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Bond Basics

2005年8月
債券の基礎

債券市場は他に比肩するもののない世界最大の有価証券市場であり1、ほぼ無限とも言える多様な投資機会を提供しています。債券市場のさまざまな側面を熟知している投資家は少なくありませんが、日々新たな商品が増え続けているため、たとえ債券の専門家であっても、債券市場の進化についていくことは容易ではありません。PIMCOは多くの時間を費やして経済予測を作り上げ、それが債券市場の各種セクターに与える影響を分析していますが、今回は最も根本的な疑問、すなわち「債券とは何か」という疑問に対する回答を示します。

本稿では、債券の価格形成と金利、債券投資に伴うリスク、運用ポートフォリオにおいて債券が果たす伝統的役割などを含め、債券市場の基本について解説します。その次に、債券市場の各セクターと、全体的な運用戦略において債券がもたらすメリットについて紹介します。


債券の定義
債券とは債券購入者、すなわち債券保有者による債券発行体に対する融資に他なりません。各国政府や企業、地方自治体などは債券を発行して必要な資本を調達します。投資家が国債を購入した場合、それは政府に対する融資です。企業が発行した債券を購入した場合、それはその企業に対する融資です。ローンと同様に、債券の場合も定期的に利息が支払われ、規定された期日に元本が返済されます。

ある企業が新工場の建設用資金として100万ドルを必要としており、債券を発行してその資金を調達すると決めたと仮定します。この企業は必要な資金を調達するために、投資家に対して1000ドルを1単位とする債券を1000単位販売するとします。この場合、この1000ドルが各債券の「額面価値」となります。資金を調達する企業は「債券発行体」と呼ばれ、年間の支払利息、すなわち「クーポン」と、調達した100万ドルの元本を返済するまでの期間を決定します。クーポンを決定するにあたり、発行体はその時点の金利環境を考慮して、比較対象となる他の債券に対して競争力があり、投資家にとって魅力ある水準にクーポンを設定します。上記の企業は年間のクーポンが5%で期間5年の債券を発行することに決めたとしましょう。5年の期間が満了すると、債券は「満期」を迎え、発行体企業は各債券保有者に対して、各自が保有する債券1単位あたり額面価値1000ドルを償還します。

投資家にとって、債券が満期を迎えるまでの時間的長さは予想されるリスクや潜在的なリターンを決定づける重要な要因になります。一般的に、5年後に償還される100万ドルの債券は30年後に償還される同額の債券よりもリスクが低いと考えられます。これは、債券が満期を迎えるまでの期間、すなわち残存期間が長くなるほど、債券保有者に元利金を支払う発行体の能力に悪影響を与えかねない要因は多くなると考えられるためです。残存期間が長くなることで増加するリスクは、発行体がその債券に対して支払う利息、すなわちクーポンと直接の因果関係を持ちます。言い換えると、発行体は満期までの期間が長い債券に対して高い金利を支払います。したがって、投資家の観点からすると、残存期間が長い債券ほど高いリターンを獲得する可能性が高くなります。しかし高いリターンを得られる可能性と引き換えに、投資家が負うリスクも高くなります。

また、すべての債券には発行体が「デフォルト」するリスク、すなわち発行体が借り入れた資金の元利金の支払いができなくなるリスクがあります。そこで独立した信用格付機関がほとんどの債券発行体のデフォルト・リスクを評価し、主要な経済紙上で信用格付を発表しています。この信用格付は投資家がリスクを評価する際に役立つだけでなく、個々の債券の金利を決定する際にも役立つものです。格付水準の高い発行体が支払う金利は格付水準の低い発行体が支払う金利よりも低くなります。この場合も投資家にしてみると、格付水準の低い債券を購入することで高いリターンを獲得する可能性を得られる一方で、高い格付の債券を購入する場合に比べて高いデフォルト・リスクを負うことになります。

