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パンデミック後の金利:長期にわたって低下

過去数十年、さらには過去数世紀にわたる歴史的事実に加え、現在の世界的な公衆衛生上の危機を取り巻く特異な状況と、その経済的影響を踏まえると、さらなる低金利が長期にわたって続く「ニュー・ニュートラル2.0」が予想されます。

型コロナウィルスのパンデミック(世界的大流行)が始まって以降、米国債の利回りは過去最低レベルにまで急低下しています。この背景として、投資家の安全資産への逃避、景気の谷が極めて深くなるとの見通し、さらには米連邦準備制度理事会(FRB)による米国債の大規模な買い入れが挙げられます。この超低金利環境は、どのくらい続くのでしょうか?

一部の識者は、パンデミックが収束後は、記録的な財政赤字、債務の持続可能性に対する懸念、インフレ率の上昇で、名目金利と実質金利はパンデミック前の水準か、場合によってはそれ以上に押し上げられると主張しています。他方、民間の貯蓄過剰の拡大と、中央銀行による暗黙的ないし明示的な名目金利のイールドカーブ・コントロールの組み合わせによって、パンデミック収束後も超低金利が続くと主張する識者もいます。

歴史は、より低い金利が長期にわたって続く見通しを裏付けています。

双方が優れた議論を展開しても、最終的に正しいのは一方だけです。直近の短期経済展望「大打撃からの回復」で既に示したように、PIMCOでは、さらなる低金利が長期にわたって続く「ニュー・ニュートラル2.0」に入ったとみています。過去7世紀のパンデミックと金利の歴史、戦後1945年から1951年における米国の政策、インフレ率、金利の動向、さらには直近の景気後退後の経験は、いずれも、PIMCOの短期経済見通しを裏付けています。

まずパンデミックの歴史からみていきましょう。サンフランシスコ連銀のオスカー・ジョルダ、サンジャイ・シン、およびPIMCOの元シニア・アドバイザーのアラン・テイラーが最近公開した研究報告書では、10万人以上の人命が失われた14世紀以降の15回の主なパンデミック後の実質金利の推移を分析しています。著者らは、これらのパンデミックは長期間、経済に影響をもたらし、パンデミック終了後、数十年間にわたり実質金利を低下させたと結論づけています。(論文から抜粋した図1を参照)。

Figure 1 displays the response of the natural real rate of interest in Europe to a pandemic, 1 to 40 years into the future. Following a pandemic, the natural rate of interest declines for decades thereafter, reaching its nadir about 20 years later, with the natural rate about 150 basis points (1.5%) lower than had the pandemic not taken place. At about 40 years later, the natural rate returns to the level it would be expected to have had the pandemic not taken place.

著者らは、収益率低下の背景として、残存した労働1単位あたりの過剰資本による投資機会の減少と、予備的貯蓄や失われた資産の回復を目的とした貯蓄意欲の高まりを挙げています。著者らはまた、主なトレンド変化を含め、黒死病(1347年~1352年、約7,500万人が死亡)とスペイン風邪(1918年~1920年、約1億人が死亡)という2つの極端なケースを除いて、結果は揺るがないことを示しています。

もちろん、今回は違うかもしれません。注意点は2つあります。第一に、著者自身が指摘しているように、以前のパンデミックでは労働力が大幅に減少したため、資本に比べて相対的に労働力が不足しました。過去のデータの資本収益率の低下の一部は、これで説明できる可能性があります。これに対し、新型コロナウィルスの犠牲者の大半は高齢者であり、労働力に占める割合は小さくなっています。したがって、これまでの証拠に基づけば、労働力のトレンドが新型コロナウィルスによる影響を大きく受ける可能性は低く、したがって実質金利への影響も、過去のパンデミックに比べて小さくなる可能性があります。

