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中国の信用収縮の影響

景気刺激策の縮小に伴い、中国経済はソフトランディングする見込みですが、世界経済の抑制は先進国にとって負担となるため、景気刺激策が予想以上に長期にわたって続けられる可能性があります。

国人民銀行は、新型コロナウイルス関連の景気刺激策を予定より早期に縮小し始めたことを発表しました。この決定は現在認識されている以上に、先進国における政策動向にとってはるかに重要である可能性があります。この動きは、中国の政策担当者がリスク管理を再び重視していることの一環で、質の高い経済成長を持続させるためには、一部の国営企業、地方政府の金融手段、過剰なレバレッジを使用している不動産開発業者など、経済の最も脆弱な分野に市場の規律が必要であるとの見解を反映しています。実際、中国人民銀行は、中国の対GDP比債務比率が高水準であることと、金融市場の急速な発展を認識しており、ほとんどの中央銀行よりも金融安定リスクを重視しています。そのため、従来のインフレ率や為替レートの安定という目的に加え、資産価格のバブルリスクを軽減するために流動性をしばしば管理しています。

中国における政策の引き締めは、国内短期金融市場の流動性の逼迫、プライベート・クレジットの成長の鈍化、国債発行高の減少という形で既に見られます。GDPに対する比率で見た新規のパブリックおよびプライベート・クレジットの変化を示す指標で、経済活動の転換点を示すことが多い中国のクレジット・インパルスは、ピークを付けた模様です(以下の図表を参照)。これは2021年を通じて減速する可能性が高いと考えられます。中国人民銀行は全体のクレジット成長が名目GDP成長率並みになることを目標としていますが、これはクレジット・インパルスが2020年第4四半期の9%超のピークから年末までにGDP比-3.5%程度に低下することを示唆しています。 他の条件が同じであると仮定すると、これにより中国の経済活動が2022年終盤までにトレンドを下回る水準まで低下する可能性があります。

中国におけるパブリックおよびプライベートの新規債券発行高はピークを付けた模様

出所: CEIC、PIMCO、2020年12月31日現在。

流動性の逼迫は、中国の社債および短期金融市場を若干圧迫する可能性

流動性の逼迫は、中国の社債市場の周辺を、少なくとも短期的に圧迫し、短期金融市場の主要ボラティリティが増大する可能性が高いです。中国規制当局は一部の社債デフォルトが金融システムの他の分野に波及しないよう巧みに分離しましたが、2020年に積み上がった債務(GDP比約25%から300%近くまで上昇)のリスクが波及しています。

次に、世界レベルで見ると、現在の中国のクレジット・インパルス収縮は、先進国で大規模な財政刺激策が実施され、人の移動が増加する中で起こります。これは、過去にクレジット・インパルスが低下した2011-12年および2014-15年の状況とは大きく異なります。

ソフトランディングの予想

中国経済は、主に三つの理由により、ソフトランディングを達成するでしょう。

  • 銀行と経済全般が強くなっています。前回の2017-18年の信用収縮により、経済の効率は高まり、将来の景気刺激策の縮小に対する感応度が低下しました。それにより、質が低く(且つしばしば収益性が悪い)過剰な生産能力が削減されました。同時に、当局は影の銀行(シャドー・バンキング・システム)に隠れたリスクを銀行のバランスシートに戻す措置を取ったため、銀行は資本調達とバランスシートの整理を迫られました。銀行は現在、不良債権が増加しても、需給に対して中立に近い当局の流動性供給に対処できる良好な状態にあります。
  • 経済に対するパンデミック(世界的流行)の影響は、概ね吸収されています。当局はパンデミックを非常にうまく管理したため、2020年にパブリック・セクターが果たした役割を民間セクターが引き継ぐ比較的良好な状況にあります。
  • 経済の構造的な変化は、以前ほどクレジットに頼らない成長モデルを示唆しています。従来型の製造および投資が牽引する成長モデルはクレジットに大きく依存していたのに対し、ニューエコノミーはサービス・セクターと消費がますます牽引しています。これらのセクターはクレジットではなく、人的資本と生産性に依存しています。

投資への影響

  • スプレッドの拡大は国内債券のデュレーションに投資機会を提供する可能性があります。一部のデフォルトに端を発する銀行間の一時的なリスク回避の可能性と、それに反応した銀行間レートのオーバーシュートは、PIMCOがファンダメンタル面で健全であると考える中国の国内債券のデュレーションにとって好機となるはずです。過去のサイクルとは異なり、過去2年間で外国人による中国国債の保有は2,730億ドル増加し、中国と世界の債券市場の相互関連の強まりを示唆しています。
  • 人民元は魅力的に見えます。クレジット・インパルスの低下自体は、人民元の目先の強気の見解を変える要因にはなりにくいです。経済指標と同様に、人民元の動向はクレジット・インパルスに2四半期遅れて現れる傾向にあります。また、米国の関税が緩和されれば、人民元には上昇の可能性があると思われます。
  • 世界の需要はコモディティ価格に対するリスクを軽減する見通しです。これまでコモディティ価格の需要に対する感応度は高かったですが、先進国の需要が力強く反発すると予想されるなかで、コモディティがクレジット・インパルスの低下から受けるリスクは小さくなっています。
  • 先進国は、現在予想されているより長期にわたって景気刺激策を強いられる可能性があります。中国は世界の成長の主要な牽引役となり、2020年の世界GDP*の11.4%、過去10年間の世界GDP成長率の年平均0.9%を担いました。 中国の寄与度が0.5%以下だった2015年、2016年、2019年は、世界のGDP成長が実質マイナスでした。過去が参考になるならば、先進国は現在の予想より長期にわたって景気刺激策が必要になる可能性があります。

* 米ドル建て。購買力平価調整後の世界のGDP成長に対する中国のシェアおよび寄与度はさらに大きく、それぞれ29%、1.6%となります。

Gene Friedaはエマージング市場および先進国市場を担当するグローバルストラテジストです。Carol Liaoは、香港を拠点とする中国担当エコノミストです。


(2021年3月5日発行)

著者

Gene Frieda

グローバル・ストラテジスト

Carol Liao

中国担当エコノミスト

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