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Global Central Bank Focus
ポール・マカリー | 2009年2月

資本主義における銀行システムを、
自身から救うには

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資本主義の本質は、リスクを取ること、リスク・テーキングに尽きます。そして、リスク・テーキングのひとつの形態がレバレッジです。実際のところ、レバレッジなくして、資本主義の繁栄はありえません。レバレッジの必要性の例として、私たちが通常、思い浮かべるのは起業家であり、起業家は自己資本にレバレッジをかけて初めて成長できると考えます。そして、確かにそれは、その通りです。

 

しかしながら経済は、資本主義であれ社会主義であれ、もっと本質的な点でレバレッジを必要としています。なぜなら、貯蓄者は、しごく論理的な理由から、資産の100パーセントを株式に投資したくないからです。ポートフォリオの一部を、株式よりも返済順位の高い債券に振り向けようとするのは論理的なことです。

 

そして貯蓄者は、確定利回り商品の一部を、いわゆるマネー(カネ)、つまり常に額面で取引される政府保証債務の形で持ちたいと思っています。お疑いになる方は、ポケットに手を入れてみたら、それが見つかるはずです。これは通貨と呼ばれ、金利ゼロで、米国ではFRB(米連邦準備理事会)が負う無期限の負債ですが、FRB自体がレバレッジをかけた機関であり、議会で法制化された通貨発行の独占権の上に成り立っています。

 

しかし当然ながら、現実には、額面で現金化が可能な資産のすべてを、通貨の形で保有するわけではありません。おそらく当座預金とよばれる要求払い預金もお持ちでしょうし、常に「額面」で償還されると想定されているマネーマーケット・ミューチュアル・ファンドの受益権もあるでしょう。CD(譲渡性預金)などの期間が長い銀行預金もあるかもしれません。CDは、常に額面で取引されるわけではありませんが、満期時には額面での払い戻しが保証されています。

 

部分準備銀行制度の性質

経済において、人々が額面どおりの流動性を要求すること自体が、レバレッジの材料を生み出しています。実は、部分準備銀行制度とははるか昔から、額面で即時の現金化が可能な銀行預金について、国民全体の事前的な需要は事後的な需要よりも大きい、という単純な前提の基、成り立っているのです。

 

したがって、大袈裟な言葉をあえて使うなら、銀行業務の「真髄」1は常にシンプルです。銀行は、バランスシートの負債側で取得されている以上のリスクを資産側で取ることができます。なぜなら、預金に代表される負債側のかなりの部分は、事実上、満期が永遠に到来しないからです。もっとも法律上は期限が決まっており、最短の場合、要求払預金の1日なのですが。

 

つまり、銀行業務とは本質的に満期と信用力を変えることを意味します。預金という負債の動きが鈍いため、銀行は、負債よりも期間が長く、リスクの高い資産を保有することができます。預金者は、自分の預金が額面通りに戻ってくるのを知っているから安眠できますが、知っているからこそ、実際に払い戻しを要求することはありません。このため銀行は、預けられた資金を、必ずしも額面で取引されず、期間が長く、リスクが高く、利回りの高い資産に振り向けることができるのです。

 

政府の介在

預金者が安眠できる大きな理由のひとつに、ここアメリカでは、1913年以降、銀行がFRBの貸出制度を利用できるようになったという事実があります。ここに資産を担保として差し出せば、急な預金の引き出しに対応するために融資を受けることができます。安眠できる第2の理由に、1933年に導入された政府のセーフティーネット――預金保険があります。銀行がバランスシートの両側でどれほど愚かな行為をしようとも、連邦政府が預金者に対して、上限金額まで額面での払い戻しを保証しています。

 

つまり、現代の銀行業務の真髄は(またしても大袈裟な言い方ですが)、中央銀行の貸出制度と納税者により支えられた預金保険という2つのセーフティーネットにより、銀行が愚かな投融資を行なった場合ですら額面で払い戻しを受けられるという安心感を預金者がもっていることにあります。したがって、常に、額面での現金化、流動性に対する国民の事前的需要と事後的需要の差を利用する点にあるのです。

