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Investment Outlook
ウィリアム・H・グロース | 2004年3月
使命を果たして
(最後の自警団 パート2)
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「確かにカルフォルニアじゃあ、雨なんて降りゃしない。
でも、誰も教えてくれなかったのかい?降った時には土砂ぶりになるんだ」
アルバート・ハモンド 『カルフォルニアの青い空』

現在当社は、当局による詮議と世間の非難を甘んじて受けているわけですが、これは決して愉快なことではあ りません。それでも、こうした状況にあって、面白いことが1つあるとすれば、それは、私達のことを十分に理解しているわけではない、顔見知りの人たちの反応を見ることです。嫌疑をかけられている人間と目を合わせまいとするのか、うつむいてしまう人もいます。反対に、そんなことはお構いなしといった人もいます。私が反対の立場であ れば、やはりうつむいてしまうかもしれません。昨日はこんなことがありました。ここ数日間続いている冬の嵐の中をジムにやってきた老人が、ヨガに勤しんでいた私を見つけ、「いやぁ、いろいろと大変だろう。まるで大嵐にあ ったようだね」と声をかけてきました。私は笑いながら、「おっしゃる通り、大変ですよ」と答えたのですが、その時、私の頭の中には、冒頭で紹介した、70年代初期のヒット曲の歌詞が頭をよぎったのです。PIMCOでは、これまですべてが順調で、カルフォルニアの天気のように、雨が降ることなどあ りませんでした。しかし、いざ雨が降り出すと、少なくとも当事者である私達には、ひどい嵐がやってきたように思えるものです。それでも、私達には、必要にして十分な数の傘があ り、この嵐が過ぎ去り、いつも通りの青い空が戻ってくることを、楽しみに待っていますので、心配はいりません。是非ご安心ください。私達はこうした厳しい状況にあ っても、くじけず、しっかりと前を向いて歩いています。そして、少なくともこのInvestment Outlookの観点から見て、おそらく最も重要なことは、当社が以前と変わらずポートフォリオの運用を続けていることでしょう。「平常通りに」と言ってしまうと、言いすぎかもしれません。確かに残業は多くなりました。しかし「運用こそ最も重要な業務」という理念はまったく揺らいでおりません。当社は、こうした状況を乗り越えて、顧客の皆様に優れた相対パフォーマンスを提供していく所存です。口には出さないものの、皆様が感じていらっしゃるであ ろう疑念に対して、私達は全員が一丸となって向き合っていきます。

一方で、私は、先月号のInvestment Outlookを補完する戦略を示すことが有益だと考えました。先月号のInvestment Outlookに対する関心は高く、PIMCOのホームページには、過去最高となる7万件ものアクセスがあ りました。これほどのアクセスがあるとは、想像すらしませんでした。簡単にまとめると、先月号のInvestment Outlookでは、金融を基盤とした経済は多大な債務を抱えており、政策当局は、財政赤字や、通貨安、マイナスの短期金利といった、リフレを目的とした政策を撤回することができないことを示しました。そして、インフレ率は最終的に上昇すると予想しましたが(但し2004年の上昇幅は少ない)、最後のパラグラフでは、国外の投資家や、場合によっては国内の債券投資家までもが、米国民の浪費に対する資金提供をやめた場合には、再び景気悪化のスパイラルに突入する危険性があ る(但し、その可能性がきわめて高い訳ではない)ことを示唆しました。本当のところ、先月号の『最後の自警団』は、良識と、金融市場の自警機能が復活することを求めたものでした。しかしそのタイミングと、こうした秩序が完全に再生するかどうかについては、疑問が残るとしました。

残念ながら先月号では、分量が多くなってしまったため、経済的に不透明ではあ るものの、こうした状況を活用して利益を生みだす可能性のある債券市場戦略を紹介することができませんでした。ベンチマークや競合他社よりも優れた成果を上げようとする運用マネージャーは、私の言う「限定的なリスク」を取る必要があ ります。言い換えると、ポートフォリオの性格を明確に示す必要があります。しかし、運用マネージャーが提示するポートフォリオの特徴は、現在とは状況が全く異なる過去の金融市場の成功事例をそのまま引用したものであ ってはなりません。1月号のInvestment Outlookをホームページに掲載した翌日、私は、運用委員会のメンバーと、世界の各拠点に勤務するPIMCOのポートフォリオ・マネージャー全員に対して、慎重な運用が求められる世界において、私達は何に投資すべきかを問うeメールを発信しました。そのメールの全文を紹介しましょう。

このロードマップは、常識的なものだとは思いますが、それでも間髪を置かずに全体的な妥当性に対する疑問が出ることでしょう。一見すると、ここで取り上げたほぼすべての推奨内容では、利回り ― もしくは最近の呼び方でいくと「キャリー」― が低下するように思えるためです。社債保有の最小化、ほぼ100%為替ヘッジをしたユーロ債の購入、利回りが米国債の90%しかない地方債の購入、そしてブレイク・イーブン・インフレ率が2.2%の水準で米国インフレ連動債¥(TIPS)を購入することは、すべてリフレ政策から身を守るためのものですが、そのための代償として利回りの低下を余儀なくされると思えることでしょう。私達は、優れた「トータル・リターン」を目指していますが、長期的に見た場合に、トータル・リターンの大部分を構成する要素は何かを常に意識している必要があ ります。それは金利収入なのです。結局のところ、リフレ政策に対する保険を求めるポートフォリオ・マネージャーは、自らの見通しに対する確信の度合いに応じて、さまざまな比率で「現金」に資金を移します。しかし、現金の金利は1%で「固定」されています。つまり、実質金利はひどく高価な、マイナスの水準に固定されており、その結果だけを考えても、デフレ懸念を軽減し、長期投資を促すことになります。そのため、利回り、すなわちキャリーに目を向けることが重要になるのです。

