PIMCOブログ

最強の通貨は米ドルか

最近では、米ドルは通貨レースの先頭に立っていますが、米ドルが2018年に「三冠」を達成する可能性は低いとPIMCOでは考えています。

為替相場の予想は競馬の予想に似ています。為替レートは各国の状況に応じて上下に変動します。そしてごくまれに、競馬の世界で三冠馬が誕生するように、ある国の通貨が他の国の通貨を圧倒することがあります。

最近では、米国の経済成長の勢いが他国を大きく上回る状況において、米ドルが通貨レースの先頭に立っています。しかしながら、米ドルが2018年に三冠を達成する可能性は低いとPIMCOでは考えています。

最強の通貨

PIMCOでは、通貨のバリュエーション、金利格差、景気サイクルの勢いを座標軸として、為替レートをモニタリングしています。各通貨の位置付けとどの通貨に上昇/下落が見込まれるかについて、全体像を捉えることを目標にしています。

最高水準のバリュエーション、最大のキャリー、最も有利な景気サイクルにおけるポジションという「三冠」を獲得する通貨が出現することは多くありません。三冠が実現した年は、数年にわたるアウトパフォーマンスの幕開けとなりやすいため、注目に値します。「リスクオフ」の市場環境において、神経質な投資家が資金を安全資産である米ドルにシフトする動きを背景に、米ドルの優位性が見込まれる年もあります。

米ドルは1981年と1996年に三冠を達成しました。当時米ドルは歴史的に割安な水準にあり、米国の金利は実質、名目とも他国の水準を大幅に上回り、米国経済は他国よりも速いペースで成長していました。

米ドルは最近5カ月間に7%上昇したこと、米国の経済成長率は引き続き他国の水準を上回っていること、米連邦準備制度理事会(FRB)は年内にあと2回利上げを実行する見通しであることを踏まえると、米ドルは2018年も三冠を達成するとの予想が有力と思われます。しかしながら、古き良き時代だった1981年および1996年の状況と2018年の状況には、重要な違いがあることには留意すべきでしょう。

三冠達成にはならない理由

第1に、年初の実質実効為替レートが過去最低水準近辺にあった当時と比べて、現在の米ドルの水準は割安ではありません。過去38年間のデータを遡ると、現在のバリュエーションは70パーセンタイル地点に位置しています。

また、クロスボーダーの株式投資には為替ヘッジが伴わないことが多いため、株式市場のバリュエーションも重要な意味を持ちます。シラー教授が考案した景気循環調整後PER(CAPE)に基づくと、1980年以降、S&P500株価指数が現在よりも割高だった時期は、全体の10%に過ぎませんでした。また、大方の指標を見る限り、米国の株式は他国の株式と比べて大幅に割高な水準にあります。このため、拡大傾向の経常収支赤字のファイナンスに寄与する米株投資(為替ヘッジなし)の魅力は、低下しつつあります。

さらに、年初来、予想に反して景気減速に見舞われる先進諸国が多いなかで、米国経済はサイクル終盤の財政刺激策に支えられて循環的な勢いを維持していますが、持続性については不透明です。米国経済は過熱化のリスクに直面しているだけでなく、将来の景気後退時に財政を拡大する余地も小さくなっています。このため、インフレが大幅に上昇しない限り、中期ゾーンの米国債金利が他国の水準を大幅に上回って上昇する公算は小さいでしょう。その結果、他通貨に対する米ドルの利回りの長期的な優位性は、限定されるでしょう。

米ドルの下落局面到来はもう少し先になりそうですが、現在の水準から大幅に上昇することはないとPIMCOでは予想しています。また、他の主要な中央銀行もFRBに追従する形で、2019年には政策金利の正常化に着手すると予想しています。一方、引き続き、マクロ経済の不確実性はおおむね限定されるとみています。PIMCOでは、このような基本シナリオに基づいて、一部のエマージング市場の通貨を対米ドル、対ユーロで選好しています。

見通しに対するリスク

米ドルが三冠を達成する可能性は低いものの、PIMCOでは、現在の想定よりも長期にわたって米ドルの1人勝ちを継続させうる潜在的な3つの要因を注視しています。

  • ユーロ圏の経済成長:年初来、欧州を中心とするG10諸国の経済が予想外に大幅に減速したことが、マクロ経済関連の大きなサプライズとなりました。景気回復の流れが引き続き停滞した場合、欧州中央銀行は利上げのタイミングをさらに先送りする公算が大きいでしょう。その結果、2015~2016年と同じように、米金利の上昇が米ドルにとって引き続き追い風となるでしょう。しかしながら、米ドルがさらに10%程度上昇した場合、金融の逼迫化と財政政策の刺激効果の低減を受けて、米国の経済成長は鈍化する可能性が高いでしょう。
  • 貿易摩擦:世界経済の成長や株式市場のパフォーマンスを脅かすほど緊張が高まった場合、リスク回避の流れが、「安全資産」である米ドルを特にエマージング通貨に対して下支えする見通しです。このようなシナリオでは、ユーロ、日本円、スイス・フランが比較的堅調に推移する一方で、オーストラリアやカナダなどのコモディティ輸出国の通貨は下落する可能性が高いでしょう。
  • 米国におけるインフレ上昇:インフレ・リスクが意識されるようになれば、とりわけFRBの対応が後手に回ることを市場が懸念した場合、米ドルの先行きには大きな打撃が生じる見通しです。米ドルにとって、インフレ・リスクは、大方の主要通貨対比ではマイナスに作用する一方で、アジアや中南米を中心とする世界経済の成長サイクルの影響を受けやすい通貨対比ではプラスに作用する見通しです。

PIMCOのマクロ経済に関する詳しい見解は、最新の長期経済予測『急変に備えて』をご参照ください。

今すぐ読む


ジーン・フリーダはPIMCOのロンドン・オフィスを拠点とするグローバル・ストラテジストで、PIMCOブログに定期的に寄稿しています。

著者

Gene Frieda

グローバル・ストラテジスト

プロフィールを見る

Latest Insights

PIMCOの視点

国連の持続可能な開発目標:影響度によるパフォーマンスの測定

PIMCOのESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みの重要な目的の一つは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)を対話に取り入れることです。PIMCOがESGへの取り組みを進めていく際、どこに重点を置き、どう説明責任を果たすのか、そして最終的には影響度合いを測る際の枠組みの一つになりうるからです。

関連コンテンツ

ご留意事項

全ての投資にはリスクが伴い、価値は下落する場合があります。為替レートは短期間に大きく変動する場合があり、ポートフォリオのリターンを減少させる可能性があります。本資料で言及した投資戦略が、あらゆる市場環境においても有効である、またはあらゆる投資家に適するという保証はありません。投資家は、自らの長期的な投資能力、特に市場が悪化した局面における投資能力を評価する必要があります。投資判断にあたっては、必要に応じて投資の専門家にご相談ください。