(図1)

スワップ取引は先物取引のように取引所に上場されている取引ではなく注1、相対(あいたい)契約によるものであるため、取引条件が規格化されてはおらず、契約を結ぶ2者間で取り決めることができます。(但し、上場されているスワップ取引としては、スワップ先物があり、これは将来スワップ取引を行うことを約束する取引です。)
注1:先物取引についてはボンド・ベーシックス「債券及び金利先物取引の解説」を参照ください。
上記の様に契約当事者間で自由に条件を設定できるスワップ取引にはさまざまな種類・契約形態がありますが、本稿では一般的に最も利用されているスワップ形態のひとつであり、また、今日、債券運用における非常に有効なツールとしても普及が高まっている金利スワップについて解説します。
金利スワップ市場の規模と流動性 金利スワップの利用は過去数年間で急速に拡大し、その流動性は非常に高いものとなっています。BIS(国際決済銀行)のデリバティブ統計によれば、2006年末のOTC*注2金利スワップの想定元本ベースの残高は229兆ドルにも達しています。
金利スワップの仕組み 金利スワップとは、あらかじめ決められた金利を将来の一定期間にわたり2者間で交換する取引です。最も一般的な形態は、一方(スワップ取引の当事者を「カウンターパーティー」と呼びます)が固定金利を支払い、もう一方のカウンターパーティーが変動金利を支払う取引です。例えば、カウンターパーティーAはカウンターパーティーBに対し今後1年間にわたり年率4%の固定金利を3ヶ月毎支払い、BはAに対しLIBOR*3金利を同様に3ヶ月毎に支払う、という取引です。LIBOR金利は毎支払い時のレートが適用されるので、将来時点の金利は変動します。
(図3)

これを図で示すと以下のようになります。
 (図4)カウンターパーティーAのキャッシュフロー
金利スワップの活用法
金利スワップは、ある主体が現在保有しているキャッシュフローの特性をカスタマイズ、および変更するための便利なツールとして、金融機関および事業法人によって幅広く利用されています。ここでは一般的な金利スワップの活用例を紹介しましょう。
(図5-1)
ここで、銀行Cは、LIBOR、すなわち変動金利を支払って、固定金利を受け取る金利スワップを銀行Dと組めば、LIBORに連動する住宅ローン金利の受け取りと、銀行Dに対するLIBORベースの支払いが相殺され、実質的に受け取る金利を固定化することができます。そして将来短期金利が予想通り低下したとすれば、それによる利払いの受取額の低下を回避することができます。
(図5-2)
(2)受取金利と支払金利の特性を合わせる
また、上記銀行Cは、企業Eに対し、利払いをLIBORに連動させた貸し出し行っているとします。一方で、預金を固定金利1%で受けているとすると、この銀行Cが受け取る金利は変動する一方、支払う金利は固定しています。従って、もし市場で金利が低下すると、受け取り方の金利のみが減少してしまうことになります。
(図6-1)

この時、支払い方の金利もLIBORに連動させることができれば、受取と支払いの金利は共にLIBORベースとなり、負債(預金)と資産(貸出)の金利特性をマッチングさせることが可能となります。以下の図では、銀行Cが銀行Dに対してLIBORを払うスワップを組むことで、企業EからLIBORベースで受け取るキャッシュフローを銀行DへLIBORベースで支払うキャッシュフローとマッチさせていることを示しています。
(図6-2)

金利変動と金利スワップの価値の変化 では、金利スワップを設定した後、金利スワップの価値はそれぞれのカウンターパーティーにとって、どのように変化するでしょうか。まず、金利スワップを組んだ時点においては、双方のカウンターパーティーにとって価値はいずれもゼロとなるように固定金利が設定されます。この、現時点で市場が織り込む将来の変動金利(LIBOR)と同価値になるような固定金利を通常「スワップ金利」と呼びます。スワップの流動性は非常に高いことから、このスワップ金利は国債利回りと同様、指標性のある金利として広く参照されています。
注4:説明簡素化のために、当初の金利スワップ設定後から新たに反対の金利スワップポジションを組む現在までの経過損益および、金利スワップの残存期間については省略します。
金利スワップにおけるカウンターパーティー・リスク
金利スワップ取引の多くは、取引所取引でなく、相対取引で行われますが、金利スワップ取引は、一般的な債券取引と異なり、元本の交換を伴わないため、元本部分にリスクはありません。ただし、スワップの相手方(カウンターパーティー)による想定元本に対する金利の支払いがきちんと履行されるか、というカウンターパーティー・リスクの管理は必要となります。一般的に、金利スワップの相手方として取引するのは銀行や証券会社が多いため、金利スワップの信用格付けはAA程度と高水準にあります。
出所:Bloomberg, Salomon Analytics, Lehman Brothers
注5:政府機関債およびAA格~B格の債券の対米国債スプレッドはいずれも残存期間5年程度の中期債のデータ。金利スワップの対米国債スプレッドは5年物のデータ。2006年9月末時点。
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