こうした疑問に対する回答として、1つの事例を紹介しましょう。これには、かなり驚かれるかもしれません。それは、PIMCOのほとんどのポートフォリオ・マネージャーが、ゼロに近いコストで、リフレに対する保険を購入しつつも、債券市場平均よりも高い利回りを生み出しているという事実です。当社の計算では、トータル・リターンを目標とするPIMCOの国内ポートフォリオとグローバル・ポートフォリオは、それぞれのベンチマークよりも30~40bp優れたキャリーを生み出しています。なぜそうしたことが可能なのでしょうか。その理由の1つは、先に紹介したメールの5で紹介した短期セクターのイールドカーブ戦略です。これは、一見すると利回りが低下するように思える戦略ですが、実際には利回りを向上させる戦略です。Investment Outlookの11月号で、私は「デュレーション空間」の考え方を紹介し、残存期間が長く、利回りの高い債券に投資する場合であ っても、利回り1%の現金と組み合わせて、市場平均並みのデュレーションにしようとすると、実際には短期債の利回りを下回ってしまうことを示しました。ヒストリカルに見れば、「高い利回りを生み出す」短期セクターのボラティリティは高いかもしれませんし、その結果、デュレーション空間1単位あ たりのオプション調整後利回りは見た目より低くなるかもしれません。ですが、もちろんこの戦略は短期金利のボラティリティが過去の水準よりも低くなることに「ベット」するものです。過去10年の日本や、過去14ヵ月の米国の例が示す通り、リフレを目論む中央銀行は、実質金利を低い水準で安定させようとするため、このボラティリティは過去の水準よりも低くなる可能性は高いと言えます。現在の環境における「キャリー」は、一般的にみられるデュレーションの長期化によって生み出されるのではなく、30年債への投資を避け、2~8年の中期債の「ロールダウン」を狙った戦略を用いることで生み出されます。下のチャートは、この戦略を示したものです。

 

最後のパラグラフには、テクニカルな債券用語が数多く含まれるため、多少分かりにくかったかもしれません。そのため、特に6について、分かりやすいように説明しましょう。これは、現在のスプレッド水準において、米国債券先物の利回りが、現実に投資適格社債の利回りを上回る可能性があ ることを示したものです。これまでも、米国債券先物の利回りは、社債の利回りを上回ってきましたし、今後もそうなる可能性は高いでしょう。当社の分析によると、米国債券先物は、平均して4ティック、つまり4/32分割安になっています。これは、米国債券先物の利回りが同等の現物債券と比較して、年間あ たり50bp高くなることを意味します。この、まるで奇跡のような状況を出現させた最大の原因は、モーゲージ債や投資銀行業務絡みのヘッジとして、先物(もしくはスワップ)の売りが必要になることです。そのために、先物価格は、PIMCOを始めとする運用マネージャーが、逆のポジションを取ることによって利益を獲得できる水準まで低下します。この価格の低下分が、50bpに相当するというわけです。この通りになるとすると、利回りをほとんどギブアップすることなしに、大半のA格およびAA格の社債を現在のスプレッドでポートフォリオから外すことが可能になります。そのため、メールでは、これを社債スプレッドの「フリー・プット」と呼びました。今後12ヵ月間に現在の狭いスプレッドが拡大するのであ れば、社債を外したことで、PIMCOのポートフォリオは利益を生み出すことができます。スプレッドが拡大しなくても、米国債券先物は、少なくとも社債と同程度の利回りを生み出します。つまり、普通の言葉で言い換えると、「引き分け」になるということです。

まだまだ説明を続けることは可能ですが、どうも私は手短に読みやすくまとめることが好きなので、今回はこれまでにしましょう。当社の顧客の皆様や、この点に関心をお持ちの読者の方々が、先に示したeメールの内容をじっくりと吟味され、リフレを目指した政策当局の取り組みから利益を得ようとする当社の戦略について、ご理解頂ければ幸いです。来月号では、もう1度このメールの1から4の各項目について詳しく説明できると思います。しかし、それと同じように重要になるのは、7で示した、当局の現在の政策の成功と失敗とをつぶさに監視すべきとした警告とヘッジです。リフレを目指した政策が資産価格のバブルを作り出しており、それが続いた場合には、(1)インフレが発生するか、(2)バブルが弾けることになります。インフレが上昇した場合には、当局の現在の取り組みが成功したということです。しかし、バブルが弾けた場合には、金融市場は大打撃を受け、経済はデフレ色を強める可能性があ ります。現在考えられる結末は、この2つのうちのどちらかであるため、先行きがはっきりするまでは、デュレーションを市場に対して相対的に中立とする必要があ ります。当社が5月に開催する長期経済展望会議では、最新の状況について分析することができるでしょう。その一方で、当社では、全力をあ げて運用に取り組み、顧客の皆様の2004年が、相対的に素晴らしい年になるよう、努力して参ります。

ウィリアム・H・グロース
マネージング・ディレクター

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(注)PIMCOはパシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー・エルエルシーを意味します。
 
 

 



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