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Bond Basics

2006年1月
グローバル債券運用
- 金利リスクと通貨リスクの分別

 

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はじめに

外国債券に投資する際に日本の投資家が得ることのできる日本円ベースのリターンは、外国債券の現地通貨建のリターンと、その外国債券の現地通貨の対円リターンに分解することができます。

 

 

従って、日本の投資家が外国債券に投資する場合には、①金利変動による外国債券自体の価格変動リスクと②対円での為替変動リスクのそれぞれを把握することが重要です。

 

外国債券運用の戦略ポジション(すなわちリスク配分)をみるには、地域別配分によって示されるケースが多くなっています。この場合、ある地域、例えばアメリカの(米ドル建)債券への投資配分によって日本の投資家が得ることのできる投資リターンを円建てで評価する際、リターンを左右するリスク要因としては、上記のように①米国の金利の変動による(米ドル建)債券価格の変化と、②米ドル対日本円の為替レートの変化があり、この二つのリスクを分割して捉えることが重要です。

 

本稿では、外国債券投資における金利のリスクと通貨のリスクをどのようにわけて捉え、また、管理するべきかについて解説します。

 

 

地域別金利リスク配分と通貨リスクの分離とは

まず、地域別の金利リスク配分と通貨リスク配分が分割管理されていない場合、どのようなリスク・エクスポージャーを負うこととなるか、示しましょう。

 

例えば、ある外国債券のアクティブ戦略ポートフォリオの運用者が、金利戦略としては米国(米ドル建)金利の上昇を見込んで米国債券のウェイトを対ベンチマーク比でアンダーウェイトし、一方でユーロ圏の金利低下を見込んでユーロ建債券のウェイトをベンチマーク比でオーバーウェイトする戦略を意図するとします。より具体的には、ベンチマークでは米国、ユーロ圏の債券の時価ウェイト(注1)が50%ずつで、この運用者のとりたい戦略は、米国債券のウェイトが40%でベンチマーク比10%アンダーウェイト、ユーロ圏債券のウェイトは60%でベンチマーク比10%オーバーウェイトであるケースを想定します。(図表1

 

(注1)この段階では金利リスクにおけるデュレーションの長短は簡素化のために考慮せず、すべての債券のデュレーションが一律であるものと仮定し、時価ベース・ウェイトで示しています。金利リスク部分の管理については後段の時価加重デュレーション部分をご覧ください。

 


(図表1)

 

しかしながら、一方で、この運用者は通貨については、米ドルが対ユーロで上昇すると予想しているとすると、為替戦略ではドルを対ベンチマーク比オーバーウェイトし、ユーロを対ベンチマーク比アンダーウェイトする戦略が、望ましいポジションです。この運用者の意図する戦略を表にまとめると図表2のようになります。金利の戦略、すなわち(各債券の現地通貨建ての)債券価格の動きについては、ユーロ圏のほうに妙味があると考えてユーロ建の債券をオーバーウェイトしたいと考える一方、通貨については米ドルをユーロに対してオーバーウェイトしたいと考えています。

 

         (図表2)

 

                    

 

 

このように、金利戦略と通貨戦略は必ずしも同一にとらえるべきではなく、金利戦略でオーバーウェイトしている国が通貨戦略でもオーバーウェイトしたい戦略とは限りません。また、仮に通貨戦略においても金利戦略と同じ地域をオーバーウェイトするとしても、そのオーバーウェイト幅は金利戦略と常に一致するわけではありません。

 

地域別の金利リスク配分と通貨リスク配分が分割されていない場合、債券戦略における地域別時価配分と、通貨戦略における地域別時価配分が同一となり、債券戦略と通貨戦略を独立して反映することができません。

この場合、上記の例では、運用者は金利戦略を優先して米国債券をアンダーウェイトするのに伴って、通貨戦略においても米ドルをアンダーウェイトせざるを得ず、自らの意図しない戦略、すなわちリスク・エクスポージャーを通貨戦略において抱えてしまうこととなります。

 

金利戦略と通貨戦略を分離するツール

運用者が金利戦略および通貨戦略について共に意図する戦略を実現するには、金利戦略と通貨戦略のポジションを別のものとして分断し、実行、管理するツールが必要となります。

