水と油のように、政治家と金融市場は交じり合うことがありません。過去の歴史を振り返ってみても、それを証明する有名な例をいくつか思い起こすことができます。たとえば、1896年の大統領選挙に出馬したウィリアム・ジェニング・ブライアンはウォール街の「金の十字架」と対決したことで知られています。それから数10年後にフランクリン・ルーズベルトは「金貸しどもを神殿から叩き出す」と強い調子で語りました。最近の例としては、ビル・クリントン前大統領を挙げることができます。ただ時代の変化を感じされるのは、彼がブライアンやルーズベルトのように聖書をもじった言葉を使うのではなく、より低俗な言葉で、彼の予算案を「*@?>>!な債券トレーダーどもの好きにはさせない」と約束したことです。過去30年余年に渡り、*@?>>!な債券トレーディングを生活の糧としてきた私には、彼が何を言わんとしたのかが分かる気がします。本当のことを言うと、「*@?>>!」の代りに「xxxx」と言いたいところですが。ジョージ・W・ブッシュ大統領については、個人的に強い尊敬の念を抱くことはできないものの、クリントン時代に比べて、大統領と債券市場との関係が遥かに良好であることは確かです。これはブッシュ大統領が精力的に民主主義のグローバリゼーションを推進してきているからであり、恐らく彼自身は”Bund(ブンズ債)”と”bond(債券)”の違いも分からないでしょうが、少なくとも過去6年間の間、民主主義及びグローバルな地球全体を2本の柱とした彼の哲学が金融市場で幅を利かせてきたことは事実です。実際にベルリンの壁が崩壊して以来、取引はかつてないペースで活発化しており、さらにはそれに歩調を合わせるかのように進んできた金融におけるBRICsの台頭により、わずか10年前には25兆ドルであった世界の債券株式市場の時価総額は現在60兆ドルを超えていると推計されます。(ブッシュ大統領が世界の複数の紛争地域で抵抗に直面しているように)世界の金融市場では「民主主義」が完全に浸透するには至っていないものの、米国では想像を超えた拡大を遂げました。CDOやCDS、CDX、CLO、こうした商品の各トランシェ、そして、突飛な派生型商品が無数に登場する他国に類を見ない、驚くべきモーゲージ債市場は、米国の一般市民が、産業界の中核を担う企業が支払う水準に近い金利を要求することを後押ししてきた力を示す一例であると言えます。私は、庶民のための政治を標榜した19世紀のジャクソン大統領ならば、たとえ彼の政権が「*@?>>!な債券トレーダー」の好きにされたとしても、それを善しとしたのではないかと感じています。
自分の仕事を政治と結びつけても私に表面的な利益は全くありませんが、それでもあえてそうした理由は、今日の新しい、また、恐らくは以前よりも改善された現在の債券市場に関する分析の基盤を提示するとともに、その中で変わりつつあるPIMCOの役割について、ご説明することにあります。グローバリゼーションと、それに伴うクレジットの民主化が生み出した競争の激化とリターンの低下に見舞われるなか、当社がこれまでと同じように自らの道を歩き続けることができるのかどうか疑問に思われているお客様もいることでしょう。現在のかかる状況からは恐ろしい怪物のようなヘッジファンドのイメージが想起され、恐らくは「私達はどのようにして彼らに対抗していくのだろうか」という、もっともな疑問も沸いてくることでしょう。ヘッジファンドは手数料収入によって極めて優秀な人材をかき集めていると言われ、レバレッジを活用しながら、多くの市場を踏み荒らしています。伝統的な債券マネージャーはこうしたやり方をしないものです。しかし、たとえグローバル化の進む金融の世界の中で、ヘッジファンドが最も凶暴な存在であるとしても、新たな侵略者はヘッジファンドだけというわけではありません。グローバリゼーションの奇跡のなかで、有名になると同時に、成功を収めている外国中央銀行は、新たな金融市場における中心的プレーヤーの象徴的存在です。外国中銀が一斉に大きく動くことはあまりないかもしれませんが、それでも巨象のような彼らの存在により、債券市場からは以前の「豊かなアルファをもたらす」土壌が失われ、踏み荒らされ、結果として現在の利回り水準は世界的にも、かつての水準と比ぶべくもない低さとなっています。分析をさらに難しくさせているのが、外国中銀による投資判断は多くの場合「非経済的」であるということです。つまり、債券投資判断の基準として、外国の金利水準よりも自国内の動向に力点が置かれているということです。