ホーム   |   サイトマップ   |   PIMCOへのお問い合わせ
US Canada Europe 日本 Australia Singapore

   プロダクトとサービス
   PIMCOについて
   プレス・センター
   金融商品販売法に基づく勧誘方針
   ボンド・ベーシックス
   過去のレポート一覧
   採用について

 

 

Global Central Bank Focus
ポール・マカリー | 2009年6月
出口戦略とはFF金利の引き上げに関することであり、必ずしも超過準備の吸収ではない
このページのPDFファ
イルをダウンロード
E-Mail配信

ポール・マカリーの略歴はこちらをクリックしてください。

FF(フェデラル・ファンド)金利をゼロ%近辺に貼りつけ、銀行システムに8,000億ドル近い超過準備を放置しておくという二重の状態は永遠に続けられるわけはないとする考え方を、合理的な投資家の大半が受け入れています。これとは裏腹な事実として、ここまで多くはないものの、やはり大半の人々が、デフレによる大混乱というファット・テール・リスクを断ち切るために、こうした状況を作り上げた米連邦準備理事会(FRB)の手腕を称賛しています。

 

そして、圧倒的大多数の支持で、以下の見方がコンセンサスになっています。ファット・テールを断ち切り、封じ込めた暁には、FRBには出口戦略が必要であり、極端に景気刺激的な戦略から撤退し、FF金利を引き上げ、超過準備を吸収しなくてはならない、と。出口戦略とは、クウェートからイラクを駆逐する米国の戦略について当時の米軍統合参謀本部議長コリン・パウエルが述べた有名な言葉に由来します。こうした出口戦略の基本的主張に異議を唱えるのは、容易ではありません。基本的にそれは正しいのですから。

 

しかしながら、超過準備の吸収を、FF金利を引き上げる際の必要条件であるかのごとく重要視している評論家がこれほど多いことに、私は当惑していると認めざるをえません。超過準備の吸収は、利上げの必要条件ではありません。確かに、かつてはそうでした。昨年秋に、FRBが準備預金に金利を付ける権限を議会が認めるまでは。それ以前に、FRBFF金利をプラスの誘導目標に近づけるには、銀行システムが求める準備、つまり事実上の必要準備に対して、流動性の供給を制限する方法しかありませんでした。

 

以前なら、過剰な超過準備が存在すれば、FF金利はFRBの誘導目標を下回る水準にまで低下しました。超過準備を持つ銀行は、それをFRBの口座に置いていてもまったく金利を得られないため、短期金融市場で誘導目標を下回る金利で貸し出しに回そうとしたからです。しかしながら現在、FRBは銀行の超過準備に金利を付けています(現時点でこの金利は、FF金利の誘導目標0~0.25%の上限の0.25%に設定されています)。このため、論理的に考えれば、超過準備を持つ銀行は、短期金融市場においてFRBの付利を下回る金利で貸し出しに回そうとするのではなく、FRBの預金口座に置いておこうとすることになります。それゆえ、金融システムに巨額の過剰準備が存在しているとしても、現時点でFRBが超過準備につけている金利は、FF金利の下限の役割を果たすはずです。したがってFRBは、超過準備に付ける金利を引き上げることによって、肥大化したバランスシートの「縮小」を待たずにFF金利の誘導目標の引き上げを実行できるのです。

 

足元の現実

FRBは昨冬、FF金利の誘導目標を00.25%に引き下げて以降、FRB専門用語でいう「銀行の預金準備に対して圧力を維持する」必要はなくなりました。つまりFRBは、必要だと判断する水準まで、バランスシートを拡大できる裁量権を持つようになったのです。バーナンキ議長が命名した「信用緩和」政策1のなかで、貸し出しや証券買い取りによって、バランスシートの資産側が拡大しても、それに伴って創造された準備を「不胎化」する必要がなくなったのです。

 

そしてFRBは、この裁量権を見事に活用しました。FRBのバランスシートは、昨夏に比べて二倍に拡大し、その過程で超過準備が創造されました。これは「問題」ではありません。FRBFF金利がほぼゼロ%で取引されるよう望んでおり、これこそが誘導目標なのですから。

 