 

通貨のエクスポージャーを金利のエクスポージャーと分離してコントロールするために通常使用されるツールに為替の先渡し取引(フォワード)があります。先渡し取引とは、将来のある時点を受け渡し日として、あらかじめ決定した価格ないしレートで行う取引です。将来の受け渡し日を約束していることで、ポートフォリオのリスク・ポジションとしては、現物で保有、或いは売却しているのと同様の効果となります。

 

上記の例では、まず、運用者は、米国(米ドル建)債券をポートフォリオの45%、ユーロ圏(ユーロ建)債券を55%分購入してそれぞれの地域について意図する金利リスクをおさえるとともに、通貨については米ドル55%、ユーロ45%という意図するポジションを構築するために、時価ベースでポートフォリオの10%の米ドルを為替先渡し取引で買う(ロング)一方、10%のユーロを為替先渡し取引で売り(ショート)ます。

(図表3

なお、このような円を通さない為替の取引をクロスヘッジといい、金利戦略と通貨戦略を独立して管理するためには不可欠なツールです。

 

 

(図表3)

 

 

この結果、同ポートフォリオでは、金利戦略で米国の5%アンダーウェイト/ユーロ圏の5%オーバーウェイト、および、通貨戦略で米ドルの5%オーバーウェイト/ユーロの5%アンダーウェイトを実現することができました。

 

なお、為替の先渡し取引は、債券(金利)のエクスポージャーを変更することなく通貨のエクスポージャーをコントロールするツールとして利用されますが、一方で、債券の先渡し取引や債券先物、金利スワップなどは、取引に実際の資金移動を伴わないため、通貨のエクスポージャーに影響を与えずに債券(金利)のエクスポージャーをコントロールするツールとして利用されます。

 

円ヘッジつき外国債券ポートフォリオの場合

上記は外国債券を円ヘッジなしで投資し、それを円建てで評価するポートフォリオの例ですが、円ヘッジをするポートフォリオの場合も同様の仕組みが当てはまります。外国(外貨建て)債券に円ヘッジをつけても、ポートフォリオの各地域別債券の金利変動リスクに対するエクスポージャーはヘッジをしない場合と同様ですが、円ヘッジをつけることによりポートフォリオの通貨エクスポージャーは100%円建てとなり、通貨の変動リスクは対円ではなくなります。(注2 

(注2)もっとも、円ヘッジにはコストがかかります。円ヘッジのコストについてはついては、ボンド・ベーシックスヘッジ付き外債のリターンの仕組み」をご覧ください。

 

下記、図表4-①のベンチマークの例では、債券の時価ウェイトは米国、ユーロ圏がそれぞれ50%で、金利リスクは各地域で50%ずつとっていても、ヘッジ後は全て円建てであるため対円の通貨リスクはありません。ここで、こうした円ヘッジ付きポートフォリオで、金利戦略に加えて通貨戦略をアクティブにとった例を示しているのが図表4-②および4-③です。

 

先ほどのヘッジ無しポートフォリオの例と同様、運用者は米国の金利先高観が高いとみて、米国金利リスクをベンチマーク比5%アンダーウェイトとして米国債券のウェイトを45%、一方ユーロ圏は5%オーバーウェイトして、ユーロ圏債券が55%というポジションをとるとします。こうしたポートフォリオに対して円ヘッジをかけるときに、運用者が仮にドル安、円高を見込んでいる場合、円を先渡しでポートフォリオ時価の100%以上買い(ロング)、一方で米ドルを先渡しで売り(ショート)します。下記図表4-②の例では円を5%ロング(円のエクスポージャーは105%5%がオーバーヘッジ)となり、ドルのエクスポージャーは5%のショートとなっています。(なお、こうした円のエクスポージャーを100%超とするポジションについては運用ガイドラインにおいて許容される場合に限ります。)

 

また逆に、運用者がドル高、円安を見込んでいる場合は、反対に円ヘッジを100%未満とし、そのアンダーヘッジ分ドルを保有することが可能です。下記図表4-③の例では円のポジションは5%ショート(円のエクスポージャーは95%5%アンダーヘッジ)となり、ドルのエクスポージャーは5%となっています。

 