過去のパンデミックとの違いの第二点目は、財政対応の規模で、今回はきわめて大規模です。多くの主要国政府は、ロックダウン(都市封鎖)とソーシャル・ディスタンシング(社会的距離)によって生じた、所得と総需要の穴を埋めようとしています。財政赤字拡大と債務水準の上昇は、財政の持続性に対する懸念を引き起こす可能性があり、パンデミック収束後も財政拡張が続くようであれば、インフレ率の上昇につながる可能性があります。そうなれば、実質金利と名目金利が大幅に上昇する可能性があります。

新型コロナウィルスの金利に対する長期の最終的影響

前述の注意点はあるものの、新型コロナウィルスの世界的大流行が金利に及ぼす足元の影響は、最終的にはマイナスであるとみられます。その理由は2つあります。

第一に、公的部門の貯蓄は減少しますが(財政赤字は増えますが)、民間部門の貯蓄は、企業も個人も、今後数年間増加するとみられます。図2に示したように、これは過去4回の景気後退後にも起こっており、特に2008年から2009年の世界的金融危機後に大きな反応を示しました。今回の景気後退後も、家計は失われた資産の回復と、特に現金や債券などの流動性資産の形での予備的な貯蓄に励むのみならず、住宅のエクイティ部分を増やす(したがって住宅ローンの負債を減らす)と考えています。企業も、バランスシート上の現金を増やし、ネットの負債を減らそうとするでしょう。したがって、民間部門の貯蓄増加が、公的部門の拡大する赤字を強力に相殺するはずです。

Figure 2 shows how U.S. savings increased in the four years following the start of the previous four recessions. Starting at an index of 100 in the quarter when the recession began, the recessions of 1981, 1990, and 2001 saw savings climb to levels around 125 to 150 four years later, while the 2007 recession (the global financial crisis) saw savings reach an index of nearly 275 four years later.

第二に、政府債務の増加が債券利回りを大幅に押し上げることを阻止するため、中央銀行は、今後も短期金利を低水準で維持し、債券の大規模購入や直接的なイールドカーブ・コントロールの形で、中長期の債券利回りの上限を抑えるとみられます。パンデミック収束後の債務の対GDP比率の大幅な上昇が見込まれる中、政府が債務不履行や景気後退をもたらす財政緊縮以外の方法で債務に対応するのを助ける上で、金融政策が重要な役割を果たすことになるとみられます。

その方法については、現代史に先例があります。第二次大戦後、FRBは米国の長期国債の利回りの上限を2.5%とする措置を継続しました。これは米国が参戦した時に導入された措置でした。こうしてFRBは、戦後の好況と高インフレ期に、政府の借入コストを低く抑えたのです。名目GDPが公的債務の名目金利を大幅に上回る中、債務の対GDP比率は実体経済に悪影響を及ぼすことなく低下しました。

インフレ率が20%を超えた1950年代初頭になってようやく、FRBは政府債務のさらなるマネタイゼーションに抵抗し、1951年財務省・FRB協定「アコード」で金融政策の独立性を獲得しました。興味深いことに、ニューヨーク連銀は最近のブログ「リバティ・ストリート・エコノミクス」で、FRBが1940年代にどのように利回り曲線を管理したのかに関する歴史的な考察を公表しています。このタイミングで公表に至ったことは単なる偶然とは思えません。

要約すると、新型コロナウィルスの公衆衛生上、人道上の危機はいずれ収束するものであり、できれば早期の収束を願っていますが、その金利を抑制する影響はおそらく長く続くと見込まれます。投資家は、実質金利のさらなる低下がより長期にわたって続く「ニュー・ニュートラル2.0」の世界を受け入れる必要があります。

このブログは2020年4月13日に公開されました。

2020年のグローバル経済の見通し、および投資家にとっての意味合いについてのPIMCOの見解は、直近の短期経済展望大打撃からの回復」をご覧ください。

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ヨアヒム・フェルズ はPIMCOのグローバル経済アドバイザーであり、 PIMCOブログの定期的寄稿者です。

著者

Joachim Fels

グローバル経済アドバイザー

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