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Bond Basics
2007年10月
PIMCOのリスク管理(1)~ 金利リスクの管理
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はじめに 

ポートフォリオの価値が、市場の動きによってどのように変化する可能性があるか、すなわちポートフォリオのリスク・ポジションがどのようになっているか、を管理することは、運用上必要不可欠です。こうした、いわゆるポートフォリオ・リスク管理については様々な手法が開発されており、また、その管理手法は投資資産クラスによっても異なるでしょう。

PIMCOでは、債券ポートフォリオを運用するにあたり、トラッキング・エラーやバリュー・アット・リスク(VAR)といったモデルにより、リスクを一元的に捉えようとするアプローチのみに拠らず、むしろ複数の市場の変動要因にリスク要因を分解し、管理していくアプローチを主に採用しています。

ポートフォリオの価値に影響を与えるリスク要因としては、まず金利水準の変化、またイールドカーブの形状の変化(長短金利差の変化)、更に国債以外のセクターに投資をすれば、国債と国債以外の債券セクターの利回り格差(スプレッド)、為替(通貨リスク)等、の要因が挙げられます。PIMCOではこうしたそれぞれのリスク要因毎に、運用ポートフォリオがどの程度市場の変動に対する感応度(リスク・ポジション)を取っているか、を適切に把握するべく、数多くの管理ツールを自社開発しています。

 

債券運用においてPIMCOが管理する主なリスク要因およびその管理手法について、まず本編では、金利リスクの管理を紹介します。

 

デュレーション ~金利水準の変化による債券価格(ポートフォリオ価値)変動リスク

 かつては、債券ポートフォリオ保有銘柄の平均残存期間が金利水準の変化に対するポートフォリオのリスク指標として用いられていました。しかし、平均残存期間の欠点は、債券が償還される一時点しか考慮していないことにあります。債券価格は基本的に、将来の償還までに得ることのできる元利払い(キャッシュフロー)を直近の金利で割り引き、現在価値に引きなおしたものと考えられるため、元本償還のみならず、償還までに支払われる全てのクーポンについてもキャッシュフローとして認識する必要があります。

 

将来得ることのできるキャッシュフローを現在価値に割り引くための金利が上昇すれば、債券の価格は下がり、逆に低下すれば債券の価格は上がる、ということになりますが、そうした金利水準の変化に対して債券価格がどの程度変化するか、という指標がデュレーションです。

 

デュレーションの単位は年数で示され、例えばある債券のデュレーションが2年であれば、金利が1%上昇すれば2年×1%でその債券の価格は概ね2%下落する、逆に金利が1%低下すれば債券価格は概ね2%上昇する、と計算することができます。1  なお、ここでの金利の変化は全ての年限の金利が同じ幅上昇ないし低下する平行移動を想定します。

 


なお、債券ポートフォリオ全体のデュレーションは、ポートフォリオで保有する全ての債券のデュレーションを時価加重平均したものと考えられます。

 

 

コンベクシティー 

デュレーションというリスク指標で計測する債券価格の変化度合いが「概ね」と表現されるのは、デュレーションのみでは、金利水準の変化による債券価格の変化を完全には説明できないためです。特に、金利水準の変化が大きなものであると、デュレーションのみでは説明されない部分は大きくなります。なぜなら、金利水準の変化により、債券のデュレーション自体が変化してしまうためです。ここで、デュレーションに加え、コンベクシティーという指標が用いられます。

 

(図表2)に示されるように、コンベクシティーには「正のコンベクシティー」と「負のコンベクシティー」があります。正のコンベクシティーは、オプションを内包しない国債等の債券が有する特徴で、金利が低下したときに債券価格が上昇する割合の方が、同単位の金利が上昇したときに債券価格が下落する割合よりも大きくなります。(図表2)では、青色の実線が、金利変化による実際の債券価格の変化を示し、緑色の点線の傾きがデュレーションによって計測される、金利変化による債券価格の変化率を示します。コンベクシティーが正である場合、金利低下時は、債券価格は緑色の点線の傾き以上に上昇し、また金利上昇時は点線の傾きほど債券価格は低下しません。