公開市場において債券価格を決める要因
債券は発行されると、公開市場での取引が可能になります。公開市場での取引が始まると、債券の価値は価格と利回りで決まります。各債券には売買可能な価格が必要であることは言うまでもありません(詳細については下記の「債券市場価格を理解する」を参照)。各債券の利回りは投資家がその債券を満期まで保有した場合に獲得できると予想される年率のリターンです。したがって、利回りは債券の購入価格とクーポンによって決まります。

債券の価格は上の図に示した通り、常に利回りと反対方向に動きます。債券にとって決定的に重要なこの特性を理解するための鍵は、定期的にクーポンとして支払われる金利収入の価値が債券価格に反映されていることを認識することにあります。金利、特に国債の金利が低下すると、あらゆる種類の発行済み債券の価値は上昇します。発行済み債券は以前の金利が高かった環境で発行されたものであり、その分クーポンも高いためです。発行済み債券の保有者はこうした債券に「プレミアム」を乗せて公開市場で売却することが可能になります。一方、金利水準が上昇すると、発行済み債券の価値は低下します。これはこうした債券のクーポンが相対的に見劣りするようになり、結果として「ディスカウント」で取引されるようになるためです。

 

債券市場価格を理解する

市場では債券価格を債券の額面価値に対する割合として表示します。債券価格を理解する最も簡単な方法は、市場で表示される価格にゼロを1つ加える方法です。たとえば、ある債券が市場で「99」で取引されている場合、その価格は額面価値1000ドルあたり990ドルであり、この債券は「ディスカウント」で取引されていると言われます。この債券が「101」で取引されるようになった場合、この債券の価格は額面1000ドルあたり1010ドルであり、この債券は「プレミアム」で取引されていると言われます。この債券が「100」で取引されている場合、その価格は額面1000ドルあたり1000ドルであり、この債券は「パー」で取引されていると言われます。「パー・バリュー」といいう言葉を耳にされる機会があるかもしれませんが、これは額面価値を別の言葉で表現したものです。

額面

表示価格

市場価格

債券の状態

$1,000 100 $1,000 『PAR(パー)』で取引される
$1,000 102 $1,020 『プレミアム』で取引される
$1,000 97 $970 『ディスカウント』で取引される
$5,000 99 $4,950 『ディスカウント』で取引される

金利が上昇すると、新規に発行される債券の金利は既発のものよりも高くなるため、既発債の価格は低下します。それゆえ、簡単に言うと、金利上昇は債券投資家にとって「悪材料」だとみなされます。一方、金利が低下すると、新たに発行される債券の金利が既発債よりも低くなるため、既発債は市場においてプレミアムで取引されるようになります。

短期的にみると、こうした関係は真実です。しかし、長期間の投資を想定した場合には別の関係が浮かび上がってきます。債券保有者はそれぞれが取ることのできるリスク許容量の範囲内で可能な限り高い利回りを求めようとします。長期的に見た場合、金利が上昇すると満期を迎えた債券の償還金は利回りの高い債券に再投資されるため、債券ポートフォリオのリターンは押し上げられます。反対に金利が低下すると、短期的には債券投資家に有利にはたらくものの、満期を迎えた債券の償還金は新たに金利の低い債券に再投資せざるを得なくなるため、長期的にリターンが低下する可能性があります。

債券のリスクの測定:デュレーションとは
これまで、債券価格と利回りとは正反対に動くことをみてきましたが、次に価格と利回りの関係について、より詳しく説明します。金利が変動した場合に債券価格がどの程度変化するか、どのようにして把握することができるでしょうか。この点はきわめて重要です。金利変動に対する債券価格の感応度は銘柄によって異なるためです。