さらに、市場では、収益と利回りを求める外国の個人投資家がヘッジファンドや機関投資家と同じように、円キャリー取引を行っています。これは日本の0%の金利で借り入れた資金を利回りが2桁のエマージング債券・エマージング通貨や、利回りが1桁後半のスプレッド商品に投資し、さらには伝統的な米国債の、僅か400~500bps程度のピックアップで「妥協」しようという取引です。ビル・クリントン氏が悪態をついた債券マネージャーのユニバースは過去5年で一変しました。きっと今であれば、見渡す限りほぼすべての諸外国の機関や何百万人という外国の市民が債券トレーダーになっていると考えられる状況を罵るに違いありません。銀行や保険会社、年金基金、ミューチュアル・ファンド、そして資産運用会社など、こうした人々の資金を運用している昔からの債券トレーディング大手は、この新たな勢力に取って代わられるか、少なくともこうした勢力に主役の座を奪われ、「ベンチ」を暖めています。しかし、一軍か二軍かに関わらず、私が言わんとしていることは、かつては僅かな参加者だけがいる比較的のんびりとしていた場所に、現在は数多くの参加者が存在するようになったということです。単に試合に出るだけでなく、引き続きアルファを生み出すことができることを証明するために、熾烈な競争が繰り広げられているのです。
この結果として、最終的なゲームのスコア、すなわちトータル・リターンは以前に比べて大幅に低くなりました。これは単に積極果敢な攻撃によるものではなく、結果として、それが謎であるか、ないかにかかわらず、世界的な金利低下とともにボールから多くの空気が抜けてしまった、すなわち利回りとアルファが低下してしまったためです。債券マネージャーや資産運用会社(PIMCOはどちらの定義にも当てはまります)の類は世界の主要市場において、実質金利が2%以上に上昇しない状態に直面しており、あらゆる市場の利回りスプレッドは将来の債券のリターンが最大でも5~6%程度に留まることを物語っています。株式についても、成長率の高い輸出主導の経済を除けば、見通しはそれほど明るいわけではありません。商品と不動産は言うまでもなく、成長率とインフレ率の影響を当然に強く受ける資産クラスであり、高めのリスク及び商品の場合にはBRICsの成長により、長期的に優れたリターンを生むであろうと考えられます。しかし、私がここで申し上げたいのは、取引における民主化とグローバリゼーションによって、クレジットのスプレッドは縮小し、投資家が獲得できる将来のリターンは低下しているということです。そして、依然として利回りやリターンに貪欲な投資家がさらに増えていることにより、先行きがより困難なものになろうとしています。
「グロースよ、言いたいことは分かったが、今後PIMCOはどういう形で、こうした新たな*@?>>な債券トレーダーと競い合っていくのか」と思われる方もいることでしょう。私はこうした状況に対し、90年代後半のウォーレン・バフェット氏と同じように、一歩引いたアプローチを採ろうと思います。「ドットコム企業?放っておけ、そのうち、ほとんどがいなくなるのだから」。彼はこう言いました。これはひとつに、バフェット氏がリスクと価格水準が共に高い市場の中から、あえてアマゾンやグーグルのようなわずかな優良企業を探し出す作業に取り組む気が無かったからです。そして、その結果は誰もが知る通りです。しかし、かつてのITバブルとは異なり、クレジットの民主化とグローバリゼーションが続く限り、現在の低い水準の国債利回りは継続するでしょう。こうした傾向は、米国の貿易赤字とアジアの重商主義に支えられた成長率の押し上げが続く限り、そして資本と労働力の代替が世界の成長を支え続ける限り、存続する可能性が高いものです。そのため、バフェット氏がドットコム企業に手を出さなかったような形で、債券への投資を全面的に見合わせることは、利益をもたらす対応とは思えません。結局のところ、バフェット氏も90年代終盤に多くの株式を保有していたわけですから。PIMCOはグローバリゼーション及び富と余剰資金の再分配に関する新たな現実を確かに受け止めてはいますが、たとえそれを受け入れたにしても、ドットコム企業の高い株価に対するバフェット氏の判断に通じる状況が債券の世界にも存在します。米国政府機関が保証するファニーメイのモーゲージ債をほぼすべてのエマージング債よりも高い利回りで買うことが可能だとした場合、それはクレジットの価格形成から合理性が失われていることを意味します。現在、ほとんどすべてのリスクとそれに伴う「プレミアム」は理屈に合わないほど低くなっていますが、グリーンスパン前FRB議長が以前警告した通り、過去の歴史を振り返ると、低水準のリスク・プレミアムが長期にわたって続いた場合で、その後の結果にうまく対処できたことはないのです。実際、「長期にわたる相対的な安定は、それが永遠に続くのではないかとう非現実的な期待を生み出し、それが金融の過剰と経済的ストレスにつながることも多い」と前議長は言っています。
