今年、欧州の金融資本性証券(金融機関によって発行された返済順位の劣後する調達手段)は苦戦を強いられています。イタリアおよび英国のEU離脱(ブレグジット)交渉に対する不透明感と、過剰供給、特に米ドル建て市場での発行急増により、その他Tier1債(AT1債)のスプレッドは1月から150ベーシスポイント拡大しています。短期的には今後さらにボラティリティが上昇する懸念も残りますが、最近の低調ぶりは行き過ぎで、PIMCOは今が魅力的なエントリーポイントだと考えています。 引き続き堅調なファンダメンタルズ この数年、米国の非金融セクターは再び借り入れを増やしています。たとえば、EBITDA純債務倍率(EBITAは金利・税金・償却前利益)が4倍を超えるレバレッジ比率の投資適格発行体の割合は、2010年の全体の約7%から2017年には20%近くまで上昇しています(出所:モルガン・スタンレー、シティ)。これは、金融セクターの規制強化によるレバレッジ削減傾向とは対照的で、銀行の資本水準は現在、金融危機前に比べ2倍から8倍高くなっています。 銀行のファンダメンタルズ向上は、少なくとも信用を提供する側からみて、スペインやイタリア(スペインほどではない)では、銀行のバランスシート上の不良債権償却の進捗状況をみても明らかです。米国連邦準備銀行やイングランド銀行による直近のストレステストの結果も非常に良好で、厳しいマクロ経済上のショックにも十分耐えられる体力の回復を象徴しています。 ボラティリティはチャンス こうした背景があるにもかかわらず、欧州の金融資本性証券は、ハイイールド債など、リスクが比較的高い他のクレジットセクターのパフォーマンスを下回っています。ヤンキー債(欧州を拠点とする銀行による米ドル建て債券)の場合、大量供給と欧州の政治リスク復活により、資本構成上の幅広い範囲でアンダーパフォーマンスとなっています。その結果、金融資本性証券の利回りは今や7%を超え、平均デュレーションは3.7年、平均格付けはBB+となっています。これは、リスクの比較的高い他のクレジット市場に比べて、魅力的なエントリ―ポイントとなる組み合わせだと考えます(グラフ参照)。 さらに、金融資本性証券は、一般に金利上昇に対する感度は低い傾向があります。これは、コールオプション付きの構造上の特性により、債券がコールされなければ金利更改時のスワップ金利に基づいてクーポンがリセットされることと、金利上昇時には銀行収益が向上する傾向があるためです。 エクスポージャーは拡げず厳選を 資本性証券には投資価値があるとみていますが、投資家は銘柄を厳選することが重要で、AT1債市場全般に漫然とエクスポージャーを拡げることは慎むべきだと考えます。具体的には以下の通りです。 政治リスクのあるイタリアには注意が必要で、欧州周辺国へのエクスポージャーでは、堅強な経済環境にあるスペインの銀行を選好しています。 ブレグジットの影響で現在は高いスプレッドで取引されているものの、世界的に見ても資本が最も厚い英国の銀行を前向きにみています。 米国の銀行も非金融セクターに比べ魅力的で、流動性が高い資本構成上上位の債券を選好しています。 最近のボラティリティ上昇のメリットのひとつに債券の発行市場の変化があげられ、同等の銘柄のスプレッドが流通市場よりも50ベーシスポイント高くなる興味深い現象が起こっています。これにより、トップネームの発行体の中から、選りすぐった銘柄の選別できる機会が生まれています。 このような環境では、投資家は目標リターン達成のために小口のディールや低格付けの銀行を追い求める必要はありません。そうしなくても、7%を超える利回りでデュレ―ションは4年以下、平均格付けが投資適格(利回り・デュレ―ション・信用リスクの魅力ある組み合わせ)となる、分散された資本性証券のポートフォリオを組成することが可能です。
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