金利変動に対して個々の銘柄の価格がどの程度変化するかを推計する方法として、債券市場では一般的に「デュレーション」と呼ばれる指標を利用しています。デュレーションは債券のキャッシュフローの現在価値を加重平均したものであり、債券のキャッシュフローは定期的なクーポンの支払いと、債券が満期を迎えた際に償還される額面価値で構成され、下の図で記されている通り、満期時に支払われる金額はクーポンよりも大幅に多くなります。下の図では、小さい$の記号がクーポンを示し、右の大きい$の記号が満期時の額面償還額を示しています。デュレーションはこのキャッシュフローが均衡する地点となります。つまり、債券保有者に対する支払い済みのキャッシュフローと、支払いが行われていないキャッシュフローが等しくなる地点です。言い換えると、投資家にとって発行体に融資した資金の半分を回収できる地点を指します。下の図をご覧ください。

この図が示す通り、デュレーションは債券の残存期間よりも短くなることが一般的です。また、デュレーションは定期的に支払われるクーポン水準と債券価格によって変わります。割引債の場合には定期的なクーポンの支払がなく、キャッシュフローは償還時にのみ発生するため、債券の残存期間とデュレーションは等しくなります。このため、割引債は金利変動に対する価格の変動幅が最も大きくなる傾向がみられ、金利低下を予想している投資家にとって、魅力的な投資対象となります。

デュレーションは銘柄ごとに異なる値を取りますが、最終的に算出されたデュレーションは、残存期間や利率、額面価値の異なる債券を個別に比較することを可能にするリスク指標となります。デュレーションは金利が100ベーシス・ポイント(bp、1bpは0.01%)変動した際の債券価格の変動幅とほぼ等しくなります。たとえば、金利水準が1%低下し、市場に存在するすべての債券利回りが等しく低下したと仮定します。この場合、デュレーションが2年の債券では価格が2%上昇するのに対し、デュレーションが5年の債券の価格は5%上昇します。

ポートフォリオにおける債券の役割
従来から投資家が債券をポートフォリオに組み入れてきた理由として、金利収入、分散化、そして景気の悪化やデフレに対する防御の3つを挙げることができます。ここからは、こうした要因を個別にみていくことにしましょう。

金利収入:ほとんどの債券は投資家にとって「固定的」な金利収入をもたらします。債券発行体は四半期毎、半年毎、年に一度など、事前に決められた予定に従い、債券保有者に対して利息を支払います。投資家はこの利息を消費することもできますし、他の債券に再投資することもできます。株式の場合も、投資家には配当が支払われますが、配当は債券のクーポンよりも大幅に少ないことが一般的である上、配当を支払うかどうかや、支払う場合の条件は企業が自らの裁量で決定します。これに対して、クーポンの支払は債券発行体にとって履行しなくてはならない義務となります。

分散化:分散投資とは「単一の商品に集中投資しない」ことを意味しています。株式投資家は株式市場が下落すると、それに合わせて自らのポートフォリオも下落するリスクを抱えています。このリスクを軽減するため、投資家は長い間債券を利用してきました。これは株式と債券のパフォーマンスの相関は低くなることが多いためです。過去の例を見ると、株式のパフォーマンスに悪影響を与える可能性の高い市場要因は債券に影響を与えないか、与えたにしても軽微であり、場合によっては債券のパフォーマンスを改善させることもあります。たとえば、優良大型株と国債を購入した投資家は、一方の資産クラスに下落局面が到来しても、その悪影響をもう一方の資産クラスで軽減することができる場合があります。これは個別企業の株価の下落と政府の国債償還能力には一般的には相関関係がないためです。分散投資をしても、損失の可能性を完全に排除することはできませんが、投資家はそれぞれの市場サイクルの中にあり、動きの異なる多様な資産クラスにポートフォリオを分散することによって、リターンが落ち込むリスクやマイナスになるリスクを低減することが可能です。