 

一方、モーゲージ債2 のようにオプションの売りを内包している債券は、負のコンベクシティーの性質をもちます。負のコンベクシティーは、正のコンベクシティーとは逆に、金利が低下したときに債券価格が上昇する割合のほうが、同単位の金利が上昇したときに債券価格が下落する割合よりも小さくなります。(図表2)では、金利低下時は、デュレーションによって計測される債券価格の変化率(緑色の点線の傾き)ほど債券価格は上昇せず、また金利上昇時はこの傾き以上に価格が低下します。

デュレーションによる計測では、金利の上昇、低下に対して常に同率(図表2の緑色の点線)の債券価格変化となってしまうため、金利水準の変化が大きくなるほど、このコンベクシティーの性質を捕捉できません。

 

(図表2)金利水準の変化とコンベクシティー

 


 

ブル / ベア デュレーション

コンベクシティーの計測は、オプションを内包しない債券であれば、満期までの債券保有によるキャッシュフローが確定しているため、さほど複雑なものとはなりませんが、オプションを内包している債券については、将来のオプション行使によるキャッシュフローの変化を予測せねばならず、高度な計量モデルの構築が必要となります。但し、どんなにモデルの精度を向上させたとしても、モデルは常に完全なものではありません。

そこで、PIMCOでは、金利水準が比較的大きく変化(平行移動)した場合のポートフォリオのリスク管理にあたり、「ブル・デュレーション」および「ベア・デュレーション」という独自のリスク指標を開発、利用しています。それぞれの定義は以下のとおりです。

 

ブル・デュレーション:イールドカーブ全体の金利水準が一様に50bps低下した場合の、ポートフォリオの実効デュレーション

 

ベア・デュレーション:イールドカーブ全体の金利水準が一様に50bps上昇した場合の、ポートフォリオの実効デュレーション

 

PIMCOでは、ポートフォリオが保有する銘柄について、こうしたショック要因が発生した場合のデュレーションの変化を予測し、ポートフォリオ全体のブル・デュレーション、ベア・デュレーションを計算しています。それぞれの個別銘柄に適した分析モデルを適用することで、標準化されたコンベクシティー計測モデルにおける仮定条件から発生するエラーを回避します。

 

イールドカーブ 

デュレーション、コンベクシティー、およびブル/ベア・デュレーションの各指標は、イールドカーブ全体の金利水準が同じ幅で変化(平行移動)した場合の、債券ポートフォリオの価値の変化度合いをみるための指標ですが、実際の金利の変化は、必ずしも各年限同じだけ変化(平行移動)するわけではありません。従って、ポートフォリオのデュレーションが同一であっても、金利が平行移動でない変化をした場合には、実際、イールドカーブ上のどの年限にポジションをとっているかによって、ポートフォリオのリターンは異なります。

 

例えば、(図表3)のポートフォリオAは、デュレーションが5年の債券のみを時価ベースで100%保有している一方で、ポートフォリオBは、デュレーションが10年の債券を50%とキャッシュを50%保有しているとすると、デュレーションはポートフォリオAもポートフォリオBもほぼ5年です。なお、ポートフォリオAのように、中期ゾーンにポジションが集中しているポートフォリオをブレット・ポジション、ポートフォリオBのように、短期ゾーンと長期ゾーンにポジションをとっているポートフォリオをバーベル・ポジションと呼びます。

 

(図表3)に示されるように、仮に、5年ゾーンの金利上昇幅が10年ゾーンの金利上昇幅より小さい場合、ポートフォリオAの方がポートフォリオBよりも相対的に高いリターンとなります。この場合、イールドカーブはスティープ化(長短金利差が拡大)しており、スティープ化の場合は通常、ポートフォリオAのようなブレット型のポジションが有利となります。

 

逆に、デュレーション5年ゾーンの金利上昇幅が10年ゾーンの金利上昇幅より大きい場合は、ポートフォリオBの方がポートフォリオAよりも高いリターンとなります。この時イールドカーブはフラット化(長短金利差が縮小)しており、フラット化の場合は通常、ポートフォリオBのようなバーベル型のポジションが有利です。(なお、上記ポートフォリオBで、キャッシュを50%保有している部分は、キャッシュであればデュレーションがほとんどないため、金利変化による価格変動は限定的といえます。)

