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Bond Basics
2006年10月
金利スワップの解説(1)~金利スワップの仕組み

はじめに: スワップ取引とは?

スワップ取引とは、2者がある一定期間にわたり将来のキャッシュフロー(資金の流れ)を交換する契約です。

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スワップ取引は先物取引のように取引所に上場されている取引ではなく注1、相対(あいたい)契約によるものであるため、取引条件が規格化されてはおらず、契約を結ぶ2者間で取り決めることができます。(但し、上場されているスワップ取引としては、スワップ先物があり、これは将来スワップ取引を行うことを約束する取引です。)

1:先物取引についてはボンド・ベーシックス「債券及び金利先物取引の解説」を参照ください。

上記の様に契約当事者間で自由に条件を設定できるスワップ取引にはさまざまな種類・契約形態がありますが、本稿では一般的に最も利用されているスワップ形態のひとつであり、また、今日、債券運用における非常に有効なツールとしても普及が高まっている金利スワップについて解説します。

 

金利スワップ市場の規模と流動性
金利スワップの利用は過去数年間で急速に拡大し、その流動性は非常に高いものとなっています。BIS(国際決済銀行)のデリバティブ統計によれば、2006年末のOTC*2金利スワップの想定元本ベースの残高は229兆ドルにも達しています。


金利スワップの仕組み
金利スワップとは、あらかじめ決められた金利を将来の一定期間にわたり2者間で交換する取引です。最も一般的な形態は、一方(スワップ取引の当事者を「カウンターパーティー」と呼びます)が固定金利を支払い、もう一方のカウンターパーティーが変動金利を支払う取引です。例えば、カウンターパーティーAはカウンターパーティーBに対し今後1年間にわたり年率4%の固定金利を3ヶ月毎支払い、BAに対しLIBOR*3金利を同様に3ヶ月毎に支払う、という取引です。LIBOR金利は毎支払い時のレートが適用されるので、将来時点の金利は変動します。

 

注3:LIBOR(London Interbank Offered Rate)は、ロンドンのインターバンク市場における銀行間での貸出金利で、英国銀行協会(British Bankers’Association)により日々集計されます。ドル、ユーロ、円、ポンドについては、16行が1週間物から12ヶ月物のレートを日々提示し、それぞれの期間について英国銀行協会が上下4行ずつを除く残りの8行の平均をとります。

 


(図3

                               

では、具体的にどのように支払い金額が決定されるのでしょうか。固定金利、変動金利それぞれの金利レートおよび期間を取り決める以外に必要なのが、「想定元本」の設定です。債券のクーポンが債券額面に利率を乗じて決まるように、金利スワップにおいてもこの想定元本に固定ないし変動金利を乗じて支払い額は決まります。ただし、想定元本とは、その言葉が表すとおり、想定上の元本であり、金利支払いを算出する際の額面金額となりますが、実際に2者間で元本がやりとりされるものではありません。

例として、想定元本が1億円、期間1年で3ヶ月おきにカウンターパーティーAが年率4%の固定金利を支払い、カウンターパーティーBから3ヶ月LIBOR(変動金利)を受け取る1年間のスワップを組んだ場合の3ヶ月毎のカウンターパーティーAのキャッシュフローを計算すると以下のようになります。



カウンターパーティーAの3ヶ月毎のキャッシュフロー

支払い額

100,000,000円 × 4% × 1/4 ⇒ 1,000,000円 で固定

受け取り額

100,000,000円 × その時点の円3ヶ月LIBOR金利 × 1/4                                      ⇒ 毎回変動

 

これを図で示すと以下のようになります。

 


(図4)カウンターパーティーAのキャッシュフロー

 

カウンターパーティーBのキャッシュフローはAと反対方向の流れですから、Bは受取額が固定、支払い額が毎回変動します。

 

金利スワップの活用法

金利スワップは、ある主体が現在保有しているキャッシュフローの特性をカスタマイズ、および変更するための便利なツールとして、金融機関および事業法人によって幅広く利用されています。ここでは一般的な金利スワップの活用例を紹介しましょう。

 

(1) 受取金利を固定でロックする
例えばある銀行Cが、LIBORに利払いを連動させた住宅ローンの貸し付けを行っているケースを考えます。そして仮に、銀行C今後短期金利が低下するという見通しをもっており、実際に短期金利が低下して住宅ローンの利払い受取額が減少していくことを回避したいというニーズがあるとします。

 


(図5-1

            

 

ここで、銀行Cは、LIBOR、すなわち変動金利を支払って、固定金利を受け取る金利スワップを銀行Dと組めば、LIBORに連動する住宅ローン金利の受け取りと、銀行Dに対するLIBORベースの支払いが相殺され、実質的に受け取る金利を固定化することができます。そして将来短期金利が予想通り低下したとすれば、それによる利払いの受取額の低下を回避することができます。


