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2019年 米国政策見通し:貿易リスクは継続するも、悪化しない可能性

2019年のPIMCOの見通しでは、2018年と同様、米国の政治動向とトランプ政権の政策が引き続き市場を動かし、重しになりうるとみています。

2019年のPIMCOの見通しでは、2018年と同様、米国の政治動向とトランプ政権の政策が引き続き市場を動かし、重しになりうるとみています。大統領をめぐる捜査とそれに伴って発生している危機が引き続き不確実性の要因に貿易摩擦は続いていますが、先行きには明るさがみられ、米中関係は改善しつつあるようにみえます。

通商政策

2018年初頭、PIMCOは市場の主要なリスクに通商政策を挙げ、その理由として、以下の3点を指摘しました。1)トランプ政権が議会抜きに通商政策に影響を与えられること、2)貿易問題はトランプ大統領の支持層に受けがいいこと、3)最も重要なのは、貿易問題がトランプ大統領が長年、信念として掲げてきた政策課題であること。

1年経った現在も、通商政策が市場のリスクになるとの見方は変わりません。何より、民主党が多数派を占める下院で、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA、別名NAFTA2.0)が簡単に批准されるとは思えません。そもそも議会民主党は、特に労働問題や環境問題との関連で、自由貿易協定には懐疑的です。また、民主党のナンシー・ペロシ下院議長にも、USMCAを採決に持ち込み、トランプ大統領の勝利に手を貸すインセンティブは乏しいとみられます。トランプ大統領がNAFTAからの離脱という脅しを続けることで、採決を遅らせたとしても意外ではありませんが、これはリスクの高い戦略であり、市場の重しになるとみています。

USMCAをめぐるリスクに加え、自動車および自動車部品に追加関税を課す可能性が残っており、実施されるとすれば今春になる見通しです。

明るさがみられるのは、米中関係が改善しつつあるようにみえる点です。交渉継続が約束されていることから、3月1日に予定される中国製品2,000億ドルに対する関税の25%への引き上げは、先送りされるとみられます。中国の産業政策(民間セクターに対する国の補助や、技術移転の強要など)に対するトランプ政権の懸念は根強いものの、トランプ大統領は金融市場の動向や貿易摩擦をめぐる経済不安に敏感なことから、政治的勝利の名のもとに取引を狭めたい意向があるのではないかと考えられます。

財政刺激策

2017年の税制改革法と2018年の歳出法による財政刺激策には、2019年の実質成長率を0.4パーセントポイント押し上げる効果があると予想しています。ただ、こうした刺激効果は時が経つにつれ薄れていくとみられます。また重要な点として、現時点で追加的な財政刺激策は見込んでいません。インフラ整備法案をめぐって駆け引きが行われる可能性はまだ残るものの、どう財源を手当てするかは避けられない問題であり、まして2019年前半はそうした駆け引きを行える政治的余地は小さいとみられます。

つくられた危機:政府機関の閉鎖と債務上限

政府機関閉鎖の解決の目途が立たないなか、投資家は債務上限問題についても同様の瀬戸際政策がとられるのではないかと訝っています。債務上限は法律により3月1日までに引き上げる必要があります。(ただ、「特例措置」により、期限は夏まで延長することが可能です。)トランプ大統領がこれまでそうしてきたように、債務上限問題を盾に政策の譲歩を引き出そうとすることは可能ですが、下院で民主党が多数派を占めるようになった現在、その可能性は大幅に減ったと考えています。下院では最近、いわゆるゲッパート・ルールの修正案を可決しました。これにより、下院で予算案が成立すれば、自動的に債務上限が引き上げられることになり、別途下院で債務上限を採決する必要性が排除されました。上院では引き続き債務上限引き上げの採決が別途必要で、トランプ大統領がこの問題を争点化する可能性はありますが、債務の上限問題が危機に発展する確率は大幅に低下したとみています。これは市場にとって好材料です。

捜査と弾劾

下院民主党が召喚権限を持ち、委員会レベルで議題をコントロールできる状況となった今、トランプ政権に対する監視や捜査はあらゆるレベルで強化され、政権にとって政策の遂行はもちろん、新たなスタッフの採用も一段と難しくなるとみています。

同時に、民主党幹部は現時点で民主党単独でトランプ大統領を弾劾する意向はなく、弾劾を進めるとすれば超党派合意のもとでのみであるとしており、この点についてはその通りだと考えています。また、それがいつであれ、2016年の大統領選へのロシアの介入をめぐるロバート・ムラ―特別検察官の捜査の結論が出るまでは、大統領の弾劾が本格的に検討されることはないと考えています。とはいえ、大統領をめぐる捜査と弾劾の行方は、2019年の米国の政治に影を落とすことになるでしょう。

PIMCOの経済見通しに関する詳細は、短期経済予測「世界経済の同時減速」をご参照ください。

「世界経済の同時減速」を読む
著者

Libby Cantrill

エグゼクティブ・オフィス

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