ここで、FRBが金融システムにおける超過準備量の目標を設定していないことを付け加えておくべきでしょう。バーナンキ議長はこの点を強調しており、FRBの政策を評価するためにはマネタリスト型の指標が必要であり超過準備量の目標を設定すべきだとする一部の声を退けています。超過準備量、すなわちFRBの負債は、FRBがバランスシートの資産側でどのような政策をとったかで決まります。もっと理屈っぽく言えば、超過準備の残高は信用緩和策の結果であって、2000年代前半に日本が量的緩和策を実施した時とは違い、外生的な目標ではないのです。バーナンキ議長は、両者を明確に区別しています。議長自身の言葉を引用しましょう2

 

信用緩和と量的緩和

信用市場を支援するためのFRBの政策は、日本銀行が2001年から2006年にかけて実施した量的緩和政策とは概念的に異なる。FRBの政策は、言わば「信用緩和」であり、中央銀行のバランスシートの拡大を伴うという一点では、量的緩和策に似かよっている。しかしながら、純粋な量的緩和の枠組においては、政策目標は、当座預金残高、すなわち中央銀行のバランスシートの負債側になる。ローンや証券など資産側の構成は、副次的な要因に過ぎない。実際、量的緩和の実施中は、日銀の政策アプローチは多面的であったものの、政策全般のスタンスを判断する際には当座預金残高が主たる指標になった。

 

これに対して、FRBの信用緩和策が重視するのは、FRBが保有するローンと証券の構成と、この資産構成が家計や企業部門の信用状況に与える影響である。この違いは、日本の政策との理論上の対立を反映したものではなく、対象期間の金融・経済環境の違いを反映したものである。具体的には、日本で量的緩和策が実施された時期に比べて、米国では信用スプレッドが大幅に拡大するとともに、信用市場の機能が著しく低下している。こうした環境下で総需要を刺激するには、信用スプレッドの縮小と、広範な民間信用市場の機能改善を、政策の主眼にしなければならない。

 

FRBの信用緩和策による刺激効果は、融資プログラムと証券の買い入れをどのように組み合わせるかで微妙に変わってくる。現在のように、バランスシートの制約などの要因により、市場の流動性が枯渇し、民間の裁定が機能不全に陥っている状況では、金額が同じであっても、長期証券の買い入れが銀行への直接融資と同じ影響を金融市場と経済に与えるとは考えられず、さらには銀行への直接融資が、コマーシャルペーパー(CP)市場を支援するための融資と同じ影響を与えるとは考えにくい。

 

融資の形態によってその効果が異なることから、現在の信用緩和におけるFRBの政策スタンスは、量的緩和の場合とは違って、超過準備量やマネタリーベースの規模といった単一の指標で測ることはできない。さらに、FRBの信用を利用するか否かは、主として借り手のニーズで決まるため、市場環境が悪化した時にはその利用が増加し、市場環境が好転した時には利用が減少する傾向がある。量的緩和政策のように、FRBのバランスシートの規模を目標として定めた場合には、市場環境が悪化している時に融資の条件や入手可能性を厳格化せざるをえず、逆に市場環境が好転しつつある時に緩和せざるをえない、という倒錯した効果を持つことになりかねない。

 

単一の指標や政策目標がない状況では、市場との対話は難しいものになる。市場の不透明感を最小限に抑え、政策の効果を最大化するために、FRBはバランスシートの活用状況や、バランスシート活用の将来計画、関連する決定の元になる基準について、できる限り情報を公開することにしている。

 

私(そしてバーナンキ議長)の理屈っぽさに、唖然としている読者が多いのはよく分かっています。そのことは心苦しいですが、この点を理解していただくことはきわめて、きわめて重要なのです。FRBには自ら創り出した超過準備を一掃する出口戦略が求められていると声高に唱えられ、超過準備はいずれ激しいインフレを引き起こす元凶であるかのごとく言われているからです。しかし、そうではないのです。

 

確かに、私の学生時代の教科書では、貨幣乗数が重視されていて、FRBの準備預金創造と、銀行が信用を創造した時の預金、つまりマネーストックの創造能力の関係が強調されていました。私もそうですが、読者の多くも、教科書にはT字型の勘定が書いてあり、青い(あるいは黄色だったかもしれません)答案用紙にそれを再現しなければならなかった記憶があると思います。教科書では、FRBがいかに「マネーサプライを増やせるか」、つまり準備預金を創造し、市中銀行がそれを活用することによって乗数倍の融資が創出され、そしてそれが銀行預金、すなわちマネーストックになるかが説明されていました。

