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強気の金利予測で、FRBはインフレ抑制の姿勢を再度強調

米連邦準備制度理事会(FRB)の新たな経済見通しは、利上げ幅が以前の予測よりも早く大きくなることを示唆しています。

連邦準備理事会(FRB)は、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)でFF金利を0.75%引き上げ、インフレ対応に向けてあらゆる手段を講じる意思をこれまでにはない断固たる姿勢で伝えました。前回6月の経済見通し公表以降、米国ではより根強いインフレが広範囲で発生していることから、一層急激な利上げの経路が支持され、2022年および2023年の金利の軌道を0.75%から1.00%上方修正させる利上げを実行しました。

PIMCOでは、引き締まった金融状況とFF金利の上昇により、ソフトランディングへの道はますます狭まったと考えています。この点についてはジェローム・パウエル議長も認識しており、インフレを目標水準まで抑制していくには、経済的な痛みも必要になることを認めています。FRB高官の予測中央値は、経済成長はトレンドをやや下回り、失業率はインフレ率を加速させない失業率(NAIRU)よりもわずかに高く、依然としてソフトランディングの予想を反映していますが、PIMCOでは引き続き、向こう1年のうちに米国が最終的に景気後退入りする可能性が一層高くなったと考えています。

2022年の残りの会合については、金利予測によるとFRBは11月に再度0.75%の利上げを実施し、12月には0.50%のペースに下げ、2023年初めごろ利上げのターミナルレート(利上げの終着点)に近づくとみています。

その先については、FRBがインフレを落ち着かせるために短期的な経済コストを受け入れる意思があることは明確である一方、FRB高官ほとんどは2024年には利下げが始まると予測しています。FRBが政策金利を引き下げ、中立金利を目指すうえで、低インフレ率と高失業率は、インフレ対応と経済成長促進のトレードオフをより困難なものにする可能性があるためです。

低下しにくいインフレ、急激な利上げ

6月のFOMC後にFRB高官の予測が公表されて以来、マクロ経済の見通しは大きく変化しています。インフレの様相は悪化しました。最近の米国消費者物価指数(CPI)のなかで、警戒的に上昇している3つの項目のうち、6月の会合時点で明確だったものは1つのみでした。CPIの価格バスケットの構成項目全体でインフレ率は低下しにくく分野も拡大しており、賃金の上昇はさらに加速しインフレ期待は正味上昇しています。一方、経済活動のデータをみると、5~6月に停滞していた経済は再加速しはじめ、エネルギー市場のボラティリティ上昇や金融状況の引き締まりなどマクロ環境が変化する中で、労働市場の極めて堅調な状況は変わっていないように見えます。

その結果、FRBは政策金利を0.75%引き上げ、2022年および2023年の金利見通しを大きく上方修正しました(0.75%から1.00%の上昇修正により、今では予想ターミナルレートの中央値は4.6%まで上昇)。FRBは、予測期間内での実質GDP収縮の予想はしていませんが、PIMCOではインフレを押し下げるには、経済の収縮と顕著な失業率の上昇が必要となる可能性が益々高まったと考えています。最近、サンフランシスコ連銀がNAIRUは6%との推計を公表しましたが、インフレの安定化には失業率の大幅な上昇が必要なことを示しているのかもしれません(労働統計局によると、8月の米国の失業率は3.7%でした。)

インフレを鎮静化するには、FRB高官もトレンドを下回る成長が避けられないだろうと認識していますが、景気後退に向うことを中央銀行が認めることは難しいでしょう。その意味で、FRBの政策立案者がインフレに関しては上振れリスクが大きいと見ているのは当然のことかもしれません。金融状況は全般的に引き締まっている状態ながら、インフレ率の上昇により実質金利は低い状態が続いています。インフレの分野が拡大しつつある今、実質金利を中立水準以上にするために、追加的な金融引き締めなしでインフレが自然に鎮静化するかはまったく明確ではありません。事実、インフレ率上昇がインフレ期待を拡大させるといった二次的影響のリスクは、パンデミック関連のサプライショック時よりも広範囲にわたるとみられる現在のインフレのトレンドという文脈において、より重大だと思われます。

この点を背景に、この先数カ月もFRBはインフレとの闘いに正面から立ち向かうと考えています。今回発表された金利予測から11月にはさらに0.75%の利上げが予想され、12月には引き続き加速的ながらも0.50%の利上げにペースを落とし、2023年初めには政策金利はターミナルレートに近づくとみられます。インフレ率が低下しにくいことから、景気が最終的に減速し、インフレと失業率のトレードオフがより深刻になるまで、しばらくの間FRBは景気に制限的な水準の政策金利を維持する可能性が高いと考えています。

ティファニー・ウィルディングアリソン・ボクサーはエコノミスト。PIMCOブログの定期的寄稿者。

著者

Tiffany Wilding

エコノミスト

Allison Boxer

エコノミスト

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