市場参加者、そして私を含め、*@?>>!な債券トレーダーは、リスクプレミアムは、より目につきやすいクレジットだけでなく、流動性やイールドカーブ、オプションなどにもプレミアムがあることを、忘れないようにする必要があります。アルファの獲得とは、どのプレミアムをどのタイミングでオーバーウェイトにするか、もしくはアンダーウェイトにするかを選択する仕事であると言えます。無リスクの米国国債に対するアウトパフォーマンスやインデックス対比でのアルファの獲得は、資産に付随するリスクを、リスク・プレミアムとともに受け入れることによりもたらされることが多いものです。しかし今やグリーンスパン氏が警告し、バフェット氏がドットコム企業について語ったように、あらゆるプレミアムが圧縮されており、そのために2006年、そして恐らくはその先も、戦略的なアルファは、ポートフォリオからプレミアムやキャリー取引の多くを排除することにより、もたらされる可能性が高くなります。言うまでもなく、不気味な怪獣であるヘッジファンドは割高な水準にある証券を回避することが可能なだけでなく、ショートすることも可能です。しかし、敢えて申し上げますと、PIMCOも同じことができるのです!オプションやクレジット、イールドカーブ、流動性など、各種のプレミアムは、購入・回避・売却が可能です。ただ、お客様のガイドライン及びリスク・テイクに対する当社の慎重な姿勢により、当社は火を吐く怪物にはなっていないし、なろうとしてはいないのです。もっとも、広く喧伝されるヘッジファンドの柔軟性については、PIMCOはずっと以前から備えてきています。PIMCOは常に他社に先駆けて、モーゲージ債への投資、先物や株式インデックス・デリバティブ商品の活用、グローバル投資、TIPSの組み入れ、商品先物の活用及びこれらの商品全体を対象としたアセット・アロケーション等を行ってきましたし、多少の議論の余地があるとしても、少なくともこれらを先駆者として実施してきたという見方が的外れでないことは間違いありません。別に当社の「売り」がレバレッジにあるわけではありませんが、お客様のガイドラインによる制約は別として、セクターやリスク配分においてイノベーションが持続しないと予想する理由はありませんし、レバレッジを活用したイノベーティブ、革新的な発想が持続しないとする理由もありません。標準的な債券投資家は、インデックスの水準近くで運用することを重視し、インデックスからの乖離が大きくなると警戒心を強めます。しかし、現在のように運用リターンの水準が低い環境になると、投資家に害をなすのは、まさにこうした警戒心であり、インデックスなのです。
これはデリケートな話題ですが、常識的に考えて、高価格で低リスク・プレミアムのインデックス関連商品をその平均水準で買って大勢に迎合するよりも、それらの商品を買わない方がリスクが低いと思われます。資産運用における成功の鍵は、多くの人々の動きがうねりとなって最高潮に達するまで波に乗って、それが水面に砕け散るまで、それに乗っていたかどうかにかかっています。リスク資産とそのリターンが急低下し常態に戻る時期を予測することは難しいかもしれませんが、いずれにしても、グリーンスパン氏が指摘した通り、こうした期間がハッピーエンドで幕を閉じたことはこれまでないのです。もし、投資家が、この迎えるべき終末までの間、十分なリターンを取れていないのであれば、投資家はこれまでの考え方を再考するべき、と思われます。言い換えると終末に向おうとしているのであれば、それに見合うリターンが取れて然るべきでしょうが、今日、ほとんどの債券投資家は十分なリターンを取れていません。私達が向かう先が煉獄かどうかは、神がビル・クリントンやルーズベルト、ウィリアム・ジェニング・ブライアンを真似るかどうかにかかっていると言えます。しかし、優秀な債券マネージャーにとって、ポートフォリオをインデックス水準から大きく乖離させたり、過大評価されている低キャリー証券をポートフォリオから排除することは、現在の、踏みにじられ「アルファが育たなくなった」土壌に対する適切な対応であると思われます。