 

しかし、当時の試験ではこれでAが取れたはずであり、私の知る限り今でも、取れるかもしれません。ですが、現実はその通りにはなっていません。FRBが実際に行なっているのは、FF金利の誘導であり、そのために必要な準備預金を供給することにより、FF金利は銀行信用と資本市場における信用双方に対する需要に影響を与えています。

 

確かに現在、世界は正常とは言いがたい状態にあり、その中でFRBFF金利を事実上ゼロ%に固定しています。しかしながら、だからといって信用の旺盛な需要が刺激されているわけではありませんし、代わりに、潜在的な借り手に対する融資条件や環境を緩和することによって、銀行が需要を喚起しているわけでもありません。おそらく現状は、借り手は借入れに及び腰になり、貸し手も融資に二の足を踏んでいるといったところでしょう。

 

このため当面は、ほぼゼロ%のFF金利が、経済の供給能力に対する総需要を加速させ、インフレを煽ることはないと断言できます。そして、金融システムの超過準備の爆発的な伸びを招いたといえるFRBの信用緩和も、インフレの火種にはなりえません。もちろん、いずれ条件が整えば、概念上、ゼロ%のFF金利が借り手と貸し手の意欲を再燃させる可能性があります。まさに、それこそがFRBが目指すところなのです。そして、仮にその目標が達成されたときには、景気の過熱を防ぐために、FF金利を引き上げて再燃した意欲を抑制する必要が出てきます。

 

しかしながら、現時点で、景気が過熱し、過剰な労働力や遊休設備が短期間で解消される可能性はきわめて低いと私は思っていますし、FRBも同意するでしょう。実際のところ、そうした可能性を懸念しなくてはならない状況になっていれば、どれほど喜ばしかったでしょう。ですが、そうなっていないのが現実であり、FRBも、今後しばらくの間、その可能性は低いと判断しています。したがって、FRBのゼロ金利政策からの出口戦略を現段階で心配することは明らかに時期尚早です。

 

また、金融システムにおける超過準備の規模について、あれこれ案じることも、明らかに誤りです。膨大な超過準備が存在しても、現在FRBにはその準備に付利できる法的権限があるのですから、FF金利を引き上げる能力を有しています。

 

確かに、過剰流動性を持つすべての機関がFRBとの取引があり、準備預金に付利を得られるわけではありません。また、FRBが付利という手段を有するようになってからの短い期間に、過剰流動性を持つ機関が、何がしかの金利を得ようと短期金融市場で貸し出しに回すことによって、実際の金利がFF金利の誘導目標を下回ったことがあります。しかしながら、ニューヨーク連銀のウィリアム・ダドリー総裁が指摘するように3、論理的に考えれば、市場のストレスが高まっている時期においては、銀行が余裕のなくなったバランスシートを使って、実際のFF金利とFRBの付利を裁定すること(FF市場でFRBの付利を下回る金利で調達した資金を、FRBに預け入れて金利差を獲得すること)に消極的である結果だと考えられます。

 

(遠い)将来に目を向ければ

FRBが実際にFF金利の誘導目標を引き上げる時期が来た時には、論理的に考えれば、銀行システムが十分に回復した状況になっていることが強く示唆され、銀行が無リスクの裁定利益を放置するはずはないでしょう。このためFRBは、金融システムに過剰な準備が残されていたとしても、金融政策を引き締めること、つまり政策金利を引き上げることができるのです。確かに、バーナンキ議長が示唆したように、論理的に考えれば、この時点で超過準備は十分に小さくなっていると予想されます。FRBがそれを目標として目指すからではなく、需要の減少に伴い、FRBの信用緩和策の制度利用が自然に減少するからです。

 

