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In Focus

2008年2月
ジェームス・ムーアとルネ・マーテル、
長期デュレーション・オーバーレイ戦略を語る
      
ジェームス・ムーア
エグゼクティブ・
バイス・プレジデント
ルネ・マーテル
バイス・プレジデント
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負債対応投資
Liability-Driven Investing)に向かう流れにより、デュレーションの長い負債のヘッジに効果的な戦略に対する需要が拡大しています。今回のインタービューでは、ジム・ムーアとルネ・マーテルが年金基金全体の資産配分戦略を大きく変更することなく、資産と負債のマッチングの改善させる可能性のある戦略として、ロング・デュレーション・オーバーレイの長所と短所についてご説明します。

 

負債の長いデュレーションをヘッジするための手段として、多くの年金基金がロング・デュレーション・オーバーレイを検討しています。まず、オーバーレイとはどういったものであり、オーバーレイによって、年金基金が直面している問題の一部を解決可能と考えられる理由について、説明してください。

ムーアオーバーレイとは年金基金が先物や金利スワップを利用して合成的に長期のデュレーション・エクスポージャーを取る手法です。年金基金は実質的に、ベンチマークに相当する資金調達金利を支払い、その見返りとして、米国債先物か、スワップ・カーブのいずれかの年限を参照するデュレーションの長い債券に対するエクスポージャーを取ることができます。

 

オーバーレイは、負債のキャッシュフローがデュレーションの長い投資と必然的に高い相関関係にある年金基金で採用されるケースが増えています。長期のデュレーション・エクスポージャーを取ることにより、基金のスポンサーは長期のキャッシュフローの金利感応度をより的確にマッチさせることが可能になります。具体的にいうと、オーバーレイは資産と負債のトラッキング・エラーの縮小に寄与します。金利が上昇すると、負債の現在価値は低下しますが、オーバーレイの価値も低下します。同じく、金利が低下すると、負債の現在価値は上昇し、オーバーレイの価値も上昇します。

 

長期デュレーション・オーバーレイの目標は必ずしもポートフォリオのトラッキング・エラーをゼロにすることではなく、トラッキング・エラーを希望する水準に近づけることにあります。キャッシュフロー・マッチングとも呼ばれる正確なマッチングこそ、最も望ましい選択肢と思われるかもしれませんが、取引コストがかさむことや負債に正確なマッチした固定金利商品が存在しないこと、そして資金が「ロック・アップ」されてしまうという問題があるため、正確なマッチングは最適な選択肢ではありません。多くの基金にとって、資産と負債を適切な形でマッチさせる最初のステップは金利リスクのヘッジです。

 

マーテルオーバーレイの最大のメリットは最初に必要となる資本水準が低く、それゆえ年金基金の既存の資産配分に対する悪影響がきわめて小さい点にあります。オーバーレイを利用することにより、基金のスポンサーは予想される資産収益率を大幅に低下させることなく、負債に対するデュレーション・ミスマッチを縮小させることが可能です。一方、金利オーバーレイの導入により、予想される積立余剰の変動性は低下しますが、これは債券に対する配分の引き上げによって実現可能な変動性の低下よりも小さくなることが一般的です。これは金利オーバーレイを利用する基金の場合、株式やオルタナティブ資産など、負債との相関が低い資産クラスに対する大規模な配分を継続することが多いためです。負債に対するトラッキング・エラーを低下させるために、オーバーレイを使うか、現物商品を使うか、もしくはその2つの組み合わせを利用するかの判断は、予想リターンとリスク低下目標とのトレードオフの問題になります。

 

ロング・デュレーション・オーバーレイを採用することにより、年金基金は事実上、ポートフォリオにレバレッジをかけることになります。株式が50、債券が50で構成されるポートフォリオを保有する基金が、オーバーレイを導入して金利リスクのマッチングを図る場合、これはデュレーションをマッチさせた債券ポートフォリオにすべてを配分しつつ、株式先物を利用して、リスク・エクスポージャーを取ることに近いものとなります。いずれの場合も、基金が保有する資産のドル価値を上回る市場エクスポージャーを取ることになるため、レバレッジが発生しています。そこで、基金がレバレッジをどのように管理するか、そして、スポンサーの状況や目的、資源にレバレッジがどのように適合するかが重要になります。

