PIMCOの基本シナリオでは、世界経済全般の力強い回復を予想しています。リフレが話題になっていますが、インフレ率については、向こう1年~2年は、中央銀行の目標水準を下回ると予想しています。ただ、今後数ヵ月のインフレ率の一時的な急上昇には留意が必要です。 2021年春の短期経済展望では、向こう1年の世界経済、インフレ、中央銀行の政策の見通しと、市場や投資家にとっての意味合いを論じています。本ブログでは、PIMCOの見解の概要をお伝えします。 経済見通し 2021年の世界経済は、1月の短期経済展望の予測よりも、さらに力強く回復する見通しです。1月以降、各国政府は財政支援を大幅に強化しており、ワクチン接種が進むことにより、今後数四半期にわたり、新型コロナで制約を受けたサービス・セクターの経済活動が活発化すると見込まれます。 しかしながら、現在の景気サイクルはきわめて特殊なもので、基礎的な経済・金融の歪みではなく、ロックダウンや自発的な社会的距離により引き起こされた景気後退からの回復であるため、今後の見通しには通常より高い不確実性が伴います。 インフレの動向 向こう数ヵ月は、ベース効果、足元のエネルギー価格の上昇、活動が活発化したセクターでの価格調整が相まって、前年比のインフレ率が大幅に押し上げられる可能性があります。しかしこうした上昇分の大半は、今年後半には反転すると予想しています。労働市場の力強い回復が見込まれるものの、完全雇用は依然として達成が難しいことがその理由です。全体としてPIMCOの基本シナリオでは、2021年から2022年のコア・インフレ率は、すべての主要先進国で中央銀行の目標を引き続き下回ると予想しています。 とはいえ、経済成長や雇用増加が予想を上回るなど、様々な要因を背景にインフレ率が予想を上回る上振れリスクに留意しておく必要があります。逆に、企業がパンデミック対応で自動化やデジタル化を加速した場合や、足元の資産価格のブームが破裂した場合には、インフレ率が予想を下回る下振れリスクが顕在化する可能性があります。 投資への意味合い 投資家は、困難で変動が激しくなると予想される投資環境の中で、事態の変化に機動的に対応できるよう、ポートフォリオの柔軟性と流動性の確保に努めるべきでしょう。アセット・アロケーション全体の観点から、債券は今後も資産価値の保存とリスク資産のヘッジという両方の役割を担っていくとPIMCOでは考えています。 最近の市場の動きを受けて、金利は適正な水準に近づいており、デュレーションの観点ではかなり基本シナリオに近くなると予想しています。既に米国でスティープ化が見られることを踏まえると、この利回り曲線のスティープ化見通しを、英国、EU、日本のグローバルな分散につなげる、有力な根拠があるとも考えられます。 米国の非政府系モーゲージ債(MBS)や、英国の住宅モーゲージ債などの一部のグローバルなストラクチャード商品は、一般的な現物社債に比べてバリュエーションが魅力的であり、守りに優れた性質を有していると考えています。 社債では、多くの場合、現物債よりクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)が、バリュエーションと流動性の点で魅力的だとみています。住宅、工業/航空宇宙、一部の銀行・金融など、新型コロナからの回復の恩恵が大きいセクターに魅力的な投資機会を見いだしています。クレジット重視の戦略の中で、こうした機会を引き続き重視する方針です。 アセット・アロケーション・ポートフォリオでは、株式のオーバーウエイトを維持する方針で、ディフェンシブ株よりも景気循環株を選好します。セクター及び銘柄選択が引き続き極めて重要であり、PIMCOでは財政刺激策、景気の循環的な回復、テクノロジー分野における長期的な創造的破壊の影響の大きい銘柄を選好しています。また、パンデミックから早期に脱する可能性が高く、財政支援策の恩恵を受けると見られる、米国とアジアの株式市場を引き続き選好します。 コモディティは小幅上昇しています。その背景として、世界の成長の加速、インフラ投資、さらには現在の在庫水準が総じて引き締まっている点が挙げられます。ただし、総合価格の上昇は限定的だと見ています。大多数の市場において全般的な引き締まりが見られないことから、コモディティの新たなスーパーサイクルが始まったとは考えていません。 2021年のPIMCOの世界経済の展望と投資への意味合いの詳細については、短期経済展望「見せかけのインフレ」の全文をご覧ください。 ヨアヒム・フェルズは、PIMCOのグローバル経済アドバイザー。アンドリュー・ボールズは、グローバル債券担当最高投資責任者(CIO)。