 

聞こえがよくないのは承知しています。ですが、現実に、銀行の成り立ちはこうなっているのです。リスクの高い資産の利回りは、リスクの低い負債の利回りを上回っているのですから、言い換えれば、銀行はきわめて利益率の高い事業体になりえます。そして、この利ざやは、自己資本利益率に換算した場合、きわめて魅力的になりえます。思い出していただきたいのですが、銀行がTier 1の形で保有しなければならない自己資本は8%に過ぎず、レバレッジ比率がきわめて高いからです。

 

別の言い方をすれば、銀行の株式に投資する投資家は、総資産の8%を失う可能性があるだけで、総資産の100%に対して利ざやを確保できるのです。ただし、銀行が、多額の危険な投融資を行わず、資本を毀損せず、先に述べた2つの政府のセーフティーネットが打ち切られないという条件がつきますが。

 

このため、少なくとも私は、銀行を厳密な意味で民間セクター企業ととらえることには、常々、若干の矛盾を感じてきました。確かに、銀行には民間の株主がいます。そして、これらの株主は、満期とリスクの変換という錬金術に付随する利ざやのプラス面をすべて手にしています。しかしながら、銀行業界そのものは、政府のセーフティーネットに頼っているわけであり、銀行が規制されているのはそのためです。

 

理論的に考えれば、社会主義諸国がそうであるように、銀行を国有化することは可能であり、実際にそうなっています。これは規制の究極の形といえます。こうした体制は、納税者に負担だけではなく利益をもたらすというメリットがあります。しかし同時に、政府を利益の追求を顧みない投融資に走らせ、政治的なしがらみで勝者と敗者を選別するというコストも伴います。

 

このため、資本主義経済では通常、銀行システムを民間セクターの保有にし、投融資が利益を追求して商業ベースで行われることを望みます。ただし、預金者に対する2つのセーフティーネットにはモラルハザードがつきまとうことから、納税者が被る被害を最小化するために、プルーデンシャル規制の下でという条件がつきます。

 

メイ・ウエストの原則

しかしながら資本主義者は、その習性として、最小のプルーデンシャル規制の下で、政府のセーフティーネットを活用することを好みます。だからといって反道徳的なわけでなく、資本主義者であるに過ぎないのですが。そして、この10年あまり、銀行モデルの真髄を最大限に活用する方法は、銀行でない銀行になることでした。私はこれらを2年前に「影の銀行」と名づけました。

 

影の銀行になる方法として使われてきたのは、レバレッジ比率を高めた投融資機関の経営であり、投資銀行やコンデュイット、SIV(ストラクチャード・インベストメント・ビークル)、ヘッジファンドがこれに当たります。その資金は、銀行間借り入れやCP(コマーシャル・ペーパー)などの無担保債務、リバース・レポやABCP(資産担保コマーシャル・ペーパー)などの有担保債務など、預金以外の方法で調達しました。そして、常にというわけではありませんが、たいてい、こうした影の銀行は、いざという時の流動性の出し手として、中央銀行の貸出制度にアクセスできる伝統的な銀行に頼っていました。

 

影の銀行は、その仕組み上、政府のセーフティーネットに明示的なアクセスがなく、利用もしないため、レバレッジ比率や予備的な流動性の規模、投融資の種類などに関する規制から免れていました。

 

確かに、影の銀行は、政府の流動性供給にアクセスのある銀行の預金と「同等の信用」であるとの主張を、短期資金の貸し手に信じてもらうための、ある種のお墨付きを必要としていました。そして都合のいいことに、格付け会社は影の銀行から手数料の支払いを受けて、すぐにもそのお墨付きを与えうるという立場にありました。

 

絶えずレバレッジを拡大させて、資産価格が押し上げてられている間は、すべてが順調でした。劣等生にレバレッジをかけて天才に仕立て上げるという観点では、ブル・マーケット(強気相場)ほど最適なものはありません。伝説の女優、メイ・ウエストは、「少し楽しいのはいいこと。もっと楽しければ、もっといい。楽し過ぎるのは正しい」と言いましたが、まさにメイ・ウエストの原則どおりでした。

