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Bond Basics
2005年5月
モーゲージ債の解説
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モーゲージ債(MBS: Mortgage Backed Securities)とは、一般的に住宅ローンを担保として発行された証券をさします。主要なモーゲージ債の市場は米国となっており、米国においては過去20年間でモーゲージ債の市場規模は急速に拡大し、近年、その残高は米国債を上回る水準となっているほか、米国以外においてもモーゲージ債の発行残高は拡大傾向にあります。本稿では、米国のモーゲージ債を主に用いてモーゲージ債の仕組みと特徴を解説します。

 

        

 

また、モーゲージ債は債券インデックスにおいても主要なセクターのひとつとなっています。グローバル総合インデックス(除く日本)におけるモーゲージ債のウェイトは約16%、米国総合型インデックスでは約35%のウェイトを占めています。

 

モーゲージ債発行の仕組み

モーゲージ債は米国が最大の市場となっていますが、米国におけるモーゲージ債の発行の仕組みは一般的に下記のプロセスとなります。住宅購入者は金融機関から住宅ローンを借入れますが、金融機関は個々の住宅ローンで同様の性質(金利、償還期限等)を有するものを集め、「モーゲージ・プール」を組成します。このモーゲージ・プールを証券化したものがモーゲージ債となります。投資家は、モーゲージ債の原資産である住宅ローンから発生する元利金を受け取ります。このモーゲージ債に対する元利払いを保証しているのが政府系機関です。

 

        
 

政府系機関には以下の3つがあり、それぞれファニー・メイ、フレディ・マック、ジニー・メイという通称があります。

ファニー・メイ<Fannie Mae>

(連邦住宅抵当金庫Federal National Mortgage Association <FNMA>)

1938年に政府金融機関として設立され1968年に民営化されました。民間金融機関の組成したモーゲージ・プールを証券化するほか、それを買い取って自ら組成、発行をすることもあります。ファニー・メイが発行するモーゲージ債に対する元利払い保証はファニー・メイ自体によるものであり、米国連邦政府による保証ではありません。

フレディ・マック<Freddie Mac>

(連邦住宅金融抵当金庫Federal Home Loan Mortgage Corporation <FHLMC>)

1970年に設立された政府系金融機関で、ファニー・メイと同様にモーゲージ債の発行および元利払いの保証を行っています。

ジニー・メイ<Ginnie Mae>

(連邦政府抵当金庫:Government National Mortgage Association <GNMA>)

1968年に米国連邦政府、住宅都市開発省の全額出資で設立された政府機関です。
ジニー・メイは元利金支払いの保証を行うのみで、住宅ローン債権の買取およびモーゲージ債の発行はおこないません。なお、ジニー・メイのモーゲージ債は米連邦政府により保証されています。

なお、上記政府系機関以外に民間銀行が発行するモーゲージ債の例もあります。

モーゲージ債の大部分は「パス・スルー(Pass Through)」と呼ばれる形態をとっています。パス・スルーとは、住宅購入者から支払われる住宅ローンの元利金返済がそのままモーゲージ債の元利支払いとなることを意味します(ただし、手数料は控除されます)。モーゲージ債の保有者は、証券の原資産であるモーゲージ・プールから発生するキャッシュ・フローを保有割合に応じて受け取ることになります。こうしたパス・スルーの仕組みは、モーゲージ債を特徴づける重要な要素となっています。

モーゲージ債の特徴

①   高い信用力
モーゲージ債はその大部分が政府系金融機関から発行、および元利金払いの保証がなされており、その信用力は非常に高いもの(AAA格)となっています。

② 割賦返済
モーゲージ債はパス・スルーの仕組みをとっているため、住宅ローンの元利金返済がそのままモーゲージ債所有者へのキャッシュ・フローとなり、モーゲージ債のキャッシュ・フローは一般的な固定利付債に投資する場合のキャッシュ・フローとは異なります。通常の固定利付債の場合、満期まで利子収入のみを受け取り、満期時に償還額を受け取りますが、住宅ローンは通常一定額を毎月返済しますので、支払額に占める利子、元本それぞれのウェイトは時間の経過とともに変化します。これを反映してモーゲージ債についても投資家が受け取るキャッシュ・フローには利子分のみでなく元本の返済が含まれます。支払開始から時間が経過するにつれ、元本返済部分が大きくなります。こうしたキャッシュ・フローの性質により、モーゲージ債のデュレーションは同じ償還年限の通常の固定利付債と比較して短くなります。

 期限前償還
モーゲージ債のキャッシュ・フローに関するもう一つの重要な特徴は、期限前償還です。一般的に住宅ローンの借り手は期限前償還をする権利を有しており、毎月の元利金返済を繰り上げて一括で返済をしてしまうことが可能です。従って、市場金利水準が低下すると、既存の住宅ローンを繰り上げて一括返済し、それまでよりも低い金利で住宅ローンの借り換えをおこなうケースが増えます。パス・スルーの仕組みにより、モーゲージ債保有者がモーゲージ債から受けるキャッシュ・フローは、こうした住宅ローンの期限前償還の影響を受けます。債券投資の枠組みでとらえれば、市場金利が低下し、期限前償還がローンの借り手により行使された場合、モーゲージ債のデュレーションが短期化します。逆に、金利が上昇すると、期限前償還が予想よりも減少し、デュレーションが長期化する傾向にあります。

すなわち、金利の低下局面では、デュレーションの短期化によりモーゲージ債の価格は通常の債券ほど上昇せず、金利の上昇局面では、デュレーションの長期化によりモーゲージ債の価格は通常の債券よりも大きく低下する性質があるといえます。

 

§         モーゲージ債は、金利上昇時の価格変化(下落幅)の方が金利低下時の価格変化(上昇幅)より大きい

§         通常の債券は、金利上昇時の価格変化(下落幅)の方が金利低下時の価格変化(上昇幅)より小さい

また、このように、住宅ローンの借り手が期限前償還を行う権利を有していることは、住宅ローンの借り手が「コール・オプション」(買い取る権利)を有しているのと同様の効果があります。従って、モーゲージ債を保有することは、住宅ローン債務者にコール・オプションを売却しているのと同様の効果を有し、モーゲージ債にはコール・オプション分のプレミアムがのっていると考えることができます。

 

   高い利回り水準
モーゲージ債への投資には通常の債券投資に伴う市場リスク、信用リスクに加え、上記期限前償還リスクを内包するため、投資家はそうしたリスク保有に見合う、より高い利回りを得ることができます。

 

          

TBA取引とは
モーゲージ債の取引においては「TBA取引」が頻繁に用いられます。TBAとは “To Be Announced”の略で、モーゲージ・プールを特定しないで行われる取引をさします。TBA取引においては、売買当事者はモーゲージ・プールの条件(クーポン、満期、発行体となる政府機関、等)のみを設定し、実際のモーゲージ・プールは決済日の48時間前までに特定します。

TBA取引は、プールを特定することなく取引ができるという性質から、モーゲージ債の取引量の増加、市場流動性の向上に寄与しています。

なお、TBAとして定めたモーゲージ・プールの内容と、決済時の実際の内容には若干の乖離が生じる可能性がありますが、米国債券市場協会は許容される乖離の範囲についてのガイドラインを設定しています。

結び
モーゲージ債は、米国を中心に主要債券セクターの一つに位置付けられており、日本を含むその他の市場においても発行は拡大傾向にあります。モーゲージ債はその流動性、信用力、また利回りの高さが魅力となっておりますが、期限前償還といった、通常の固定利付債とは異なる特徴を有しており、モーゲージ債の運用に際しては、高い分析力および専門性が求められます。

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