前段の低キャリー証券ポートフォリオという表現は各国にあてはまるものの、主として米国について言ったものです。それは、2004年中盤以降、円キャリー取引による資金が向かった先はまず米国だからです。そして、それを可能にしたのが日米短期金利差の拡大と、対ドルで円の大幅な上昇を容認しないとする日銀の暗黙の保証でした。この一方向への動きは円での借入や日本からの大量の資金流出を促し、そうした資金は何がしかのリターンを生む、米国のあらゆる資産に向かいました。そして、先ほど取り上げたクレジットの民主化がこうした動きを強く後押ししました。しかし、現在ではFRBが利上げをほぼ終えようとする一方で、日銀は量的緩和を解除し、独自の利上げ局面に向かうことを警告していることから、キャリー取引は危機に直面しています。さらに重要なことに、円やその他すべての通貨に対して、現在のドルの水準が危うくなっています。世界の実質金利が収斂するにつれ、為替価値には、比較対象となる経済の輸出潜在力が強く影響するようになるはずであり、さらに言うと、この輸出潜在力こそ、米国が決定的に劣っているところです。一方、言うまでもなく日本は世界有数の輸出国です。またそれに比べると認知度は低いものの、ドイツは現在、世界市場におけるシェア獲得を図るユーロ圏の中心として機能しています。中国における輸出製品の生産が拡大することも疑いの余地がありません。こうした状況から判断すると、製造業の中核部分で空洞化が進んでいる米国は今後、通貨のバリュエーションにおいて「負け組」になることはほぼ間違いないと思われます。率直に言いますと、キャリーの縮小と共にドルは下落するものと思われます。
ドルと他通貨の問題を持ち出した理由は、ここから債券市場と資産市場において新たな参加者が登場したことと、こうした参加者が過去数年間、高水準のアルファを生む土壌を踏み荒らしてきたことという、今回の中心テーマに戻ることにあります。割高なバリュエーションを踏まえて、債券インデックスとベンチマークの特定部分を避けることを目指した戦略を考えた場合、現在の市場環境では長期資産に匹敵する利回りのあるキャッシュ、もしくはキャッシュに近い商品が魅力的であるとの結論が得られます。そして、ここで私がキャッシュに近い商品として想定しているのは、ユーロドル先物の2007年と2008年の限月です。こうした限月はFRBが緩和に転換することにより、利益を生むと考えられます。短期のユーロドル先物は必ずしもポートフォリオのデュレーション短縮のためのものではなく、現在の市場において、競争力があると呼べる以上の利回りや将来のリターンを提供しており、それだからこそ、ポートフォリオに組み入れるべきだと考えているのです。キャッシュがインデックスに含まれていないことを理由に、こうした考えを否定する資産運用会社は重大な過ちを犯していると言えます。しかし、ユーロドル先物に投資するか、長期債に投資するか、もしくは円に投資するか、ドルに投資するかに関わりなく、今回の分析の目的は2006年の当社のポートフォリオ戦略を説明することではありません。この分析の目的は、過去にあったリスク・プレミアムを失ってしまった世界の債券市場において、これまでとは異なるアプローチを検討する必要があることを強調することにあります。バリー・ゴールドウォーター元上院議員の言葉をもじって言うと、インデックスに含まれない比較的安全性の高い証券で極端なポジションを取ることは悪ではないが、きわめて過大評価されているインデックスにおける安全なポジションは善とはならないということです。暗に示唆した通り、問題の原因は無理なインデックス化にあり、おそらくは当社やお客様を含め、ベンチマークに忠実であり、ベンチマークに対する相対パフォーマンスを競っているすべての人は誤りを犯しているのだと推察されます。
こう考えると、必然的に現在注目を浴びている「絶対」リターンというテーマが浮上し、ヘッジファンドの華々しい台頭と巨大化、及び何故それが起こったかという話題に戻ることになります。ある意味で、ヘッジファンド現象と絶対リターンへの注目は、アルファが欠乏した世界においてアルファを作り出そうとする試みであると言えます。つまり、この試みは、絶対リターンが、あらゆる投資対象を網羅した総合インデックスに対する高いアルファ、またはスプレッドを最終的にもたらすものであるという考えを前提としたものです。しかし、ヘッジファンドが要求する高い手数料を支払っても、そうした絶対的アルファの達成が可能かどうかには重大な疑問があり、私もバフェット氏も、そしてそれ以外の多くの人がここ数年この問題を取り上げています。