 

順ミンスキー過程とも言ってもいいでしょう2。安定により、リスクの高い債務主体が生まれ、資産価格にバブルが発生します。やがて、バブルが崩壊するミンスキー・モーメントが訪れ、その後、逆ミンスキー過程が続きます。そうなると信用の確保や与信の条件が厳しくなり、資産価格のデフレと、それに伴う債務価格デフレが誘発されます。

 

 

この過程は自律的に拡大し、ディレバレッジ(レバレッジ解消)のパラドックスを引き起します3。伝統的銀行も影の銀行も、民間セクターの銀行はこぞって、金融市場における売り手に回り、資産を売却し、債務を返済し、さらには株式を発行することによって、レバレッジ比率を引き下げようとします。しかしながら、過去1年半あまりにわたってそうであったように、誰もが一斉に同方向に動くとその目的は達成されにくくなります。

 

ここで必要なのは、政府が取引の反対側に回ること、すなわち事実上の買い手になることです。その手法には、以下の4つがあります。すなわち、(1)資産を購入する、(2)資産を保証する、(3)資産購入のための低利の資金を供給する、(4)銀行の株式を購入する(伝統的な銀行と、事後的に伝統的銀行への転換を認可された影の銀行などを対象)。

 

政府は政策を総動員4

そして実は、リーマン・ブラザーズの破綻を容認するという秩序なき致命的決定を下して以降、これら4つの手法すべてが実行に移されています。もっとあからさまに言えば、銀行の複合的な性格(常に民間資本と政府のセーフティーネットの合弁事業であるという性格)がどんどん変質しており、政府支援機関に近づきつつあると言えます。この言い方が厳しいのは分かっていますが、真実は時に厳しいものなのです。資本主義と銀行は離婚したわけではありませんが、ある種の試験的な別居に入ったのは確実です。

 

財務省、FDIC(連邦預金保険公社)、FRBというビッグスリーは、金融市場の仲介者であると同時に資金力がある支援者として、金融システムの中枢に深く関与しています。これは完全な国有化というわけではありませんし、そうなる可能性は低いとみられます。それは、ビッグスリーがそうした結論を回避するために、あらゆることをやると約束しているからです。この先、ビッグスリーは、財やサービスに対する総需要の不足――いわゆる景気後退という裂け目から経済を救い出すために、信用創造というエンジンに再着火したいと思っており、またそうしなければなりません。

 

うまく行くでしょうか? ガイトナー財務長官が先週発表した新政権の救済案に対する市場全体の反応から判断すると、疑問の余地はあります。しかしながら私は、1週間の市場の変動が、このゲームの行く末を示す手がかりになるとは思いません。その最大の理由は、FRBFDICには特別な権限があり、それにより議会が財務省に託した納税者の資金にレバレッジをかけることができるからです。

 

ここ数ヶ月で証明されたように、FRBは非常に強力な手段を2つもっています。

  • 1932年連邦準備銀行法の第13条第3項。FRBは、「異例の非常事態」であると宣言すれば、十分とみなされる担保をもつ誰に対しても融資できる。かつ

  • バランスシートをまったく自由に拡大でき、自身の負債を増やすことができる――いわゆる紙幣の増刷である。ただし、その際には、FRBがフェデラル・ファンド(FF)金利に対するコントロールを手放し、ゼロ近辺で推移するのを容認する意思が必要である。

この数ヶ月、FRB2つとも積極的に活用してきました。伝統的銀行、影の銀行(例えば銀行に業態を変えた投資銀行とプライマリー・ディーラー)の双方に対して、融資プログラムを大幅に拡大する一方で、FF金利を事実上ゼロに低下させながら、みずからのバランスシートの規模を2倍にしています。

 