 

オーバーレイに対して、年金基金はどのようなアプローチを取っているのでしょうか。また、オーバーレイは年金基金の間でどの程度、普及しているのでしょうか。

ムーア現段階で、変更過程にある基金の約75がデュレーション延伸を図る手段として、標準的な現物長期債ポートフォリオへの移行を進めています。PIMCOとコンタクトのある基金のうち、現物債ポートフォリオよりも広がりのあるオーバーレイ戦略の導入を真剣に検討している基金は1015%ではないでしょうか。言うまでもなく、オーバーレイの性質や望ましい金利エクスポージャーの規模、そして全体的戦略はそれぞれのスポンサーによって異なります。そのため、現在はほとんどの年金基金が事実上、学習過程にあるといえます。

 

一般的に、高水準のレバレッジを用いたデュレーション・オーバーレイは、ポートフォリオがより多くの金利エクスポージャーをカバーできるようにするため、もしくは積立状況を改善し、恒久的な対応を採ることが可能な状態にするための一時的な対処方法と考えられるものであり、最終的には現物債でデュレーション・エクスポージャーをカバーして、基金全体のリスクの引き下げが図られます。各基金は自らの目標と、さまざまなイールドカーブ環境における継続的なオーバーレイの管理に対して、その目標がどういう意味を持つのかについて、熟考する必要があります。

 

ほとんどの年金基金にとって、負債の金利エクスポージャーを解消させることは目標を達成するための1つの要素に過ぎず、ポートフォリオのリスク資産部分の分散について、より一層真剣に考え、全体のリスクを引き下げに取り組むことが重要です。オーバーレイは金利リスクを低下させますが、これは単に全体のリスクを低下させるプロセスの1段階に過ぎません。最終的に、年金基金を単独でみた場合、すべてのリスク・エクスポージャーの分散こそ、最も効率よく見返りが得られるものです。

 

マーテルオーバーレイは多くの場合、余剰リスクの引き下げに向けた一歩に過ぎません。基金のスポンサーはまず、現物債市場において、債券に対する既存の配分のデュレーション延伸を図ることが一般的です。これはきわめてシンプルなアプローチであり、レバレッジが発生することや、オーバーレイに伴う煩雑な業務が発生することもなく、スポンサーは「試してみる」ことが可能です。また、これは基金の投資判断はすべて負債の観点から下されるようになるという考え方に、基金内部のスタッフを馴染ませる好機となります。しかし、基金のスポンサーは、債券に対する配分が資産の50%に過ぎないため、現物債市場を通してカバー可能な資産負債のミスマッチ・リスクはわずかであることに、いずれかの時点で気づくことになります(特に、基金加入者の年齢層が相対的に若く、負債がかなり先まで伸びている場合)。そこで、基金のスポンサーは実際にどれだけのミスマッチ・リスクをカバーする必要があるかについて考え始めます。この段階に至ると、残っているかなりの金利リスクの解消する方法として、オーバーレイに注目する基金が増加することになります。

 

基金のスポンサーの関心がほぼ金利リスクだけに集中している段階では、基金のスポンサーにとって意外なことに、株式など、負債との相関が低い資産クラスに対する高い配分を維持しつつ、オーバーレイを使って負債のデュレーション・マッチングを図っても、負債に対する予想トラッキング・エラーを10未満にすることはできません。これは株式などの相関の低いリスク資産によるトラッキング・エラーへの寄与が、金利リスク・ミスマッチによる高相関の寄与を上回ることにあります。それでも、多くの場合、積立不足の基金はヒストリカルなアウトパフォーマンスを理由に、株式リスク・プレミアムを外すことに二の足を踏みます。先ほど、ムーアがご説明した通り、積立比率が改善されれば、リスク水準に不安を感じる基金は債券に対する配分の拡大やリスク資産ポートフォリオ内部における分散の向上に注目し始めることが可能になります。要するに、積立状況が改善されれば、基金はリスクを引き下げることができるというわけです。

