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Bond Basics
2007年7月
クレジット・デフォルト・スワップの解説
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クレジット・デフォルト・スワップとは
クレジット・デフォルト・スワップ(以下CDS)は、現物債券を取引することなくその発行体の信用リスク(デフォルト・リスク)のみを取引するためのツールであり、債等のデフォルトに対するプロテクション(保証)を売買します。

CDS取引は金利スワップ1と同様、相対取引で行われます。例として、ある投資主体(カウンターパーティーAとする)がX社のある特定の社債の信用リスクに対するプロテクションを別の投資主体(カウンターパーティーB)に売却するとします。仮に、参照されているX社債がデフォルトした場合には、カウンターパーティーAがカウンターパーティーBに対してCDS取引で想定された元本相当額を支払うと同時にカウンターパーティーBはカウンターパーティーAにデフォルトした同額面の現物を受け渡すこととなります。

カウンターパーティーBのように信用リスクに対するプロテクションを購入する主体は、CDS取引と同銘柄の現物社債を保有していることが多く、保有しているX社の現物社債と同銘柄のプロテクションを購入することにより、X社がデフォルトした場合の元本リスクをヘッジすることができます。一方、カウンターパーティーAは、カウンターパーティーBに対してプロテクションを売却、すなわちデフォルトした場合の元本保証を提供することにより、カウンターパーティーBからプレミアム(保証に対する対価)を受け取ります。

CDS取引においてプロテクションを売却しているカウンターパーティーAは、デフォルトした場合の元本リスクを負うことになるため、X社債のクレジットを保有する(ロング)ポジションをとっているといえます。一方、プロテクションを購入しているカウンターパーティーBX社のクレジットを売却する(ショート)ポジションをとっているといえます。

 

 一般的なCDS取引の仕組み 

                                       出典:Credit Derivatives and Synthetic Structures, John Wiley & Sons. 2001

そもそもCDSは現物でクレジットを保有する投資主体が、その信用リスクをヘッジするためのツールとして開発されましたが、一方で、PIMCOのようなクレジットへの投資家からは、現物社債投資への代替的なツールとして利用することが可能です。

 

 

クレジット・デフォルト・スワップにおけるキャッシュフロー
より具体的な例をみてみましょう。

従来の債券投資では、投資家AX社債購入時に債券価額を支払い、満期まで利払いを受け取り、満期時に元本償還を受けます。従って投資家Aは満期までの間X社の元本リスクを負っていることとなります。

一方、投資家ACDS取引によって、X社の信用リスクに対するプロテクションを売却する場合は、満期までプレミアム(社債の利払いに相当)を受け取りますが、通常の金利スワップ同様、スワップ設定当初は額面に相当する支払いは発生しません(満期時の元本償還もありません)。投資家ACDS取引におけるプレミアムを受け取ることにより、現物債に投資をした場合に利払いを受け取るのと同様のキャッシュフローを得ることができ、また、現物債券投資の場合と同様のX社のデフォルト・リスクを負っているため、CDS取引においてプロテクションを売却することは同クレジット銘柄の現物債券に投資するのと同様の効果があるといえます。

なお、CDSの場合、通常LIBORに連動させてプレミアムを支払うことが多いため、現物債券であれば変動利付債に投資しているのと同様の効果があります。従って、投資に際してデュレーション・リスクは発生しません。

 

現物社債保有とCDS・プロテクションの売却ポジションにおける

キャッシュフロー比較例

 

<取引例>

現物債保有:

投資家Aは額面1億円のX社の変動利付債(クーポンはLIBOR20bps、満期まで5年)を購入。満期までX社の利払いを受取。X社のクレジット・リスクを負う。

 

CDS・プロテクションを売却:

投資家Aは額面1億円相当のプロテクションを売却(プレミアムはLIBOR20bps2満期まで5年)。満期までスワップの相手方(証券会社など)からプレミアムを受取。X社のクレジット・リスクを負う。なお、CDSの利用に際しては、当初、元本の払込が必要とされないため、手元に残ったキャッシュ1億円を短期運用(LIBORで運用)。

 

上記例において、デフォルトが発生せず、満期まで現物社債ないしCDSのポジションを保有した場合の投資家Aのキャッシュフローをそれぞれ描くと以下のようになります。 

 

X社現物変動利付債への投資した場合のキャッシュフロー>

 

                  

 

 

CDSX社債のプロテクションを売却し、同額面のキャッシュを短期(LIBOR)運用した場合のキャッシュフロー> 

   

 

前述のとおり、CDSにおいてプロテクションを売却した投資家Aのキャッシュフローは、結果として同銘柄の現物社債を保有する場合と同様のキャッシュフローとなります。

 

では、X社のデフォルトが発生した場合はどのようになるでしょうか?