FDICもまた、非常に強力な手段を有しています。1991FDIC改善法における、いわゆるシステミック・リスク例外規定です。FDICは通常、金融機関の処理にあたってはもっともコストの低い方法をとるべきであるとされています。しかし、このシステミック・リスク例外規定により、FDICは問題銀行の処理にあたって、「コストが最も低い」解決法が、「経済状況や金融の安定性に深刻な悪影響を及ぼす」可能性があり、またそれを取らないことによって、「悪影響を回避・緩和できる」と判断された場合、「コストの最も低い」解決法を取らなくてもよいと容認されています。

 

FRBの第13条第3項が、理事会の超過半数が賛成するだけで発動できるのにくらべて、FDICがこの規定を発動するのは、それほど簡単ではありません。FDICFRBのそれぞれの理事会の3分の2の承認と、財務長官の同意が必要であり、財務長官はまず大統領と協議し、承認を得なければなりません。

 

しかしながら、意思あるところに道は開けるものです。FDICは現在、システミック・リスク例外規定の世界に完全に入っており、銀行の無担保債務を保証するとともに、銀行の傷んだ資産を保証することで、必ずしも彼らにとって低コストとはいえない解決策を提供することが法的に容認されています。

 

結論

今のアメリカ政府は、民間の銀行システムを、そしてさらに重要な点として、実体経済を債務デフレの病から救うための手段と意思を兼ね備えています。だから簡単だというわけではありませんが、できないことはない、ということです。先週、ガイトナー財務長官に野次が浴びせられはしましたが。

 

そして、基本戦略ははっきりしています。FRBFDIC、財務省の権限を活用して、TALF(ターム物資産担保証券貸出制度)やP-PIF(官民共同投資ファンド)など、政府支援の影の銀行を創設するのです。

 

どのような方式をとるのでしょうか? 財務省が自由に使える税金(まだ3,500億ドルあります)のごく一部を使って、政府支援の影の銀行に出資し、FRBが紙幣印刷機をフル回転して作った資金で猛烈なレバレッジをかける。これがTALFのやり方であり、掛け目の部分を除けば、ノンリコース(非遡及)でレバレッジをかけ、証券市場を再始動させるのです。

 

同じやり方は、民間セクターが買い取る可能性がありそうな傷んだ銀行資産に対し、FDICの損失補償を追加する、という観点から言えばP-PIFにもあてはまります。こうしたお土産をつければ、プレーヤーは、これらの資産に十分に高値を支払えるようになり、売り手の銀行の破綻が回避できると期待されています。

 

残念ながら、ガイトナー財務長官は、これら3つの材料の正確な配合を示さなかったため、市場は混乱状態に陥りました。しかし、間違えないでください。これは材料であり、これと並行して、必要な銀行には引き続き、直接的な資本注入が行われるのです。

 

アメリカ政府は、機能不全に陥った伝統的な銀行システムに代わって、レバレッジ比率を高め、リスクを高めることができます。伝統的な銀行システムが、まさに逆の動きをしている時に。

 

もちろん、これには補助金を伴うでしょう。補助金は巨額になる場合もありえます。そして、もちろん、このプロセスは恣意的で気まぐれに思え、不公平感が漂うこともあるでしょう。それは、機能不全に陥った銀行システムを、民間のままで政府が救済しようとする場合に、致し方ないことです。

 

読者のみなさんは、気に入らないかもしれません。私もいい気はしません。規制当局は、伝統的銀行であれ、影の銀行であれ、銀行を野放しにしておくべきではありませんでした。しかし、野放しにしました。

 

だからこそ今、どれほど醜悪な臭いがしたとしても、鼻をつまんでやるべきことをやらねばならないのです。それは気持ち良いとか悪いとかではなく、必要なのですから。

 

政府のバランスシートを全面的に活用することによってのみ、ディレバレッジのパラドックスを断ち切ることができるのです。

 

ポール・マカリー

マネージング・ディレクター

2009216


 
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1 「レバレッジ引き下げのパラドックスは断ち切られるだろう」GCBF2008年11月号

2 「The Money Marketeers Clubの講演から ミンスキーと中立:順行と逆行」GCBF2007年12月号

3  「レバレッジ引き下げのパラドックス」GCBF2008年7月号

「総動員」GCBF2008/09年 12/1月号

 

 

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