という短期経済予測の期間において、失速する可能性は低いと見られます。良好な経済環境が継続すると予想される環境において債券に投資する意味はあるのでしょうか?

市場参加者の多くが向こう一年間の世界経済について楽観的な見通しをしており、既に多くのリスク資産に良好な経済見通しが価格に織り込まれています。バリュエーションが高いことから、リスクシナリオに対するバッファが少ないことが指摘できます。今後、世界経済の下振れリスクが発現し、良好な経済シナリオを織り込んで既に上昇したリスク資産が調整する際には、高格付けの債券を併せ持つことでポートフォリオのパフォーマンスがより安定化することが期待できます。

PIMCOは向こう3~5年の間に次の景気後退局面を迎えると予想しますが、米国では失業率がすでに4%を下回るタイミングで財政刺激策が導入される結果、FRBが金融引き締めのペースを速めることで、景気後退のタイミングが早まるリスクも存在します。(その他の中長期的な見通しやリスクについては、最新の長期経済見通し「急変に備えて」をご覧ください)

下記のグラフでは、今後一年間で、①好景気が継続し、10年物米国債利回りが3%から4%に上昇するシナリオと、②景気がどこかで悪化し、10年物米国債利回りが3%から1%に低下するシナリオにおける米国長期国債と米国株式のリターンシミュレーションを示しています。

長期金利が(PIMCOの想定を超えて)4%まで上昇したとしても米国長期国債のリターンは-4%程度に留まります。それでもマイナスのリターンになるリスクがある資産を持つ必要があるのか疑問に思う投資家もいるかもしれませんが、問題はどこで景気が悪くなるかをぴったり当てることは難しい点にあります。

仮に、景気がどこかで悪くなった場合、良好な景気を織り込んでいた株式市場は大きく調整する可能性がありますが、景気見通しの悪化を受けて金利が大幅に低下すれば、債券投資からのプラスのリターンは株式投資からのマイナスのリターンの一部を相殺することが期待できます。

景気サイクルの後半において、景気がどこかで悪化した際の保険として保有する債券が、足元で金利上昇を受け、価格の下落が継続しているということは、一、二年前と比べて割安に景気後退に備えることが出来ることを意味します。金利上昇も一巡しつつあると見られるなか、景気拡大が10年目に入り、転換点が気になるこのタイミングで、債券投資の意義は高まっていると考えられます。

著者

Naoya Sugimoto

執行役員、戦略企画部の統括責任者

Keita Nakayama

アカウント・マネージャー

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