しかしながら、信用緩和によってエージェンシーMBS(モーゲージ担保証券)と政府機関債、それより金額は少ないものの長期国債の保有が大幅に拡大し、さらに拡大する可能性がある現状では、FRBFF金利を引き上げるべき時期が到来した時点でも、巨額の過剰準備が残っている可能性が十分あります。概念上は、FRBは過剰準備を「吸収」することができます。その手段として、保有債券の売り切りや、マッチド・セール/リバース・レポ取引による一時的な売却、あるいは法的権限を取得しての利付き債発行、または財務省証券発行とそのFRBによる保有の積み増しがあります。

 

バーナンキ議長をはじめ複数のFRB高官は、こうしたあらゆる手段について取り上げ、出口戦略の出口を数多く用意している点を強調しています。実際、FRBの出口は多いのです。もっとも、超過準備に付ける金利を引き上げることが、FF金利引き上げのもっとも分かりやすい方法なのですが。実は、単にFF金利を引き上げることよりも、他の手段の方が重要性が高いと私は見ています。他の手段を超過準備の付利の引き上げと併用すれば、この「パッケージ」によって、FRBが、擬似的な財政政策ともいえる緊急避難的な措置を終結し、金融政策における独立性を再確認する意図を、大々的かつ明確に市場に伝えることになります。FRBはバランスシートが肥大化し、巨額の超過準備を抱えていても、技術的にFF金利を引き上げる能力はあるとはいえ、この点は非常に意味があることなのです。

 

結論

では、これらが現実になるのはいつなのでしょうか。 市場では先週、年内には現実になるとの希望が台頭し始めました。私に言わせれば、これはばかげています。デフレの大混乱というファット・テール・リスクを断ち切り、封じ込めるうえで、大胆な政策行動が求められる一方、性急にこの戦いに勝利宣言をすることは辛抱強く慎まなくてはなりません。FRBはこれまで大胆に行動し、忍耐強さを標榜してきました。これは見事というしかありません。それでは、いつ利上げに踏み切るのでしょうか。早くても2011年になると私は考えています。

 

ポール・マカリー

マネージング・ディレクター

2009615

mcculley@pimco.com

 

 


 

1 Ben Bernanke, "The Crisis and the Policy Response," http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20090113a.htm

 

2 Ben Bernanke, "The Crisis and the Policy Response," http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20090113a.htm

 

3 William Dudley, "A Preliminary Assessment of the TALF," http://www.newyorkfed.org/newsevents/speeches/2009/dud090604.html

 

<< 過去のレポート一覧

関連レポート

ピムコジャパンリミテッド
105-0001
東京都港区虎ノ門4-1-28
虎ノ門タワーズオフィス18階
 
金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第382号
加入協会/ (社)日本証券投資顧問業協会、(社)投資信託協会

ピムコジャパンリミテッドが提供する投資信託商品やサービスは、日本の居住者であり、かつ法律による制約のない方に対して提供するものであり、かかる商品やサービスが許可されていない国・地域の方に提供するものではありません。

過去の実績は将来の運用成果を保証するものではありません。本資料には、本資料作成時点での著者の見解が含まれていますが、これは必ずしもPIMCOグループの見解ではありません。著者の見解は、予告なしに変更される場合があります。本資料は情報提供を目的として配布されるものであり、投資助言や特定の証券、戦略、もしくは投資商品の推奨を目的としたものではありません。本資料に記載されている情報は、信頼に足ると判断した情報源から得たものですが、その信頼性について保証するものではありません。

運用を行う資産の評価額は、組入有価証券等の価格、金融市場の相場や金利等の変動、及び組入有価証券の発行体の財務状況による信用力等の影響を受けて変動します。また、外貨建資産に投資する場合は為替変動による影響も受けます。運用によって生じた損益は、全て投資家の皆様に帰属します。したがって投資元本や一定の運用成果が保証されているものではなく、損失をこうむることがあります。弊社が行う金融商品取引業に係る手数料または報酬は、締結される契約の種類や契約資産額により異なるため、当資料には具体的な金額・計算方法は記載しておりませんのでご了承ください。

本資料の一部、もしくは全部を書面による許可なくして転載、引用することを禁じます。本資料の著作権はPIMCOに帰属します。 2009年



プロダクトとサービス   |   PIMCOについて   |   プレス・センター
金融商品販売法に基づく勧誘方針   |   ボンド・ベーシックス   |   過去のレポート一覧
採用について