現物債を保有している場合、投資家Aの手元にはデフォルトしたX社債が残りますが、その価格は通常額面1億円よりも大幅に低いものとなります。従って、債券の元本1億円とデフォルト後の社債価格の差額が投資家Aにとっての損失となります。

 

一方で、投資家ACDSでプロテクションを売却している場合は、カウンターパーティーB との間で以下のようなやり取りが行われます。カウンターパーティーAは想定元本1億円を支払う一方で参照している現物のX社債を受け取るため、損失額は1億円とデフォルトした現物社債価格の差額となります。従って、Aは現物を保有している場合と同様の損失を受けます。

                         

 

*デフォルト時の決済方法は各CDS契約において規定されますが、最も一般的な決済方法は、上記図のように、カウンターパーティーAが想定元本額をカウンターパーティーBに支払う一方で、カウンターパーティーBは同元本額のX社債を引き渡す方法です。このほか、X社債の元本と時価の差額のみを現金で決済する方法もあります。

クレジット・デフォルト・スワップの発達 

そもそもCDS取引は、銀行が保有するクレジット・エクスポージャーを他に移転し、引当金を軽減する目的から形成されました。その後、CDSが普及するに従い、その取引形態も標準化されるようになりました。特に2002年にワールド・コムやエンロンの破綻問題が発生した際にもCDS市場が円滑に機能したことから、よりCDSの利用は拡大しました。CDS市場の主な参加者は銀行、再保険会社などのほか、最近では資産運用会社による利用も増加しています。

 

                                               拡大するクレジットデリバティブ市場

 

           

 出典:イギリス銀行協会「クレジットデリバティブレポート2006

 

注:イギリス銀行協会は2006年のクレジットデリバティブ調査において該当商品範囲を大幅に改定。上記2006年調査のうち、単一銘柄CDSの割合は33%となっている。

なお、CDSに取引おける信用リスクの取引対象としては企業信用リスクのほか、エマージング・マーケット諸国の信用リスクも一般的です。CDS取引を組む際にプロテクション売買の対象となる発行銘柄を参照銘柄といいます。CDS取引は相対取引であるため、設定期間はカウンターパーティー間で自由に設定することができますが、5年が最も標準的な設定期間となっています。

最近では、一発行体の信用リスクを対象とするCDSのほか、複数の発行体のクレジットリスクを束ね、CDSインデックスとして取引する形態も拡大しています。

 

 

債券運用におけるクレジット・デフォルト・スワップの活用

 PIMCOのような債券運用マネージャーによるCDS取引が急速に拡大した理由は、CDSがアクティブ・ポートフォリオ・マネジメントにおける社債、エマージング・マーケット債等に対するクレジット・エクスポージャーの管理をよりカスタマイズしやすくし、運用者の意図するリスクポジションをとりやすくする便宜性にあるといえるでしょう。一般的なCDSの利用目的としては以下の例が挙げられます。 

  • クレジット・イベント・リスク(デフォルト・リスク)3 に対するヘッジ
  • 現物債券のロング・ポジションと同様のクレジットリスクをCDSのショートにより取得
  • 現物債券市場には必ずしも存在しない取引(償還)期間の設定
  • 現物債券の流動性が少ない発行体に対するクレジットリスクの取引
  • 通貨リスクを排除した外国の発行体銘柄に対する投資

 なお、CDSの価値評価は現物社債と同様、クレジット・スプレッドの変化によって計測されます。CDSを組む際、プレミアムを例えばLIBOR20bpsのように取り決めますが、このプレミアム幅は、その発行体の信用リスクが高まれば拡大し、低まれば縮小します。

従って、ある時点において、カウンターパーティーAが、X社の信用リスクに対するプロテクションを売却してLIBOR20bpsのプレミアムを受け取るというCDSを組んだとします。仮に1ヶ月後に同様のCDSを組むためのプレミアムがLIBOR10bpsなった(すなわち、市場が織り込むX社の信用リスクが低下した)場合、1ヶ月前に設定したCDSによりLIBOR+20bpsのプレミアムを得ているカウンターパーティーAにとっては、そのCDSはプラスの時価評価となります。一方、1ヶ月前にプロテクションを購入したカウンターパーティーBのポジションはマイナスの時価評価となります。これは、仮にAが、現物のX社債に投資しており、投資後のX社のクレジット・スプレッドが縮小した場合に保有債券の時価評価が上昇するのと同様の効果といえます。

従って、CDSのポジション保有に際しては、デフォルト・リスクのみでなく、利回りスプレッドの拡大/縮小リスクをも取得することとなり4 、まさに社債、エマージング債などの現物のクレジット投資と同様のエクスポージャーを取得するための有効なツールであると考えられます。



1ボンド・ベーシックス「金利スワップの解説」をご参照ください。

2本稿では解説のために現物変動利付社債のクーポンとCDSのプレミアムを同値(LIBOR+20 bps)としておりますが、実際のマーケットにおいては両者が必ずしも一致するわけではありません。
3 クレジット・イベントの内容については、CDS取引者間で合意がなされますが、一般的な内容は参照企業の倒産、元利払の不履行、債務整理、債務返済拒否(モラトリアム)、期限の利益喪失等です。

4なお、金利スワップと同様、CDSは相対取引であるため、スワップの相手方であるカウンターパーティーが支払いをきちんと履行するか、というカウンターパーティー・リスクの管理も重要です。

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