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Investment Outlook
ウィリアム・H・グロース | 2006年1月
何よりの贈り物
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今年、サンタクロースはクリスマスに希望通りのプレゼントを持ってきてくれました。本当のことをいうと、予想以上のプレゼントでした。6歳の子供には無理でしょうが、61歳の私の年齢に近い方ならば、人生の無駄を省いてシンプルに生きようとする私の気持ちを理解していただけることでしょう。今後あの忌まわしいクリスマスパーティーに私を招待する友人がいれば、その人間はもう友人とは思わないと、このInvestment Outlook上で宣言したのはわずか5年前のことです。それから1年ほど経って、私は同じくこのInvestment Outlookで、クリスマスに私が欲しいものはクリスマスを心から祝うことであり、プレゼントをもらえるのであれば、櫛が欲しいというメッセージを家族に送ろうとしました。私が欲しかったのは櫛であり、シャツやスポーツコート、読むことのない本ではありませんでした。たとえその値段が50セントだったとしても、何ら問題はありません。私は髪の毛を梳かす櫛が欲しいのであって、出席しない翌年のクリスマスパーティーのための衣装は必要ありません。しかし、そんなことに耳を貸さないのが私の家族です。今年もリビングルームの床には、サンタや雪だるまやトナカイが描かれた包装紙に厳重に包まれた数多くのプレゼントが置かれており、それを1つずつ開けていきました。すべてのプレゼントを開けたところで、私にとって一番嬉しかったプレゼントが何であったか、お分かりになるでしょうか。それは普通の読書用メガネでした。思わず、「なんと有難い、これで新聞を読むことができる!」という言葉が口をついて出てきました。今年も過剰な包装と有り余るほどの贈り物があったものの、このメガネのおかげで私にとっては良いクリスマスになりました。来年は、1人につきプレゼント1個の方針を徹底しようと思っています。そして、櫛や読書用メガネのような良いプレゼントが増えることを期待しています。靴下もいいかもしれません。何しろ、私の場合、出勤する際に履いている靴下に穴が開いていることを妻に指摘されるのが日常茶飯事なものですから。

クリスマスから新年にかけて、米国のイールドカーブの形状が水平、もしくは右肩下がりになったことと、それが景気と金融市場に与える影響について、多くの報道がなされ、さまざまな意見が交わされました。過去6回の景気後退のうち5回では、景気後退が始まる前にイールドカーブの形状が水平になったということです。あるいは、イールドカーブの形状が水平になった6回のうち、その後に景気後退に陥ったことが5回あったという分析だったかもしれません。いずれにしても、両者の間には強い結びつきがあります。これにはイールドカーブの短期セクターを中心に、カーブ全体で借入コストを上昇させることによって、将来の成長にブレーキをかけようとするFRBの大幅な利上げが反映されています。しかし、今回の利上げ局面では、「謎」を始めとする諸要因により、5年債と10年債の利回りはあまり上昇しておらず、そのためにイールドカーブが水平の形状を示していても、以前の利上げ局面ほどの引き締め効果をもたないと指摘する声も少なくありません。これに対して、先月号のInvestment Outlookでは、こうした見解を否定し得る私とPIMCOが見つけ出した「秘密」を披露しました。4.25%の水準にある現在のFF金利と、4.4%弱の水準でほぼ水平の形状となった中長期金利は、一見するよりも引き締め的であるというのが私たちの考えです。PIMCOが考える「世界的な総需要の不足」やバーナンキ新議長が唱える「世界的な貯蓄過剰」がこれまでの低金利をもたらし、国内投資支出が低迷する一方、住宅資産バブルを持続させ、それが消費を押し上げてきた主因であるといえます。金利上昇の影響が景気に顕れるには12~18ヵ月のタイムラグがあるため、2006年には景気が減速し成長率がおそらく2%程度になること、そして、FF金利とイールドカーブの水準が4.5%程度で水平になることはほぼ間違いないと思えたのです。

引き締め局面および平坦なイールドカーブと景気減速との間で過去にみられたこの12~18ヵ月のタイムラグこそ、数多くのアナリストを混乱させ、現在の利回りが依然として景気刺激的であり、FRBは引き続き大幅な利上げを継続するという誤った結論に導いた元凶です。現実に、利回りの上昇が住宅市場や住宅価値の現金化、企業の投資サイクルに影響を及ぼすにはそれほどの長い期間が必要であるのにもかかわらず、多くのエコノミストは、10を数えるように言われた患者が5まで来たところで意識を失ってしまう手術前の麻酔と同じように、金利上昇も短期間で効果が現れると思い込んでしまうものです。しかし、実際にはそれほど短期間で利上げの効果が現れると期待することはできません。FRBはそれを理解しています。しかし、予見可能な将来における抑制されたインフレとそれを実現するに十分な景気の沈静化を達成するため、金利の引き上げ幅が過剰となり、長短金利が逆転するリスクをあえて冒そうとすることも少なくありません。景気の減速ペースが速すぎると思われる場合、短期金利はいつでもすぐに引き下げることが可能であり、実際に、最終の利上げから平均で6ヵ月以内に利下げへの転換がみられます。

債券を保有する投資家にとって、重要なのはタイムラグだけではありません。同じように、金利水準も重要です。それゆえ、先月号のInvestment Outlookでは現在の金利水準が引き締め効果を得るに十分だと主張する一方で、「謎」があるために、私のような考え方に対して、多くの異論があることは理解できると申し上げたわけです。そこで、今回は少々遅くなりましたが、皆様へのクリスマス・プレゼントとして、債券市場のベア局面は終わったとする私の主張を裏付けるものとなる、もう1つの市場「タイミング」を計るツールをご紹介しましょう。