景気の悪化やデフレに対する防御:債券は投資家にとって景気の悪化から身を守るための手段となりますが、その理由は複数あります。先ほど、債券価格は債券が生み出す金利収入を投資家がどのように評価するかによって決まると説明しました。ほとんどの債券は償還まで一定の金利が支払われる固定利付債です。モノやサービスの価格が上昇する場合、つまり経済環境が「インフレーション」と呼ばれる状態にある場合、固定利付債の魅力は低くなります。それは、固定利付債から支払われる金利収入で購入可能なモノやサービスの量が少なくなるためです。通常、インフレーションは経済成長率の上昇によりモノやサービスに対する需要が増大することで発生します。一方、経済成長率の減速はインフレーションの低下につながることが多く、インフレーションの低下は債券の魅力を向上させます。また、一般的に景気の減速は企業収益や株式のリターンを低下させ、そうなるとリターンの源泉として債券が生み出す金利収入の魅力が高まります。景気の減速が深刻化し、消費者が消費を手控え、経済全体で物価が低下し始める経済環境を「デフレーション」と呼びますが、デフレーションが発生した場合には、債券が生み出す金利収入の魅力は一層高くなります。これは物価の下落により、債券からの金利収入で購入可能なモノやサービスの量が増えるためです。債券に対する需要が増大すると、債券価格は上昇し、投資家のリターンも高くなります。

さまざまな種類の債券
ここまでは、ほぼすべての債券に共通する主な特性を取り上げてきましたが、次に債券市場の進化を振り返り、現在世界の市場で投資可能な数多くの種類の債券について説明します。かつて債券市場は主に各国政府と大企業が資金調達を行う場でした。そして債券の主要な投資家は将来の使途が決まった資金の投資先として、クオリティの高い投資対象を求める保険会社や年金基金、個人の投資家でした。

1970年代になると、投資家は公開市場で債券を売買することにより利益を上げられることを学び、債券市場は進化し始めます。債券に対する投資家の関心が高まるにつれ(そして、コンピュータの発達により債券に関連する演算処理が容易になるにつれ)、金融市場のプロフェッショナルは借り手が債券市場を利用して資金を調達するための革新的な手法や、潜在的なリスク・リターンに対するエクスポージャーを個々の投資家に合った形に作り上げる新たな方法を生み出しました。

債券市場最大のセクターは公債ですが、その他主要なセクターとしては社債のほか、モーゲージ債やアセット・バック証券があります。以下、これら主要セクターについて解説します。

公債
公債セクターは幅広いカテゴリーですが、その中心は各国の中央政府が発行し保証する国債です。米国の財務省証券、ドイツのブンズ債、日本国債(JGB)、フランスのOAT債、英国のギルト債はいずれも国債です。公債市場では米国、日本、EU諸国(主としてドイツ、フランス、イタリア、スペイン)の国債が中心的役割を担っており、発行済み公債合計額の約84%を占めています2。こうした先進主要国が発行する国債は一般的にデフォルト・リスクがきわめて低く、最も安全性の高い証券だと考えられています。しかしながら、概ね、各国政府は国債の元利払いを予定通り実行することを保証しているだけであり、市場リスクがなくなったわけではないことに注意すべきです。また、国債で構成されるポートフォリオの受益証券も保証の対象にはなりません。

一部の国ではインフレ率に連動する国債を発行しています。欧州ではこうした国債を「リンカー」と呼び、米国では「TIPS」と呼んでいます。インフレ連動債の場合、インフレ率の変化を反映した形で金利や元本が定期的に見直されます。こうしたメカニズムによって、インフレ連動債は「実質」リターン、すなわちインフレ調整後リターンを生み出します。

公債セクターには国債以外にも、次のようなサブコンポーネントがあります。

  • 政府機関債、準政府債:各国の中央政府は、たとえば低価格住宅の提供や小規模企業の育成など、各種の政策目標を達成するために政府機関を活用しており、こうした政府機関が事業資金を調達するために債券を発行している場合があります。政府機関債は中央政府が保証している場合もあれば、そうでない場合もあります。たとえば、ドイツ政府は住宅建設および小規模事業向け融資を行うKfW(ドイツ復興金融公庫)発行の債券を保証しています。一方、米国政府は政府機関として銀行から住宅ローン資産を買い上げている連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)や連邦住宅金融抵当金庫(フレディマック)が発行する債券を保証していません。しかし、同じ政府系住宅機関である連邦政府抵当金庫(ジニーメイ)が発行する債券については保証を付与しています。また、世界銀行や欧州投資銀行などの国際機関も公共事業や公的な開発事業への融資資金を調達するために債券を発行しています。

