エマージング市場は年初来9カ月、堅調に推移してきましたが、足元でエマージング・ローカル債券市場が軟調な展開となっていることを受けて、投資家の一部は、回復局面が短命に終わるのではないかと懸念しています。エマージング・ローカル債券市場の直近2カ月のアンダーパフォーマンスは、投資の好機なのでしょうか、それとも警鐘を鳴らす鉱山のカナリアなのでしょうか?

2018年を目前に控え、PIMCOでは足元の下落を警鐘ではなく、好機とする見方に傾いています。これは、いくつか重要な根拠に基づいています。

  1. エマージング諸国の景気と資産動向は、何よりもグローバル経済と関数関係にあります。2017年の世界経済は力強さを増し、景気の裾野は広がっています。したがって、エマージング市場を支える背景は、2018年に入っても堅固であると考えられます。
  2. エマージング諸国の資産動向は、世界の流動性の状況にも左右されますが、現時点の流動性は世界的な金融危機以降で最も潤沢な水準にあります。さらに、金融危機後の銀行資本規制の影響もあって、財務レバレッジはきわめて低い水準にとどまっています。
  3. 中央銀行が異例の緩和策を段階的に解除していく過程で、金融不安定化と成長率/インフレ目標の絶妙なバランスを取り続るかぎり、エマージング市場に打撃を与えることにはならず、景気循環を長期化できる可能性があります。エマージング市場を攪乱する要因は、通常、循環的な名目金利の上昇ではなく、景気を損なう資産価格の急激な変動です。重要なのは、資産価格ショックは必ずしも実質金利の急上昇を伴うものではなく、流動性が徐々に回収されることにより、高値にあった資産市場が反転した結果である場合もある、という点です。2000年のITバブル、2008年の不動産バブルがそうでした。
  4. 現状、大半のエマージング諸国で大きな不均衡は存在せず、2013年の(「テーパー癇癪」)のように、グローバル経済に対する予想外の金利ショックが、有害な結果をもたらすことはあまり想定できません。金融状況が依然として強い中、不均衡は積み上がっているのか、積み上がっているとすればどこに積み上がっているのかを注意深く見守ることが重要になります。

堅固なファンダメンタルズがエマージング諸国の防護壁に

エマージング諸国は、貿易と資本の両方の流れを通じて、依然として市場の影響を受けやすい「条件の受容者」であることには変わりありません。しかし現在のエマージング諸国が大きく異なるのは、過去においてショックを増幅させてきたような、循環的な不均衡状態に陥っていない点です。米国の利上げサイクルの成熟段階において、エマージング諸国は、ファンダメンタルズ面でかつてないほど防御耐性が強くなっているのは間違いありません。

エマージング諸国にとって政治リスクは引き続き懸念材料ですが、それでも循環的な不均衡が存在していないことは安心材料です。政治的不確実性のマクロ経済効果は急速ではなく徐々に表れる可能性が高いものです。例外はトルコで、対外的な資金調達ニーズが大きく、かつ拡大しているため、政治的ショックには脆弱です。

では、何が問題になりうるのでしょうか?

足元で中国経済の減速が予想される中、コモディティ価格の下落が、エマージングのコモディティ輸出国の成長見通しの重しになるとみられます。しかしながら、中国経済の減速の背景と性格は、2015年とはかなり違っています。不動産セクターの在庫動向は大幅に改善しており、堅調な外需を背景に、現時点の中国でデレバレッジを進めることは可能です。不動産関連の需要が減退したとしても、中国国内のサプライサイドの改革により、コモディティ価格を下支えできる可能性があります。その結果、中国のハードランディングの可能性は低いと考えられます。

成長予想以外では、エマージング市場の投資家は、グローバル金融市場において、小さなショックを増幅する可能性のある資金の流れの「配管」の最近の変化について考慮すべきです。

具体的には、モメンタムと資産のボラティリティを使ってリスクテークの水準を決定するシステマチックな投資戦略は、本質的にプロシクリカル(循環増幅的)になります。また、近年のパッシブ運用へのシフトにより、歴史的に市場の隙間を埋めてきた、バリューを求めるアクティブ運用の資金プールが減っています。

しかしながら、幸いにもこうしたパッシブ運用の資金プールやモメンタム主導の資本は相対的に小さく、依然として多くの投資家は、バリュエーションのバラつきを積極的に活用して、引き続き超過収益を確保しようとしています。とりわけエマージング債においては、アクティブ運用に、前述の「配管」の問題に起因する混乱をむしろ利用する好機があるとみています。

時に配管により資金の流れが不可解になるとしても、エマージング市場は引き続き優位にあるとみられます。

エマージング市場や世界経済の見通しについては、最新の短期経済予測「成長のピークへ」をご覧ください。

「成長のピークへ」を読む



ジーン・フリーダはPIMCOのロンドン・オフィスを拠点とするグローバル・ストラテジストで、PIMCOブログに定期的に寄稿しています。


著者

Gene Frieda

グローバル・ストラテジスト

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