まず、過去数年の間に、いずれかの時点で5年の金利スワップを購入、すなわち固定金利をレシーブしたと想定してください。債券トレーディング・ルームに一日中張り付いているわけではない方にとって、この取引は5年の固定利付債に投資すると同時に、3ヵ月LIBORでこの債券を購入するために必要な資金を調達したことを意味しており、調達金利となる3ヵ月LIBORはFRBがFF金利を引き上げるたびに上昇します。ここで注目していただきたいのは、5年物スワップの時価の変動ではなく、調達金利(3ヵ月LIBOR)が上昇すると、それに合わせて5年物スワップの保有コストが上昇する点です。短期金利が大幅に低く、イールドカーブの傾斜が右肩上がりであった状態で購入した5年物スワップはプラスのキャリーを生み出し、それにより、損益計算書の観点からみた場合、このスワップのポジションを保有している投資家は「利益」を手にします。しかし、短期金利の上昇と平坦なイールドカーブによって、キャリーが縮小もしくは消滅すると、投資家の利益も消えてしまいます。

この5年物スワップを例に使った考え方は重要です。それはこの考え方が米国経済の運営にも通じるものがあるためです。米国債券市場全体の平均残存期間は5年程度であり、これを5年物固定金利スワップに例えることができます。これは、過去数年の間に資金を借り入れ、その資金で先ほどの5年物スワップの例と同様に、住宅などの資産を購入してきた企業や住宅所有者、消費者などにとって、平坦なイールドカーブが利益の縮小をもたらしていることを意味します。先ほどのスワップの例では、変動金利の3ヵ月LIBORで5年物スワップをファイナンスしましたが、現実世界における変動金利ローンの例を思い浮かべてください。短期金利の上昇に伴い、変動金利ローンのコストが上昇すると、消費に回すことが可能な所得が減少し始めます。そして変動金利ローンの利率が高くなり過ぎると、外食や映画を控えたり、外国での休暇をあきらめることになります。このようにして、景気は減速することになります。

それでは、どのようにすれば、こうしたプロセスを債券市場のタイミング・ツールに転換できるのでしょうか。チャート1は利上げが十分であることを示すPIMCOが利用している一連のグラフの1つです。このグラフは変動短期金利の上昇により、住宅所有者や5年物スワップを保有する投資家に加え、何よりも経済自体が「もう勘弁してくれ」と叫ぶ地点を示しています。この例の場合でいくと、過去5年間の米国中期債の平均発行コストに並ぶ水準までFF金利が上昇し、両者のスプレッドがゼロになるところが、まさにその地点になります。

念のために申し上げると、これは通常いわれる水平な形状のイールドカーブのことではありません。通常、イールドカーブの形状が水平であるという場合には、現在の短期金利を現在の5年債や10年債の利回りと比較しています。しかし、このチャートで比較しているのは足元の短期金利と米国中期債の平均「クーポン」でです。この平均クーポンはその時点のコストではなく、債券に内包された平均コストという概念であり、足元の利回りに比べて、信頼性に富み、経済の痛み、すなわち引き締めの度合いを正確に示すものです。チャートでは示していませんが、足元の市場金利によって測定した平坦なイールドカーブは1995年初頭にも出現しています。しかし、この時にはそれが景気後退につながることなく、景気は減速するにとどまりました。これはチャート1が示す通りです。言い換えると、私が今回紹介している指標は1995年に景気が穏やかに減速することを示していたのであり、実際の状況はその通りになったわけです。足元の金利水準によって測定した平坦なイールドカーブからは、かなり極端な状態が予想されましたが、その予想が現実のものとなることはありませんでした。このように、チャート1に示した債券に内包されたコスト指標はより信頼性が高いことが実証されています。

いまひとつ合点がいかないという方は、チャート1に示した線が底入れするか、ゼロをつけるまでに、債券利回りは天井を打っている、つまりベア相場が終わっているという事実に目を向けてください。ベア相場の終着点となった2000年1月、1994年12月、1989年3月、1984年5月は、このグラフの線がいずれも0、もしくはその近くにあり、十分に引き上げられたFF金利により、景気が減速し、債券市場のベア相場を終わらせたことを示しています。1980年代初頭以前に遡った場合でも、同様の判断を下すことができますが、ボルカー前議長率いるFRBは加速するインフレに対抗するために、極端な引き締め政策を採らざるを得なかったため、ブレが大きくなっています。

先月号のInvestment Outlookで示した「秘密」と今月号の「何よりの贈り物」を考え合わせると、債券市場の利回りはすでに天井を打っており、近いうちに利上げも打ち止めになり、2006年の景気は減速すると考えられます。FRBが4.5%を上回る水準にFF金利を引き上げ、長短金利を逆転させた場合には景気後退に陥る可能性が高まるでしょう。注意深い読者は、チャート1の現在のデータ・ポイントが単に債券市場のベア相場の終着点を示しているだけでなく、それから12~18ヵ月後に発生する景気後退を示唆していることに気づくことでしょう。おそらくその通りになるでしょう。それを決定づける最大の要因は米国の住宅市場の状態と、言うまでもなく、世界経済、特にアジア経済の状況になります。じっくりと観察することにしましょう。しかし、とりあえず今のところは、読者の皆様が新たなタイミング指標が債券市場にとって最悪期は過ぎたことを物語っていることと、これまでもまた今後も信頼性の点で心強い指標を得たことによって、安心していただければ幸いです。今年が債券投資家の皆様にとって良い年になりますように。

ウィリアム・H・グロース
マネージング・ディレクター

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