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アルゼンチンと国際通貨基金(IMF):2度目は魅力的

アルゼンチンでは景気後退や2019年の大統領選を控えて財政緊縮策への抵抗といったリスクはあるものの、IMFとの新たな合意を受けて、同国の現地通貨建て債に投資機会があるとみています。

ショック療法がそうであるように、IMFとの新たな融資合意によりアルゼンチンは直ちにその恩恵を受けます。信用枠は拡大され、前倒しされた融資は来年の財政予算に充当されます。その一方で、この合意には重大な副作用も伴います。同国では深刻な景気後退が予想され、2019年の大統領選を控えて政治的抵抗が激化するリスクがあります。

それでも、投資の観点からみると、IMFとの新たな合意は6月に公表された当初のプログラムから改善されており、アルゼンチンの債券市場では、前述した同国のリスクを織り込んだ債券セクターには投資機会があるとみています。

IMF合意 バージョン2.0

4月以降に米国の金利が上昇し、米ドル高が進む中、アルゼンチン経済を取り巻く環境は厳しさを増しました。財政収支の不均衡は拡大、インフレ率は30%を超え、通貨ペソは50%下落しています。6月に合意した、3年間で500億ドルというIMFの融資プログラムでは信認の回復に至らなかったことから、IMFは9月末、アルゼンチンに対する信用枠を70億ドル拡大し571億ドルとし、併せて190億ドルの融資を前倒しで実行すると発表しました。修正後の融資プログラムにより、アルゼンチンの2019年中の市場関連の資金調達ニーズは事実上、充足されることになります。

当初の合意は巨額だったものの、3つの主要な点で力不足でした。新たな融資プログラムが、これらの点にどう対応しているかを以下でご説明します。

  1. 財政調整。9月の合意は、基礎的財政収支のより早期の均衡、2020年ではなく2019年の均衡を目指しています。融資実行の前倒しと信用枠の拡大はアルゼンチンのクレジットを支え、2019年の大統領選をめぐる不確実性を抑制すると期待しています。
  2. インフレ・ターゲティングではなくマネタリー・ベース・ターゲティングへ。マネタリー・ベース・ターゲティングへのシフトは、事実上、通貨供給を引き締めることであり、現地の投資家を米ドルではなく自国通貨ペソを保有する方向に向かわせ、これによりいくつかの問題が解消される可能性があります。インフレによる価値下落のスパイラルを恐れる投資家が米ドルに走ったことで、アルゼンチン国内の短期金利が急上昇し、同国政府が巨額の短期債務を借り換えることが極端に難しくなっていました。新たな合意では、ペソに値幅制限を設けると共に、中央銀行の為替介入が制限されています。これにより通貨管理の透明性が増すことになります。また、実質でマネタリー・ベースが削減され、ペソ建て資産が希少になることを踏まえれば、ペソ建て資産を維持するインセンティブが増し、最終的に外貨建てで資金調達するニーズが減ることにつながると考えられます。
  3. 財政予算に充当される前倒し融資は、懸念材料ではなく支援材料。融資の前倒しで柔軟性が増すと、アルゼンチン財務省は、市場でドルの供給者となり、ペソ建て債務を返済していくことになります。これにより2019年末までに最大100億ドルの流動性が追加供給されることになりますが、これは中央銀行が実施すべき操作とともに、米ドル買いの意欲を阻害する強力な要因になると考えられます。

新たな主要リスク:政治

マクロ経済の不均衡に対するアルゼンチンの漸進的なアプローチは、いまやショック療法の前に打ち捨てられつつあります。今後数ヶ月にわたり金融引き締めが進むにつれ、深刻な景気後退に陥る可能性があります。IMFの金融支援は強力ですが、経済が収縮すれば、来年の大統領選期間中にIMFの合意プログラムに対する政治的コミットメントが揺らぐのではないかと疑問視されるのはほぼ確実です。2019年は豊作が予想され、これがアルゼンチン経済への打撃の緩衝材になりえますが、多くの投資家はマウリシオ・マクリ現大統領の支持率への注目を高めていくものとみられます。

となれば、結局、落とし穴は、野心的なIMFの調整プログラムの細部ではなく、その政治的な影響にこそあると考えられます。投資家としては、現在不人気の左派のクリスティーナ・キルチネル元大統領から混乱したペロン党穏健派まで、政治的な背景が分断されていることに安堵を感じますが、緊縮政策で失業率が上昇し、国民の不満が高まるにつれ、政治的景観はめまぐるしく変わる可能性があります。

マクリ現大統領、ペロシ党穏健派の候補の勝利を前向きに捉える一方、左派のポピュリスト政権の復帰はアルゼンチンにとって最悪のシナリオであるというのが、市場の大方の見方だと考えられます。そうした結果に至る過程で、マクリ現大統領の支持率が低下した場合、同大統領の融資プログラムへのコミットメントが揺らぐ可能性があります。

結論:投資への示唆

これらのリスクや、今後も変動が続くとの予想を踏まえても、アルゼンチンのクレジットと現地通貨建て市場の現在のバリュエーションは妥当だとみています。

バリュエーションの観点では、為替レートは妥当な水準を下回っているとみており、現地通貨建て資産のエクスポージャーが魅力的になっています。しかしながら、変動の激しい今年、アルゼンチン国内でどの現地通貨建て資産を選択するかが、市場の方向感を間違えないことと同じくらい重要です。

金利が上昇しつつある中、PIMCOではかねてより、固定金利資産ではなく、現地通貨建て変動金利国債を高く評価してきました。変動利付債については、IMFとの新たな合意の下での金融引き締めにより、引き続き恩恵を受けるとみています。

クレジットでは、IMFの前倒しの融資が一気に実施されることから、短期債の価格は底堅いとみられます。それより長い年限については、額面債に投資妙味があるとみています。

エマージング市場の詳細については、「変わりゆくエマージン市場の現実と投資機会」をご参照ください。

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著者

Pramol Dhawan

ポートフォリオ・マネージャ

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