  • エマージング債:エマージング債はアフリカ、東欧、中南米、ロシア、中東、日本を除くアジアなどの発展途上国が発行する国債です。エマージング債セクターはこの数年で大幅な成長と成熟を遂げ、このセクターに新たに参入する投資家は増加しています。エマージング債の利回りがきわめて魅力的な場合もありますが、その一方で為替レートの変動や政治リスクなど、エマージング債に特有のリスクもあります。エマージング債ポートフォリオは米国内の債券だけで構成されるポートフォリオに比べ、パフォーマンスの変動が激しくなることが一般的です。

  • 地方政府債:地方政府も一般歳出用の資金調達や、橋梁や学校の建設など各種プロジェクトの資金調達のために資金を借り入れています。米国では地方政府債の市場が確立されており、「地方債」と呼ばれています。一方、欧州でもここ数年で地方政府の債券発行額が大幅な伸びを示しています。米国の地方債による金利収入は連邦税が免税となるため、他の債券に対する税制上のメリットがあります。ただし、地方債のキャピタル・ゲインは免税ではありません。また、地方債に投資するポートフォリオからの収益は州税および地方税の課税対象となり、代替最低課税(AMT)の課税対象となる場合もあります。

社債
社債は公債以外の主要債券セクターの一つです。企業は事業の拡大や新たなビジネス・ベンチャーに投入する資金を確保するために債券市場で資金調達を実施します。社債セクターは急激な拡大を遂げており、債券市場、特に欧州債券市場において、最も拡大ペースの速いセクターの1つとなっています。欧州中央銀行のデータによると、2000年末から2003年末までに、金融機関を除くユーロ圏の企業が発行した債券の発行残高は60%近い伸びを示しています。

社債は、投資適格債と投機的格付債(ハイイールド債、もしくはジャンク債)の2つに分類することができます。投機的格付債は、格付水準の高い投資適格企業に比べて信用クオリティが劣り、デフォルト・リスクが高いと考えられる企業によって発行される債券です。投資適格、投機的格付のそれぞれの中でも、発行体企業の財務状態は多様であるため、社債の格付水準は広範囲にわたっています(表参照)。

一般的に、投機的格付債の発行体企業は、設立後間もない企業や、競争の厳しいセクターや不安定なセクターの企業、もしくはファンダメンタルズに問題を抱えた企業などです。投機的格付はデフォルトの確率が高いことを意味していますが、その一方でこうした格付の債券のクーポン水準はリスクに見合った高い水準となることも少なくありません。格付は発行体の信用クオリティが悪化すると引き下げられ、信用クオリティが改善すると引き上げられることが一般的です。

最近になって、企業クレジットに対するエクスポージャーを取るための新たな手段となる新たな投資ツールが登場しました。具体的に言うと、投資家はクレジット・デフォルト・スワップを購入することで、発行体企業のデフォルトに対して保険をかけることが可能になりました。また、クレジット・デフォルト・スワップを利用することで、実際に債券を購入することなく企業クレジットに対するエクスポージャーを取ることが可能になったほか、企業エクスポージャーの「ショート」も可能になりました。また、クレジット・デフォルト・スワップや企業クレジットに対するその他のデリバティブをひとまとめにしたインデックス商品も登場しました。これにより、多様な企業クレジットに対する分散されたエクスポージャーを取ることが可能になり、場合によってはレバレッジのかかったエクスポージャーを取ることも可能になりました。

デリバティブ商品には固有のリスクがあり、デリバティブ商品に投資しているポートフォリオにはその投資額を上回る損失が発生する可能性があります。デリバティブ商品には一定のコストがかかる場合があるほか、流動性リスク、金利リスク、市場リスク、信用リスク、経営リスク、そして最も有利な時点でポジションを清算できないリスクなど各種のリスクを伴う場合があります。