(図表
4)

①ベンチマークのポジション

 

 

 

②アクティブ戦略ポートフォリオのポジション:

通貨戦略は円をオーバーウェイト、ドルをアンダーウェイトする場合

 

 

③アクティブ戦略ポートフォリオのポジション:

通貨戦略は円をアンダーウェイト、ドルをオーバーウェイトする場合

 

 

債券エクスポージャーの管理指標

  ~時価加重デュレーション(DWEDuration Weighted Exposure

 

通貨のエクスポージャーを把握する指標としては時価で何%のリスクをとっているかをみるのが適切ですが、債券(金利リスク)を時価で把握するのは必ずしも適切とはいえません。金利の変動による債券価値の変化を計る指標として一般的に用いられているのがデュレーションです。金利の変化幅に債券のデュレーションをかけることで、金利の変動により債券価格がどの程度変化したか、をおおまかに把握することができます。(注3

 

(注3)デュレーションについての詳細は、ボンド・ベーシックス「デュレーションの解説」をご覧ください。

 

ポートフォリオにおける金利リスクの地域別配分の管理においても、単に時価ベースのウェイトによるのみでなく、デュレーションを加味することが適切といえます。なぜなら、例えば、ポートフォリオに占める時価ベースのシェアは、米国、ユーロ圏債券ともに50%であったとしても、米国債券のデュレーションが3年、ユーロ圏債券のデュレーションが10年であれば、金利変動に対するリスクは同様ではありません。

 

仮に、米国、およびユーロ圏においてイールドカーブ上のすべての年限が一様に1%低下した場合、上記ポートフォリオにおける米国債券のリターンは概ね1% × 3年で3%、一方ユーロ圏債券のリターンは概ね1% × 10年で10%となり、時価ウェイトは同じでも、ポートフォリオに与えるインパクトは異なります。すなわち、図表5に示されるように、デュレーションの長い債券ほど金利の変化による価格の変化が大きく、金利リスクを多くとっていることになります。

 

 


ここで、各地域の債券のデュレーションを勘案した上で、地域別の金利リスク配分を計る指標として用いられるのが時価加重デュレーション(
DWE)です。時価加重デュレーションは、以下のように算出されます。

 

 

図表6-①はアクティブ戦略ポートフォリオとベンチマークの金利リスクを時価加重デュレーションで示した例ですが、アクティブ戦略ポートフォリオにおいて米国の時価ウェイトはベンチマークと同じであるものの、デュレーションがベンチマークよりも短く(短期ゾーンを重視した戦略をとっていることを示す)、結果として時価加重デュレーションはベンチマークをアンダーウェイトしており、米国の金利エクスポージャーはベンチマークよりも小さい、といえます。

 

なお、同じアクティブ戦略ポートフォリオで通貨戦略については米ドルをオーバーウェイト、ユーロをアンダーウェイトするポジションを為替先渡し取引を用いて構築した例を示すのが図6-②です。米ドルを先渡しで5%ロングし、ベンチマーク対比オーバーウェイトする一方、ユーロを先渡しで5%ショートすることでアンダーウェイトしています。

 

これにより、米国については金利戦略でアンダーウェイト、通貨戦略でオーバーウェイトし、一方でユーロ圏については金利戦略でオーバーウェイト、通貨戦略でアンダーウェイト、とそれぞれの地域について金利戦略と通貨戦略が独立して構築されています。

 

 

(図表6)
 

① 金利戦略のポジション(DWEベース)

 

(注4)アクティブ戦略ポジションのベンチマークとの差がマイナスであれば、対ベンチマーク比アンダーウェイト、プラスであれば対ベンチマーク比オーバーウェイトを示します。

 

 

通貨戦略のポジション(時価ベース)

 

まとめ

以上のように、外国債券運用において、運用者の債券(金利)に対する戦略、および通貨に対する戦略を適切に反映するためには、金利リスクと通貨リスクを分離して構築、また管理することが重要です。 

また、金利戦略と通貨戦略の独立を実践することにより債券運用の柔軟性を高めることが可能となり、より精緻なリスク管理を行うことができます。そしてリスク管理能力の向上は最終的にはインフォメーション・レシオの上昇につながるといえます。

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