 

ロング・デュレーション・オーバーレイの導入に伴う管理コストとリスクについて、説明してください。

ムーアオーバーレイには管理面で考慮すべきいくつかの点がありますが、そのほとんどは金利が上昇した際に、スワップと先物ポジションから発生する潜在的損失をカバーするための流動性の維持に関連しています。言うまでもなく、オーバーレイの主眼はこうしたポジションの損失を同時に発生する負債の現在価値の変化により、相殺することにあります。しかし、短期的にみると、基金は負債の現在価値の変化に伴う利益を実現できない一方、先物やスワップ・ポジションから発生するキャッシュフローを支払うための短期的な流動性が必要になります。つまり、基金は支払義務を履行するために必要な流動性の所在を常に把握しておく必要があるということです。

 

流動性の源泉の適切な維持管理はオーバーレイの導入にあたって重要になる問題であり、基金のスポンサーが通常、対処しているものとは異なる手続きが必要になります。こうした点に内部で対応している基金もあれば、オーバーレイを管理する外部のマネージャーを採用している基金もあります。内部でオーバーレイを管理しようとする基金は、デリバティブ・ポジションの時価評価や担保の出し入れが可能かどうかなどの点を検討します。こうした点はきわめて重要な要件です。デリバティブ契約の価値や必要な担保の額といった要素は、金利変動が激しくなると、大きく変化する可能性があるためです。また、オーバーレイを内部で管理するか、外部に委託するかにかかわらず、スポンサーには「もしも」の事態を想定した緊急基金が必要になります。金利が急激に上昇した場合に備え、オーバーレイを支えるために必要になることが想定される緊急時の流動性の源泉として、外部からのクレジット・ラインを確保するか、資産ポートフォリオ内部でその源泉を特定し、年金基金がどう対処するかを明確に規定した青写真を用意する必要があります。

 

スポンサーは基金外部でどういった流動性の源泉を確保すべきか、そして、内部に流動性の源泉を求める場合には、それに伴ってどのような問題が発生するか、を明確にする必要があります。例として、基金資産外の流動性サービスによる支援は基金に対する拠出として扱われるのか、もしくはオーバーレイ戦略を支えるための一時的な方策とされるために必要なある種のメカニズムがあるのか、といった問題があります。

 

こうしたリスクはすべて管理可能ですが、それにはオーバーレイの導入に際して十分な検討と準備が必要になります。計画が杜撰であれば、市場に圧力がかかった際、スポンサーは基金の資産ポートフォリオの核となる部分を取り崩して追加的流動性を確保せざるを得なくなる可能性もあります。

 

こうした管理上の諸問題への対応が優れている基金はあるのでしょうか。基金の規模が問題になるのでしょうか。

マーテル規模が重要になる場合もあります。規模の大きな基金ほど、内部に多くの資源を有しており、デリバティブの管理とサポートに付随する問題に対する理解が進んでいる場合が多くなります。小規模基金の場合、オーバーレイを効率的に導入するために必要になる、スタッフとテクノロジーおよびその他の資源の構成が妥当とはいえない場合があります。

 

十分な体制が整備されている基金とそうではない基金を分けるもう1つの境界線となるのは、経験と規律という単純な問題です。PIMCOはオーバーレイの強みが「万事控え目な」状況で発揮されると考えています。潤沢な流動性を有する基金が比較的慎重で、デュレーション延伸に対して警戒感が強く、現実的な目標を掲げている場合、オーバーレイの導入と管理に成功する可能性が高いといえます。一方で、懸念されるのは積立不足の基金やその他のリスクに直面している基金にとっての特効薬のような効果をオーバーレイに求める場合です。

 

年金基金が独自にオーバーレイを管理するのではなく、外部のマネージャーを採用する場合、どのような検討項目が考えられるでしょうか。

ムーアオーバーレイの導入を検討する年金基金は「バンドル型」アプローチと「非バンドル型アプローチ」のどちらかを選択することが一般的です。バンドル型アプローチの場合、外部の委託先1社が先物ポジションと担保ポジション、その他、運営上必要になる項目をすべて管理します。一方、非バンドル型アプローチの場合、オーバーレイに関連したこうした各種要素は社内や複数のマネージャーにより、別々に管理されます。