しかし、従来の発想に捉われたマネー・マネージャーのメンタリティと、プラン・スポンサーのインデックス・ガイドラインの厳しい規定は、より柔軟に分散戦略に注目する視点に取って代わられ、それに伴い、従来あったインデックスの中間値に近づけようとする束縛からは解放されるものと考えられます。大半のインデックスが著しく割高な水準にあり、「アルファ不足」だとすると、実り豊かな地を求めてアフリカの大地を移動する賢明なる象たちと同じような決断を下さない限り、私たちにはどのような将来が待ち受けていると考えられるでしょうか。私が強く指摘してきた通り、こうした移行は必ずしも絶対リスクの上昇を伴うものではありません。投資家にとって、「キャッシュに近い商品」は絶対リスクではなく、ベンチマークに対する相対リスクでしかありません。そして、そのベンチマークの利回りとリターンは正当化できない水準まで低下しているのです。つまり私が言わんとすることは、将来の成果を手にするためには、マネー・マネージャーやプラン・スポンサーが現在の市場において、絶対投資における(顕著に)低いリスクを受け入れ、それによりインデックス以外のリスクを積極的に許容する必要があるということです。そうすることにより、最終的に投資家が手にする絶対リターンは高まるはずであり、さらにリターンのボラティリティは現実に大きく低下することでしょう。
同じような比較は、ドル建て資産とドル以外の通貨建て資産について注目する際にも適用することができ、それは投資家が利用しているインデックスが米国中心のものであるか、グローバルなものであるかに関係ありません。米ドルは大幅に過大評価されているため、インデックスのリスクを再現するためにインデックスと同じ金額のドル建て資産を全面的に採用することは、グローバルな絶対的購買力の観点からすると、過剰なリスクを取っていると考えることができます。国内インデックスに含まれていない外国通貨はベータ値の高い資産であるという事実は、ポートフォリオ・マネージャーやプラン・スポンサーが積極的に取ろうとする非ドル建てエクスポージャーの金額を抑制することになります。しかし私が思うに、長期的な真のリスクはドルを保有することにあり、そうだとすると世界的な購買力からみた絶対リターンはドルを保有することにより悪化すると考えられます。
今日の*@?>>!な債券トレーダーはジレンマに直面しています。競争の激化と新たに大量の資金を手に買いに入る非経済的主体が利回り、トータル・リターン、そして将来生み出されるアルファへの期待を変化させたのです。こうした状況とどう対峙していくのかという疑問が提起され、その答えを見つけなくてはなりません。PIMCOはその答えとして、目先、債券市場から全面的に撤退することは非現実的であると考えます。その代わり、非経済的主体である中央銀行が引き続き支配的な力を持つ環境においては、大半のリスク資産の保有を戦略的に回避することを御提案します。この基盤となっているのは、そうした資産を保有することにより投資家が手にするリターンが適正な水準ではなくなっているという事実と、最終的に現在の低いリスク・プレミアム環境が平穏なまま終わることはないというグリーンスパン氏の想定です。そして、当社は現時点で、標準的なインデックス資産をキャッシュに近い資産とドル以外の通貨に入替ることをお薦めしています。インデックスから乖離したポジションを適度な規模で保有することにより、予想リスクが低下すると共に、最終的に高いリターンが得られることでしょう。人間の場合と同じように、過去に優れた成果をあげた資産であっても、過度に割高な水準まで押し上げられると、悪いことが起きるものです。プラスではあっても、減少している相対的アルファ・リターンを確保するために、インデックスに対して盲目的に固執することは、おそらく現在のジレンマに対する賢明な対応とはいえないでしょう。インデックスによる束縛を認識し、最終的にそれを避けることで、実際に、リターンの向上とリスクの低下を実現することができるのです。当社はそうした方向に進むことを、お客様が認めて下さることを願っています。そして当社は将来に渡って「債券の権威」として持てる力を発揮し、お客様の資産を守ることができると考えています。
ウィリアム・H・グロースマネージング・ディレクター
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