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世界における半導体不足:勝者と敗者

世界のテクノロジー関連支出は拡大傾向にあり、それが半導体部品に対する需要を牽引し、半導体セクターにトレンドを上回る成長をもたらすとみています。

コンピューターチップ、すなわち半導体は、車からパソコンやゲーム機、スマホなどの家電製品まで、あらゆるものに使用されています。昨今のこの貴重な資源の不足が、消費者物価や企業収益、雇用やインフレ、さらには国家の安全にまで大きな影響を及ぼしています。

特に自動車用の半導体不足の状況は、2021年後半にある程度緩和するとみていますが、半導体への高い需要はしばらく継続するでしょう。長期的には、家電製品などの伝統的な需要と、人工知能(AI)を利用した製品向けの半導体などの新たな需要先の増加により、半導体のスーパーサイクルは継続すると予想しています。

半導体セクターには大きな投資機会が期待できますが、今後見込まれるスーパーサイクルにおいて、どの企業が勝者になり、どの企業が敗者になるのかを見極めるべく、さまざまなリスクを注視しています。

世界の半導体不足の要因

半導体不足を引き起こしている要因は二つあります。新型コロナウイルスによる需給バランスの崩れと、依然として続く米中間の地政学的緊張です。

パンデミック(世界的流行)により多くの人が在宅勤務やオンライン学習を余儀なくされたため、家電製品の需要は爆発的に上昇しました。昨年、パソコンは世界で2億7千5百万台出荷され、出荷台数の上昇率は第4四半期では10.7%、2020年全体では4.8%に達し1、過去10年で最も高い伸び率となりました。それと同時に一方で、2020年前半は新車の注文が落ち込み、自動車用の半導体需要は低下しました。半導体製造工場は、技術水準がより高く利幅も大きい消費者向け製品に生産の軸足を移し、それが産業向け半導体の製造能力不足につながりました。自動車セクターの需要は2020年後半には回復したものの、自動車メーカーは十分な供給が得られませんでした。

大半の中国の半導体メーカーは、米国のソフトと機械を使用して半導体を製造しています。2019年に米国が中国に対する技術輸出の規制を実施したことを受け、中国企業は半導体の在庫を積み上げ始め、それが供給不足につながりました。中国による2020年の半導体の輸入は前年比で14.6%増加し、GDPの2.4%に相当する3,500億米ドルに達した一方で、技術と研究開発(R&D)投資は、2019年はGDPの1.2%、2020年には1.5%に増加しました2

さらに地政学的な緊張が世界のハイテク企業の設備投資に水を差しました。半導体需要の急拡大を支えることができるのは、わずかな先端的製造工場に限られ、それが半導体不足に油を注ぐ形となっています。台湾と韓国に本社を置く企業が世界の半導体工場の売上げの83%以上を占めており3、寡占状態は最先端の半導体に限ればさらに顕著です。「ジャスト・イン・タイム」(必要なときに、必要なものを、必要なだけ生産または調達する)生産モデルは、安定的な需要と供給の環境下で最もうまく機能します。現状では、中国企業だけでなくグローバル企業でさえも、米国技術へのアクセスにも影響をうける供給の不透明さから「ジャスト・イン・ケース(有事を想定した物流)」モデルを考慮せざるを得ないかもしれません。

インフレに与える影響

世界の半導体不足により、ITハードウエアの価格に対するインフレ圧力は見られましたが、これは長期的な現象の可能性もあり、また資本集約が進んでいることから半導体セクターへの参入障壁を高めています。中国の家電メーカーは、ここ数十年で初めて明確に値上げを公表し始めました。これには、回路基板/ウエハーなど原材料の供給不足もある程度影響しています。マクロ経済的にみれば、供給の減少は価格を引き上げ、半導体に大きく依存する装置の小売売上高や利益の抑制を意味します。

自動車メーカーにとっては、半導体の価格上昇は避けて通れないと思われますが、仮に自動車関連の半導体の価格が10%上昇しても、自動車の生産コストの上昇は0.2%ほどに過ぎないことから、このようなコストの上昇が、世界的に大きな消費者物価指数(CPI)の上昇にはつながりにくいと考えています。

投資機会と主なリスク

パンデミックはビジネスのデジタル化を推し進めました。今回の循環的な景気回復で、注目すべきはインフラではありません。道路などに使用するレンガではなく半導体です。PIMCOが最近発表したブログ「グリーン経済移行への青信号:3つの投資トレンド」で説明されているように、半導体は景気回復の重要な鍵であり、エネルギーの効率化や5G、電気自動車の生産拡大などのトレンドの恩恵に与かることができます。

台湾、韓国、中国は引き続き半導体生産の設備投資を主導するとみられ、2021年の世界全体の半導体設備投資うち70%以上を占めるとみています。2020年には、半導体の輸出は韓国ではGDPの6%を、台湾では20%を占めました4。今後3~5年は台湾と韓国がこの技術分野をリードし続けるとみられ、それぞれの国の成長と通貨を支えるでしょう。世界的な半導体不足によるもう一人の勝者は半導体装置メーカーと、半導体確保に強い交渉力を持つ市場のリーディング・カンパニーです。

必要な半導体の供給確保が困難なため、相対的に規模の小さな自動車メーカーや家電メーカー、製造企業の課題はより大きなものになるでしょう。また、生産能力を確保できず、半導体製造工場による値上げの可能性も高いことから、半導体の設計業者も苦戦を強いられるでしょう。

世界のテクノロジー関連支出は全体的には拡大傾向にあり、それが半導体に対する需要を牽引し、半導体セクターにトレンドを上回る成長をもたらすとみています。このセクターには豊富な投資機会があると考えますが、いくつか重要なリスクに対する注意も必要です。パンデミックの収束により、世界の経済活動の回復が加速し、自動車用半導体の需要も高まることで、短期的には半導体不足の状況がさらに長引くかもしれません。また、米国と中国の間の緊張も、供給問題を悪化させかねません。テクノロジーに関するバイデン大統領の対中国の政治姿勢、世界の半導体サプライチェーンにとって非常に重要となるでしょう。中国の半導体の自給自足への移行は中・長期的なリスクであり、市場の勢力図を大きく変化させかねません。さらに、どのようなものであれ、素材や部品不足が、同セクターや半導体に依存する他のセクターに与える影響も懸念されます。

PIMCOの2021年の世界経済見通しに関する詳細と投資への意味合いについては、短期経済展望「見せかけのインフレ」をご参照ください。



1 出所:ガートナー

2 出所:PIMCO、IMFと中華人民共和国国家統計局のデータを基に計算

3 出所:トレンドフォース 2020年12月現在

4 出所:ドイツ銀行、ヘイバー、CEIC 2020年12月現在2020年12月現在

(2021年4月8日発行)

著者

Yishan Cao

クレジット・リサーチ・アナリスト

Geraldine Sundstrom

アセットアロケーション戦略担当のポートフォリオ・マネージャー

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