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モーゲージ担保証券(MBS) の単一証券化プロジェクト:損の上塗りはやめるべき

PIMCOでは投資家として、米連邦住宅金融局(FHFA)の「単一証券化プロジェクト」は埋没費用の誤信そのものであると考えています。

世界大恐慌時代に子供だった親を持つ私たちの多くは、必ずしも親の教えに耳を傾けなかったかもしれませんが、さまざまな状況において「損の上塗りをしてはいけません」と両親からたしなめられたことがあるかもしれません。多大な資金、時間、労力を特定のプロジェクトに投資した人間や組織が、経済合理性が失われた後になっても投資を継続する傾向のことを、経済学者は「埋没費用の誤信」と呼んでいます。

PIMCOでは投資家として、米連邦住宅金融局(FHFA)の「単一証券化プロジェクト」は、埋没費用の誤信そのものであると考えています。FHFAは、政府系や政府関連機関(GSE)と呼ばれるファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)やフレディマック(連邦住宅金融抵当金庫)を管轄する規制当局および財産管理者として、GSEが発行するモーゲージ担保証券(MBS)の規格を統一することによって、政府系モーゲージ市場の流動性を改善しようと試みています。FHFAは現在、2019年6月に単一証券を導入する計画を掲げています。

しかしながら、政府系モーゲージ市場は、債券市場の中でもすでに流動性が非常に高い市場の1つに位置付けられています。政府系モーゲージ市場に古くから参加し、そして最大規模を誇る参加者の1社として、PIMCOでは、この市場が現在ほど厚み、流動性、安定性を備えたことは恐らくかつてなかったと考えています。FHFAが善意で政策を立案していることに疑念の余地はありませんが、実際には全く問題が存在しない分野で、なぜ問題を対処しようと多大なリソースを投資し続けるのか、疑問が残ります。

また、単一証券は「ネガティブ・コンベクシティ」と呼ばれる投資の現象とも相似形であると考えています。モーゲージ債市場において典型的な現象として、ネガティブ・コンベクシティを有する債券の場合、金利低下時の価格上昇幅よりも金利上昇時の価格下落幅の方が大きい傾向があります。言い換えると、利益発生の可能性よりも損失発生の可能性の方が高いということです。単一証券の場合でも同様に、米国の中低所得層に対する住宅ローンの供給減少や、不十分な政策実行に伴う市場流動性の低下という「潜在的な損失」の方が、実際は厚みや、幅広、流動性をすでに備えた市場の仮の改善策から生み出される「潜在的な利益」を大きく上回ると、PIMCOでは考えています。

強い既視感(デジャヴ)

現在の単一証券化プロジェクトに対してPIMCOが懸念するのは、前例があるからです。1990年代にフレディマックは、ファニーメイに見劣りする市場シェアの改善と流動性の向上を念頭に、フレディ「ゴールド」証券を導入しました。導入の目的は、現在の単一証券プロジェクト化の目的と同じです。しかしながら、同証券の導入により提げた目標が達成されるどころか、単に市場の細分化につながり、流動性が数十年間にわたって低下する結果を招きました。(詳細は、2017年4月付Viewpoint「Higer Mortgage Rates Are Likley With Proposal of 'Single Security'」(英語版)をご参照ください)

PIMCOでは、単一証券化プロジェクトが実施された場合、ファニーメイとフレディーマック双方のモーゲージ債の流動性低下を招き、市場と投資家は不利益を被る可能性があると考えています。また、モーゲージ債の流通市場全体のリスクが高まる結果、住宅ローンの借り手と納税者へ深刻な影響が及ぶ可能性があるでしょう。

PIMCOは、GSEはその存在意義 ― モーゲージ債の流通市場の安定化への貢献 ― を満たしてきたと見ています。単一証券化プロジェクトが実施された場合、理論的にも前例に鑑みても、安定性が脅かされることになります。FHFAの財産管理者としての目標の1つは、GSEが使命を果たす能力を向上させることです。単一証券化プロジェクトは、そのプロセスにおいて「損の上塗り」を続け、その結果、全く正反対の結果をもたらす公算の方がずっと大きいとPIMCOでは考えています。




リビー・キャントリルはPIMCOの公共政策問題担当の責任者で、PIMCOブログ の定期的寄稿者。マイク・クジルは、負債対応投資の運用チームのポートフォリオ・マネージャー、ダニエル・H・ハイマンは政府系モーゲージ債ポートフォリオ・マネジメントチームの共同統括責任者、ケント・スミスは、モーゲージ・クレジット・チームのポートフォリオ・マネージャー

著者

Libby Cantrill

エグゼクティブ・オフィス

Michael Cudzil

ポートフォリオ・マネージャー

Daniel H. Hyman

エージェンシー・モーゲージ債ポートフォリオ・マネジメントチームの共同統括責任者

Kent Smith

モーゲージ・クレジット・チームのポートフォリオ・マネージャー

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