モーゲージ債、およびアセット・バック証券
世界の債券市場において、大幅に拡大しているもう1つの分野は「証券化」と呼ばれるプロセスから派生した分野です。証券化とは各種のローン(住宅ローン、自動車ローン、クレジットカード・ローンなど)のキャッシュフローを種類ごとにまとめ、証券として投資家に再販するプロセスを指します。証券化の代表的な例としてはモーゲージ債とアセット・バック証券を挙げることができますが、この2つ以外にもさまざまな種類の証券化債券があります。それでは次に代表的な証券化ローンについて説明しましょう。

  • モーゲージ債:この債券は数多くの住宅所有者が毎月支払う住宅ローンを証券化したものです。住宅ローンの貸し手は個々のローンを別の機関に売却し、その機関がローンを一つにまとめて証券化します。発行される債券の金利は住宅所有者が支払う住宅ローン金利に近いものとなります。他の債券と同じように、モーゲージ債も足元の金利変動の影響を受ける場合があり、金利が上昇すると価格は下落する可能性があります。そして、ほとんどのモーゲージ債には民間の保証会社による保証が付与されていますが、民間の保証会社や保険会社が保証債務を履行する確証はありません。

  • アセット・バック証券(ABS):アセット・バック証券とは自動車ローンやクレジットカード・ローンを始めとする各種のローンから組成される証券です。モーゲージ債と同様に、アセット・バック証券の場合も同種のローンがまとめられて証券化され、投資家に販売されます。アセット・バック証券の発行にあたっては特別目的会社が設立され、その会社が証券の発行体となります。こうした形を取ることで、クレジットカード会社などの貸し手企業はローンを自らのバランスシートから切り離すことが可能になります。アセット・バック証券は「トランチング」されることが一般的です。これはローンをひとまとめにした後、信用クオリティの高いクラスと低いクラスの証券を発行することを意味しています。

  • ファンドブリーフおよびカバード債:不動産ローンが裏付資産となったドイツの証券を「ファンドブリーフ」と呼び、その中で発行額が一定の基準額以上のものを「ジャンボ・ファンドブリーフ」と呼びます。ジャンボ・ファンドブリーフ市場は欧州債券市場の中で最大級のセクターです。ファンドブリーフとモーゲージ債、もしくはアセット・バック証券の最大の違いは、融資を実行し、それを証券化してファンドブリーフとして発行する銀行がファンドブリーフの担保となっているローンをバランスシートに残すところにあります。こうした特徴から、ファンドブリーフを社債に分類する場合もあります。欧州ではドイツ以外にもファンドブリーフに似た形の担保付債券を発行する国が増えています。

これまでに説明した国債以外の債券はデフォルト・リスクがゼロか、きわめて低いと考えられる金利、すなわち国債利回りやLIBOR(ロンドン銀行間出し手金利)を基準に値付けされることが一般的です。国債より格付け水準の低い債券の利回りと、国債利回りもしくはLIBORとの格差を「クレジット・スプレッド」と呼びます。クレジット・スプレッドは、信用クオリティや経済成長率に対する投資家の見方、また、リスクや高水準のリターンに対する投資家の需要によって変動します。

これまでの説明で主要な債券について理解されたことでしょう。また、主要な債券セクターの中に多様な債券が含まれていることも理解されたと思います。それでは次に投資家や債券マネージャーが用いる代表的な債券運用戦略について紹介しましょう。