 

(図表3)同デュレーションでも異なるイールドカーブ上のポジション例と、イールドカーブの形状変化による影響

 

     

      

PIMCOでは、ポートフォリオがどの程度のスティープ化戦略(長短金利差の拡大にかける戦略)ないしフラット化戦略(長短金利差の縮小にかける戦略)のリスク・ポジションをとっているかを管理する指標として、カーブ・デュレーションを用いています。これは、カーブの傾き(すなわち長短金利差)1単位の動きに対して、ポートフォリオの価値がどのくらい変化するか、を予測する指標です。

 

カーブ・デュレーションがプラスである場合、スティープ化戦略ポジションをとっていることを意味します。例えば、償還までの期間が2年から30年のレンジのイールドカーブについて、プラス2年のカーブ・デュレーションをとっている場合、2年と30年の金利差が1ベーシスポイント広がる(スティープ化する)と、ポートフォリオは2年×1 ベーシスポイント = 2ベーシスポイントのプラス、を意味します。逆に、2年と30年の金利差が1ベーシスポイント縮まる(フラット化する)と、2ベーシスポイントのマイナスです。

カーブ・デュレーションがマイナスである場合、フラット化戦略ポジションをとっていることを意味し、マイナス2年のカーブ・デュレーションをとっている場合、2年と30年の金利差が1ベーシスポイント縮小すると、ポートフォリオは2ベーシスポイントのプラスです。

 

なお、PIMCOでは、2年~30年の区切りのみならず、2年~10年の短中期ゾーン、および10年~30年の長期超長期ゾーン、と区切ってリスクを一般的に管理しています。

 

もっとも、カーブ・デュレーションという単一の指標で、イールドカーブのリスクポジションを完全に把握することは困難です。そこで、PIMCOでは、イールドカーブ上の年限を幾つかのブロックに区切り、どの年限でどのくらいのデュレーションをとっているのか、との管理手法を用いて、より精緻なイールドカーブのリスク管理を行っています。

 

時価加重デュレーション・マトリックス

(図表4)に示されるように、ポートフォリオ内で、例えばドル金利については、どのデュレーション年限でどのくらいのポジションをとっているのか、を時価加重ベース(DWEDuration Weighted Exposure)で示すことで、より細かいデュレーション年限別の金利リスク・ポジションを把握します。PIMCOでは、ポートフォリオ、およびベンチマークに対してそれぞれ全ての銘柄のデータを自社システムに日々インプットし、ポートフォリオ、ベンチマークそれぞれの時価加重デュレーション・マトリックスを計測しており、このポートフォリオとベンチマークの差をアクティブ・ポジション(投資戦略として意図的に取得しているポートフォリオからの乖離リスク)として常に把握しています。時価加重デュレーション・マトリックスは、ポートフォリオ全体のみでなく、(図表4)のように、地域別に分解して管理しています。

 

(図表4)時価加重デュレーション・マトリックスの例

 


 

PIMCOシステムにおける、時価加重デュレーション・マトリックスでは、デュレーション年限の区切りを自在に変更することができ、ベンチマークによって異なるポートフォリオ・マネージャーが意図するリスク管理をより適切に行うことが可能です。また、上記の例では、デュレーション年限区切りと地域別のマトリックスを示していますが、債券セクター別の切り口で表示をすることも可能です。

 

 

次回ボンド・ベーシックスでは、国債以外の債券セクターへのポジションに関するリスク等、金利リスク以外のリスクに対するPIMCOのリスク管理を紹介します。

 

 

* 本編は、PIMCO LLC ”Risk Measurement at PIMCO” をもとに編集したものです。



1  デュレーションについては、ボンド・ベーシックス「デュレーションの解説」をご参照ください。

2 モーゲージ債については、ボンド・ベーシックス「モーゲージ債の解説」をご参照ください。

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(注)PIMCOはパシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー・エルエルシーを意味します。

 



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