8月と9月の市場ボラティリティの高さで、投資家は金融危機以来の乱高下に見舞われました。貿易と経済成長をめぐる不透明感が長引き、ボラティリティは今後も高水準で推移すると見込まれるなか、投資家はポートフォリオのリスクを軽減することで対応しています。
市場ボラティリティが落ち着くまで、多くの投資家が頼りにしたのがマネー・マーケット・ファンドです。しかしながら、今日の低利回りでは、マネー・マーケット・ファンドは長期的なポートフォリオのリターンに大きく響く可能性があります。歴史的に類似した期間を見ると、多くの投資家がマネー・マーケット・ファンドに留まる期間は数カ月よりはるかに長く、通常2年以上に及んでいます。
リスクのわずかな増加に耐えられる投資家は、質の高い短期債が魅力的な代替投資先になる可能性があります。短期債は向こう数カ月、堅調な展開となるとPIMCOではみています。
自動的なアロケーション
数十年来、投資家は保守的な姿勢に転換する際に、規制されたマネー・マーケット・ファンドに目を向けて来ましたが、今回も例外ではありません。インベストメント・カンパニー・インスティテュートによると、変動の激しかった2018年第4四半期以降、マネー・マーケットの資産残高は年初来で3,500億ドル以上増加し、8月末時点で3兆ドルを超えています。
歴史を指針とするなら、マネー・マーケット資産はしばらくの間、高水準で推移する可能性があります。図1に示すように、米連邦準備制度理事会(FRB)の過去の利下げサイクルでは、政府マネー・マーケット資産が増加し、利下げ終了後も18ヶ月~24ヶ月間は高水準を維持しました。
一般にマネー・マーケット・ファンドは、元本保全と日次流動性の確保という点では優れた手段になりますが、FF金利に比べてネットの利回りが低いという機会費用を伴います。直近では、マネー・マーケット・ファンドの平均直接利回りは1.70%で、FF金利の誘導目標の1.75%~2.0%を下回っています。(2019年9月20日現在)。
リスクを軽減しながら、失速を回避する
短期債に投資する運用戦略は、柔軟性が高く、米財務証券や短期政府証券などで構成される規制されたマネー・マーケットのユニバースには含まれない利回りの高い証券に投資することができるため、マネー・マーケットを上回る利回りという構造的なリターンの優位性をもたらす可能性があります。こうした戦略には、通常、残存期間がわずかに長く、クレジット・リスクがやや高い債券が含まれます。アクティブ運用のショート・ターム戦略では、この柔軟性を活かして、より高い利回りとキャピタルゲインの可能性を追求します。
現在のところ、短期債は、FRBの利下げに応じて価格が上昇し、高水準の流動性を維持する可能性があります。FRBは7月と9月に利下げを実施しましたが、経済の不透明感の継続にFRBが対応していることから、PIMCOでは、年末までに追加緩和を予想しています。
PIMCOでは、FRBの過去の利下げサイクルにおける、マネー・マーケット・ファンドのパフォーマンスと、多くのショート・ターム債券戦略に近い指標である3ヶ月LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)を分析しました。一般に、利下げが開始すると、3ヶ月LIBORがマネー・マーケット・ファンドの平均利回りを小幅上回り、緩和サイクルが長引くにつれて、LIBORのアウトパフォームがより大きくなっていました。(図2を参照)。
定義上、アクティブ運用のショート・ターム戦略は、3ヶ月LIBORなどのベンチマークとなる指標よりも高いリターンを目指しています。ショート・ターム戦略の投資家は構造的なプレミアムを獲得する可能性があるため、投資家が長期にわたって傍観していると機会費用が発生します。
先行きの危険を最小限に抑える
インフレ率が高まる可能性を考慮すると、現在の低利回り環境ではリターンの最大化がより重要になってきます。FRBが景気が刺激に向けて金融緩和を進め、関税引き上げが定着すると、米国のインフレ率は上昇する可能性があります。元本を保全し、流動性を管理し、購買力を守ろうとする投資家にとって、インフレ率を下回るマネー・マーケットの利回りは、隠れた落とし穴になりかねません。
結論は?保守的な運用をしようとする場合、急ブレーキをかけずに減速することは可能です。短期債に投資する戦略は、魅力的なリスク調整後のリターンをあきらめることなく、ポートフォリオのボラティリティを抑えるのに役立つでしょう。