(図5-2
               

 

(2)受取金利と支払金利の特性を合わせる

また、上記銀行Cは、企業Eに対し、利払いをLIBORに連動させた貸し出し行っているとします。一方で、預金を固定金利1%で受けているとすると、この銀行Cが受け取る金利は変動する一方、支払う金利は固定しています。従って、もし市場で金利が低下すると、受け取り方の金利のみが減少してしまうことになります。

(図6-1

この時、支払い方の金利もLIBORに連動させることができれば、受取と支払いの金利は共にLIBORベースとなり、負債(預金)と資産(貸出)の金利特性をマッチングさせることが可能となります。以下の図では、銀行Cが銀行Dに対してLIBORを払うスワップを組むことで、企業EからLIBORベースで受け取るキャッシュフローを銀行DへLIBORベースで支払うキャッシュフローとマッチさせていることを示しています。

(図6-2

金利変動と金利スワップの価値の変化
では、金利スワップを設定した後、金利スワップの価値はそれぞれのカウンターパーティーにとって、どのように変化するでしょうか。まず、金利スワップを組んだ時点においては、双方のカウンターパーティーにとって価値はいずれもゼロとなるように固定金利が設定されます。この、現時点で市場が織り込む将来の変動金利(LIBOR)と同価値になるような固定金利を通常「スワップ金利」と呼びます。スワップの流動性は非常に高いことから、このスワップ金利は国債利回りと同様、指標性のある金利として広く参照されています。

 

次にスワップ金利設定後の価値の変化を考えると、カウンターパーティーAが想定元本1億円に対して年率4%の固定金利を支払い、LIBOR受け取る金利スワップを組んだ場合、スワップ設定以後のある時点において、市場で決定されるスワップ金利が4%以上になれば、Aにとってこのスワップ取引の価値はプラスです。逆に市場のスワップ金利が4%以下になれば、Aにとってマイナスとなります。この概念を図で示すと以下のように考えられます。

 

まず、上記のように、カウンターパーティーABに対し年率4%の固定金利を支払い、LIBORBから受け取る金利スワップを設定します。


(図7-1
                            

次に、上記金利スワップを設定した後、カウンターパーティーAは、固定金利を受け取り、変動金利LIBORを支払う新たな金利スワップをカウンターパーティーBと組むことで、当初に設定した金利スワップにおけるLIBORの受け取りと固定金利の支払いを相殺するとします(図7-2)。この、新たに金利スワップを設定する時点で市場が決定するスワップ金利が5%であれば、A4%の固定金利を支払い、5%の固定金利を受け取ることができます。すなわち当初設定した金利スワップは、この時点でAにとってプラスの価値となっているということができます。4

 

4:説明簡素化のために、当初の金利スワップ設定後から新たに反対の金利スワップポジションを組む現在までの経過損益および、金利スワップの残存期間については省略します。

 

(図7-2)

逆に、当初の金利スワップ設定後、市場でスワップ金利が3%に低下すれば、当初の金利スワップと反対のポジションの金利スワップを組んでも、Aは4%の固定金利支払いに対して3%の固定金利しか受け取ることはできず、当初設定した金利スワップはこの時点で、Aにとってマイナスと価値となっているということができます(図7-3)。


(図7-3)

従って、今後金利が上昇することを予想する場合、固定金利を支払い、変動金利を受け取る金利スワップを組めば、実際に金利が上昇するに伴って利益が発生することになります。逆に、金利上昇を予想し、固定金利を支払うポジションを組んでも、実際に市場では金利が低下すれば、損失が発生することになります

 

 

 

 

金利スワップにおけるカウンターパーティー・リスク

金利スワップ取引の多くは、取引所取引でなく、相対取引で行われますが、金利スワップ取引は、一般的な債券取引と異なり、元本の交換を伴わないため、元本部分にリスクはありません。ただし、スワップの相手方(カウンターパーティー)による想定元本に対する金利の支払いがきちんと履行されるか、というカウンターパーティー・リスクの管理は必要となります。一般的に、金利スワップの相手方として取引するのは銀行や証券会社が多いため、金利スワップの信用格付けはAA程度と高水準にあります。

 

(図8)対米国債スプレッドからみるスワップのクレジット
  

出所:Bloomberg, Salomon Analytics, Lehman Brothers

注5:政府機関債およびAA格~B格の債券の対米国債スプレッドはいずれも残存期間5年程度の中期債のデータ。金利スワップの対米国債スプレッドは5年物のデータ。2006年9月末時点。

 

  

以上、金利スワップの特性、およびその一般的な活用法、金利スワップの価値の変化等について説明しましたが、金利スワップは債券運用においても非常に有効なツールとなっています。ボンド・ベーシックス「金利スワップの解説(2)」では、債券ポートフォリオにおける金利スワップの活用について解説します。

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