 

バンドル型アプローチの利点の1つはあらゆる業務が一箇所に集約され、基金は金利ポジションのみに集中することができる点です。オーバーレイのデュレーションと規模は基金のニーズに合わせて微調整可能であり、管理面に対する必要な調整は明確に規定されます。オーバーレイの各種部分を複数のマネージャーが管理する場合に比べて、バンドル型のアプローチは運営上の簡潔さと透明性が高くなります。

 

マーテルバンドル型アプローチの主要な長所の1つに挙げることができる点として、オーバーレイ・マネージャーが担保に対して直接のアクセスが可能であり、担保ポートフォリオの流動性を監視・調整し、管理面のリスクをチェックできることがあります。さらに、対現物債ポートフォリオでみた目標デュレーションに対するオーバーレイの相対的な寄与度は、現物債市場やスワップ市場における相対価値機会を有効活用して、調整することが可能です。非バンドル型アプローチの場合、オーバーレイ・マネージャーは維持されている担保や流動性の水準を知ることができない可能性があります。オーバーレイ・ポジションのマネージャーは払い出しの必要性を満たすに十分な流動性が確保されていることに100%確信が持てず、市場に圧力がかかる場面では先を争って資金確保に走る可能性があります。

 

オーバーレイにおけるデュレーション・エクスポージャーはスワップや先物で取得可能とのことですが、この2つのアプローチにはどのような違いがあるのでしょうか。

ムーアスワップと先物の違いについて考える最も簡単な方法の1つは、リーマン・ブラザーズ総合債券インデックスにおけるモーゲージ債と社債の間のトレードオフに関する多くの人々の認識と似ています。モーゲージ債の場合、投資家は期限前償還オプションを売ること、すなわち借手に対し、借手が希望するタイミングでローンを期限前返済する権利を与えることにより、追加スプレッドを得ます。基本的に、ファニーメイやフレーディマックなどの政府機関が発行するモーゲージ債にはトリプルAの格付が付与されており、重大なクレジット・リスクはないと考えられます。つまり、モーゲージ債の追加スプレッドはそのオプション性、すなわち最終償還前に期限前返済が発生する可能性から生じるものです。先物でも、モーゲージ債に似たオプション性がみられます。先物の場合、流動性を維持するため、先物コントラクトに対して複数の現物債の受渡が可能とされています。例えば、10年の米国債先物の場合、売手は残存期間が7年以上10年未満の米国債の中から希望する銘柄を引き渡すことが可能です。各時点で、それぞれの限月には「受渡最割安」とされる銘柄が存在しますが、受渡最割安銘柄はカーブの形状と金利変動の方向性によって変化します。そのため、先物契約には、ある程度の負のコンベクシティが発生します。つまり、金利が低下する際には現物債ほどデュレーションが延伸せず、金利が上昇する際のデュレーション短縮も現物債に比べて小幅にとどまります。これは基本的に、モーゲージ債の期限前償還オプションに近いものです。

 

金利スワップ市場の場合、スワップは投資家とブローカー/ディーラーとの間の双務契約です。契約の履行は支払を実行するカウンターパーティーの能力に左右されるため、スワップは企業クレジットの分野に近いといえます。スワップでは大幅な負のコンベクシティが発生しないものの、米国債利回りと完全に連動するわけではありません。それは常にある程度のクレジット・リスクが存在するためであり、このクレジット・リスクはカウンターパーティーの財務状況やクレジットに対するその時点の市場のスタンス、そしてデフォルト確率を変動させる可能性のあるその他の要因によって変化する可能性があります。

 

そのため、長期のデュレーション・エクスポージャーをスワップで取るか、米国債先物で取るかに関する判断を下すにあたっては、スワップ・スプレッドの水準と先物市場に組み込まれた負のコンベクシティの間のトレードオフに注目する必要があります。これは2