債券運用戦略
投資家が債券をポートフォリオに組み入れるにあたって、複数の選択肢があります。1つは、債券ポートフォリオのリターンを最大化し、選択したベンチマークが示す市場リターンをアウトパフォームするために各種の戦略を採用する「アクティブ型」の債券マネージャーに運用を委託する方法です。第2の選択肢としては、債券市場全体、もしくは債券市場の特定のセクターのリターンを(アウトパフォームするのではなく)忠実に再現することを目指す「パッシブ型」の債券マネージャーに運用を委託する方法です。第3の選択肢はリターンの最大化を目指すことなく、保有する債券が満期を迎えると自動的に新規の債券に再投資する「ラダー型」の運用戦略を採用する方法です。

アクティブ戦略とパッシブ戦略、ラダー戦略のそれぞれの長所と短所については、これまで長い間議論が戦わされてきました。この議論において、最大の論争の的となったのは、アクティブ・マネージャーが安定的に市場をアウトパフォームすることが不可能なほど債券市場の効率性は高いかどうかです。PIMCOを含め、アクティブ債券マネージャーはこの点に関して、規模と柔軟性とを活かして、アクティブ・マネージャーは短期と長期のトレンドを最大限に活用し、市場をアウトパフォームすることが可能であると主張しています。

アクティブ債券マネージャーは経済予測を基に、債券ポートフォリオのデュレーション(ポートフォリオに組み入れたすべての債券の加重平均デュレーション)を調整することが一般的です。たとえば金利低下が予想される場合、アクティブ・マネージャーはポートフォリオのデュレーションを長期化します。これはデュレーションが長くなるほど、金利が低下した場合のポートフォリオの価格上昇幅が大きくなるためです。デュレーションを長期化する方法としては短期債を売却し、長期債を購入する方法があります。一方、金利の上昇を予想するマネージャーは短期債を購入する一方で、長期債を売却し、ポートフォリオのデュレーションを短期化することが一般的です。金利が上昇する場合、デュレーションの短いポートフォリオではデュレーションの長いポートフォリオに比べて価格の下落幅が小さくなります。

代表的なアクティブ債券運用戦略として、ポートフォリオの信用クオリティを調整する方法もあります。経済成長率が加速する場合、アクティブ・マネージャーは経済環境の好転により債券発行体の信用力が向上し、債券価格が上昇することを期待して、信用クオリティの低い債券をポートフォリオに追加します。一部のケースでは、アクティブ・マネージャーが優れたクレジット分析能力を活かして、改善が見込まれる市場セクターを特定し、そのセクターに投資することでポートフォリオのリターンの向上を目指す場合もあります。

そのほかのアクティブ債券運用戦略として、残存期間が異なる債券間の関係、すなわちイールドカーブによって示される債券間の関係の変化に対する予想を基に、ポートフォリオの期間構成を調整する方法があります。一般的に、残存期間が長いほど債券の利回りは高くなりますが、この関係は一定ではありません。この関係の変化は債券マネージャーにとって、想定される経済環境において最高のパフォーマンスを生み出すと考えられるイールドカーブ上の年限にポートフォリオを配置する好機となります。

まとめ:債券は分散ポートフォリオに不可欠
債券は投資家に固定金利収入やポートフォリオの分散効果、景気減速に対するヘッジ効果をもたらすものです。世界最大の有価証券市場である債券市場には、価格の下落を回避しようとする投資家にとって数多くの選択肢が存在します。現在の市場には独自の特性を有する数多くの債券発行体が存在しますが、こうした特性はリスク・リターン目標の異なる多様な投資家に投資機会を提供するものとなっています。

 

1 世界の債券市場は急激に発達し多様化しているため、その正確な規模を特定することは困難です。たとえば、メリル・リンチが発行している”Size and Structure of the World Bond Market 2004”では、2003年末時点の世界の債券発行残高を約45兆ドルと推計しています。一方、マッキンゼー・グローバル・インスティテュートの最近の研究である”$118 Trillion and Counting: Taking Stock of the World’s Capital Markets”では、世界の債券市場の規模を2003年末で43兆ドルと推計しています。このマッキンゼーの研究では世界の株式市場の規模を世界の債券市場の2/3に満たない27兆ドルと推計しています。

