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PIMCO ESGサミット ~持続可能な未来へのファイナンス~ 五つのポイント

COP26への期待、発行体とのエンゲージメント(積極的な対話)の重要性、サステナビリティ・リンク・ボンドの成長など、多くのテーマを取り上げています。

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PIMCO ESGサミットは、投資の世界で急速に変化しつつある環境・社会・ガバナンス(ESG)課題への対応策のご参考として先日オンラインで開催されました。今年の焦点は脱炭素への移行です。PIMCOの投資プロフェッショナルのほか、以下の方々をお迎えして議論を行いました。国連の気候変動ファイナンス特使で、PIMCOグローバル・アドバイザリー・ボードの一員でもあり、イングランド銀行とカナダ銀行で総裁を歴任したマーク・カーニー氏。アンハイザー・ブッシュ・インベブの最高経営責任者(CEO)のカルロス・ブリト氏。BMWの財務グループ上級副社長のブリギット・ベーム氏。ESGサミットでの主なポイントをご紹介いたします。

1.脱炭素社会への移行のファイナンスにおいて債券が重要な役割を担う

持続可能(サステナブル)な未来を構築することは、資本集約的な取り組みです。今後数年から数十年にわたって、国、地方政府、企業レベルで数百兆円の追加的な持続可能投資が行われると見込まれます。債券市場独特の特徴として、企業は通常、債券の発行を繰り返すという点が挙げられます。すなわち、企業は定期的に市場に戻り、自社の債券を発行する際、その背景となるストーリーを投資家に売り込む必要があります。企業は信用格付けの維持に気を配らなければなりませんが、持続可能性(サステナビリティ)へのコミットメントとそれを裏付ける事実や、改善努力にも同じように注力する必要が高まっています。こうした市場へのエンゲージメント(積極的な対話)のメカニズムから、債券投資家は特別な立場にあり、債券発行体と協力して持続可能な債券投資の未来を形作り、ポジティブな変化に影響を与えるとともに、投資機会を創出することが可能です。

2.「エンゲージメント」の重要性

サステナブル投資の初期段階では、一定の基準を満たしていない企業の排除に主眼が置かれていました。最近では、幅広い価値創造の源泉に重点が移り、投資の評価と各企業とのエンゲージメントが重視されるようになっています。PIMCOでは、企業の経営陣とのエンゲージメントが最も大きな影響を与えることができると考えています。投資家が債券発行体や特定の投資について理解を深めつつ、変化を促すことができるからです。

3.データに課題はあるが、グローバル基準の制定により効率的な資本配分を促進

ここ数年、ESG関連のデータは大幅に増加していますが、発行体のディスクロージャーの質と一貫性を鑑みると、特に気候変動関連リスクに関連して課題があることは否めません。とはいえ、改善が進んでいます。数年前には金融安定理事会(FSB)が、気候関連の財務情報の改善と拡充を図る目的で、「気候関連財務情報の開示に関するタスクフォース(TCFD)」を創設しました。また、国際財務報告基準(IFRS)財団は、気候変動の開示基準を導入する目的で、TCFDに似た、サステナビリティ基準審議会を新たに創設しています。各国で類似の会計慣行の導入が進んできたことから、サステナビリティ基準が収斂し始め、こうした基準に従って情報を開示する発行体が増えていくでしょう。それが、資本配分に関わる投資家の、より詳細な情報に基づいた意思決定を後押しすることになります。現時点で各企業のESGの取り組みとコミットメントについて賢明な判断を下すには、利用可能なデータの詳細な分析と発行体とのエンゲージメントが引き続き重要です。

4.COP26が鍵を握る、野心的な気候変動行動の実践

今年11月にグラスゴーで開催が予定される第26回国連気候変動枠組条約締結国会議(COP26)は、パリ協定の目標(特に気温上昇を産業革命前に比べて摂氏2度、可能であれば1.5度未満に抑える)に向けた行動を加速させるうえで、きわめて重要です。COP26の目的の一つは、脱炭素社会への移行を進める中で、金融セクターが資本を配分してリスクを管理すると共に、投資機会を捉えられるような枠組みを構築することにあります。多くの企業は既に脱炭素化に取り組んでいますが、投資家は発行体の短期目標と長期計画の両方を慎重に分析し、気候変動行動の進捗状況を評価する必要があります。こうした野心的な目標を達成するには、資本市場のあらゆるレベルでイノベーションが必要です。

5.グリーンの先に向かう債券市場

グリーンボンド市場の急速な拡大に加え、関連する債券市場も発展しています。男女平等や安全な水の提供など、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に関連した「特定用途向け」のソーシャルボンドの他、サステナビリティ・リンク・ボンドやローンなど、用途が一般的で、資金調達を温暖化効果ガス削減など主要な持続可能目標を結び付けるタイプがあります。これらの金融商品、特に資金用途の制約が少ないサステナビリティ・リンク・ボンドは、より多くの企業や政府が持続可能性の向上に積極的に参加すると共に、投資家が明確な目標と測定可能な基準で資金を投じる可能性を広げることになるでしょう。

PIMCOのESG投資の方針と体制の詳細については、ESG投資のページをご覧ください。


(2021年6月3日発行)

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ご留意事項

全ての投資にはリスクが伴い、価値は下落する場合があります。債券市場への投資は市場、金利、発行体、信用、インフレ、流動性などに関するリスクを伴うことがあります。ほぼ全ての債券及び債券戦略の価値は金利変動の影響を受けます。デュレーションの長い債券及び債券戦略は、より短い債券及び債券戦略と比べて金利感応度と価格変動性が高い傾向にあります。一般に債券価格は金利が上昇すると下落します。低金利環境ではリスクが高まります。債券取引におけるカウンターパーティーの取引能力の低下が市場流動性の低下や価格変動制の上昇をもたらす可能性があります。債券への投資では換金時に当初元本を上回ることも下回ることもあります。

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