2 出所:欧州中央銀行 2004年12月発行『Euro Bond Market Study』

 - 2007年11月改定
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債券の定義

公開市場において債券価格を決める要因

債券市場価格を理解する

•  債券のリスクの測定:デュレーションとは

•  ポートフォリオにおける債券の役割

さまざまな種類の債券

債券運用戦略

まとめ:債券は分散ポートフォリオに不可欠

額面価値:債券の券面上に明記された価値を指します。また債券が「満期」を迎えた際に債券保有者に償還される金額でもあります。一般的な額面価値は1000ドルか5000ドル、もしくは10000ドルです。

クーポン:債券の発行時に規定された利率を指します。米国ではほとんどの場合、クーポンが年に2度支払われますがが、欧州では年1回のクーポンが一般的です。

満期(残存期間):債券の償還期日が到来するまでの期間を指します。(残存)期間が10年の債券の場合、発行体は10年後に資金を返済します。

 

 

 

 

デフォルト:債券発行体が債券の元本、もしくは利息を支払うことができない場合にデフォルトが発生します。一般的に、デフォルトは発行体の破綻によって発生します。

 

 

価格:債券の市場価格はクーポンの支払いと元本の償還で構成される各銘柄の将来のキャッシュフローの現在価値となります。債券価格は債券の額面価値に対する割合として表示されることが一般的です。

利回り:「利回り」とは通常、最終利回りを指します。これは各銘柄を償還まで保有した場合の年間平均リターンです。他にも、各銘柄の価格に対する年間利息を指す「直接利回り」という概念もあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デュレーション:デュレーションは債券の金利リスクを測定するための指標であり、年数で表現されます。デュレーションの長い債券ほど、金利変動に対する債券価格の変化は大きくなります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベーシス・ポイント:1ベーシス・ポイント(bp)は0.01%を指し、100bpは1%となります。多くの場合、債券利回りの変化はbpで表現されます。たとえば、債券利回りが5.0%から4.5%に低下すると、利回りは50bp低下したと表現されます。また、リターンもbpで表現されます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

信用格付
次の表はムーディーズとスタンダード&プアーズの信用格付を格付けの高い順に示したものです。

投資適格
ムーディーズ S&P
Aaa AAA
Aa AA
A A
Baa BBB
投機的格付け
Ba BB
B B
Caa CCC
Ca CC
C C
C D

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

LIBOR:LIBORとはロンドン銀行間出し手金利のことです。この金利は格付水準の高い大手銀行間で融資する場合の金利です。LIBORが2%の時に、ある債券の水準がLIBOR+100bpであったとすると、その債券は3%の利回りで取引されているということになります。

クレジット・スプレッド:クレジット・スプレッドはクレジット・リスクを取る見返りに投資家が求める超過リターンを指します。信用格付が低い債券ほど、クレジット・スプレッドは大きくなります。たとえば、ある社債のクレジット・スプレッドが100bpである場合、投資家は国債などリスク・フリーの資産を購入する代わりにこの債券を購入する見返りとして、100bpの追加利回りを要求しているということを意味します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イールドカーブ:イールドカーブは同一の資産クラスで同一の信用クオリティの債券の最終利回りと残存期間の関係を線グラフとして表したものです。この線グラフは最も期間の短い当日物金利から一般的には30年物の金利を結んだものとなります。

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債券市場の各セクターへの投資にはリスクが伴います。モーゲージ債や社債は金利変動の影響を受けることがあります。一般的に金利上昇局面で債券価格は低下します。従って債券には担保引受人や保険業者がその責務を全しうるような確固たる保証は存在しません。米国債は利払い及び元本償還の約束はしますが、ポートフォリオの時価価値はその保証の限りではありません。また当然ながらハイ・イールド債への投資は高格付けの債券よりもリスクをより伴うこととなります。ポートフォリオ内で保有している債券の信用格付けは、あくまでも個々の債券に対する信用を示すものであり、ポートフォリオの安全性を意味するものではありません。

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